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楽天、世界最大の電子図書館サービスを買収、米OverDriveの全株式を4億1000万ドルで取得

 楽天株式会社は19日、電子図書館サービスの米OverDriveを買収すると発表した。発行済みの全株式を約4億1000万ドルで取得し、100%子会社化する。買収完了は4月の予定。

楽天株式会社常務執行役員の相木孝仁氏(左)と米OverDrive社長兼CEOのスティーブ・ポタシュ氏(右)

 OverDriveは、図書館や教育機関向けの電子書籍配信サービス「OverDrive」を展開する企業。同サービスを採用した施設では、貸出IDの発行を受けた利用者が、OverDriveの提供する電子書籍やオーディオブックのコンテンツを借りて、PCブラウザー上やモバイルアプリで見ることができる。

 北米を中心に50カ国・52言語でサービスを提供しており、取り扱いコンテンツは出版社5000社の250万タイトルに上る。約1万の教育機関、約3万の図書館にサービスを提供しており、B2B2C型の電子書籍配信サービスにおいて世界最大の普及率を誇るという。ユーザー数は約2100万人。

 楽天常務執行役員の相木孝仁氏は19日に都内で行われた記者説明会で、OverDriveの買収により、すでに展開している楽天Koboの事業とあわせ、電子書籍を買う・借りるという両輪がそろったと説明。楽天Koboのユーザー数2300万人とOverDriveの2100万人を合わせ、楽天グループの電子書籍サービスのユーザーは4400万人規模に拡大するとした。

 また、図書館や教育機関を相手に収益性の高いサービスを展開するOverDriveが加わることで、2015年の楽天グループの電子書籍事業はEBITDAベースで黒字に近づく見込みという。同時に、楽天グループが教育分野に進出することにもなるとした。

 楽天グループとOverDriveは、グローバル市場で補完関係も生まれるという。日本、アジア、欧州など、米国以外でのOverDriveの展開を楽天グループが加速していく一方で、米国ではOverDriveのポジショニングを足がかりに、楽天および楽天Koboのポジショニングを強化したい考えだ。

 相木氏によれば、楽天にとって北米市場は“強い競合”の存在があったことから、これまでは優先度を下げていたという。OverDriveの買収により、北米市場でもう一度、コンシューマー事業にチャレンジするとした。

 なお、楽天が買収したことで、OverDriveが今後、日本国内で電子図書館サービスの本格展開に乗り出すことが期待されるが、国内出版社の日本語コンテンツのライブラリ拡充なども含め、具体的なロードマップは今日の時点では示されなかった。

 OverDriveは昨年5月、電子書籍取次サービスを手掛ける株式会社メディアドゥとの戦略的提携を発表。日本国内での電子図書館サービス事業を推進するとしていた。楽天による買収後も、メディアドゥとの提携により国内展開する見込みで、楽天もこれをサポートするかたちになる。

(永沢 茂)