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Adobe、レタッチ特化のスマホアプリ「Photoshop Fix」など発表、デスクトップアプリのタッチ機能追加やUXプロトタイピングツールも

 米Adobe Systemsは5日、米国で開催中の同社クリエイティブカンファレンス「Adobe MAX 2015」において、「Adobe Creative Cloud」の新しいデスクトップアプリや、モバイルアプリ、サービスのほか、既存アプリの機能強化などを発表した。

スマートフォン/タブレットアプリを強化、レタッチ特化の「Photoshop Fix」など

 モバイルアプリでは、新たに「Adobe Photoshop Fix」「Adobe Capture CC」を提供開始した。Photoshop Fixは、画像のレタッチや修復に特化したアプリで、修復ブラシやゆがみなど、デスクトップアプリ版Photoshopの代表的な機能を、iPhone/iPadで利用可能。Adobe Capture CCは、これまでAdobeが提供してきた「Adobe Brush」「Adobe Shape」「Adobe Color」「Adobe Hue」を1つにまとめたもので、スマートフォンなどのカメラで撮影したオブジェクトやカラーなどを取り込み、各デスクトップアプリで利用できる。

 そのほか、すでに提供されている「Photoshop Mix」「Photoshop Sketch」「Illustrator Draw」「Comp CC」「Premiere Clip」など、モバイルアプリもアップデートした。

画像のレタッチに特化した「Photosohop Fix」
指でなぞった部分のオブジェクトが消えている

PC向けではタッチ機能をサポート、3Dキャラクター作成ソフト「Adobe Fuse CC」も追加

 「Photoshop CC」「Illustrator CC」「InDesign CC」「Premiere Pro CC」「After Effects CC」「Character Animator」など、Adobe Creative Cloud(CC)デスクトップアプリでタッチ機能をサポートした。Surface ProといったWindowsタブレットでの操作性向上や、Appleのトラックパッド搭載製品での操作に最適化されている。

 デザイン関連では、Illustratorの新機能として、シェイパーツールやライブシェイプを追加。タッチペンなどフリーハンドで書かれたシェイプを、丸や三角、四角などの整った形に修正するほか、多角形などに変更可能。Photoshop CCでは、アートボード機能をアップデートしたほか、ウェブやモバイル向けデザインに特化した「デザインスペース」の正式提供を開始した。

フリーハンドできれいなオブジェクトを生成する「シェイパーツール」
ウェブやモバイル向けデザインに特化した「デザインスペース」を正式提供

 InDesignでは、印刷ドキュメントをオンラインコンテンツとして制作・公開できる「Publish Online(プレビュー版)」を追加。ボタン、スライドショー、アニメーション、オーディオ、ビデオを含んだインタラクティブなInDesignドキュメントを作成・公開できる。ドキュメントは、URLを指定することでデバイスやプラットフォームの種類を問わず表示可能。SNSでの共有やサイト埋め込みにも対応する。

 新たに、3Dキャラクター作成ソフト「Adobe Fuse CC(プレビュー版)」がCreative Cloudに追加された。複数の3Dモデルを用意し、服装や体格、顔の造形などをカスタマイズ可能。走る、キックなどのモーションが用意されており、任意のポーズの3Dモデルを使用できる。Fuse CCで作成した3Dモデルは、Creative Cloud Librariesで同期でき、Photoshop CCで利用可能。なお、Fuse CCはAdobeが開発元のMixamoを買収したことにより、Creative Cloudに新たに追加された。

 ウェブ関連では、「Muse CC」にてフリーフォームレスポンシブデザインを追加。コードや制限のあるテンプレートを使用することなく、スクリーンサイズやブラウザーに合わせてサイズ調整するウェブサイトが作成できる。「Dreamweaver CC」では、Boostrapフレームワークに基づいたレスポンシブデザインが追加された。

 ビデオ分野では、4Kおよび8Kの高精細映像に対応するフォーマットを広範囲でサポート。Premiere Pro CCでは、ハイダイナミックレンジ(HDR)ワークフローをサポートした。また、After Effects CCでは、色彩の再現性や調整機能を強化。Audition CCでは、オーディオ関連の新機能として「Remix」が追加された。

新たにAdobe Creative Cloud入りした3Dキャラクター作成ソフト「Adobe Fuse CC」
作成したキャラクターはPhotoshopなどで利用可能。キャラクターには動作をつけることができ、任意のポーズで使用できる

UXデザイナー向けプロトタイピングツール「Project Comet」を発表

 Adobe MAX 2015では、「UXデザイナー向けの初めてのオールインワンソリューション」として、「Project Comet」を初公開した。2016年の早い段階でのリリースを予定している。ウェブやモバイルアプリのデザイン/プロトタイピングを高速化するとしており、ワイヤーフレームの構築から、ビジュアルデザイン、インタラクションデザイン、プロトタイピング、プレビューやチームでの共有を一元化する。

 オブジェクトの配置や各ページの連携など、直感的な操作が可能。プロトタイピングしつつ、インタラクションやアニメーション、ジェスチャーをテストでき、ユーザーがどのような体験を得られるか確認しながら制作できる。また、スマートフォン/タブレットなどのデバイスでライブプレビューしたり、チームにプロトタイプを共有することができ、プロトタイプのフィードバックを得ることができる。

 Adobeならではの機能として、PhotoshopやIllustratorとのスムーズな連携を実現。既存のデザインファイルをComemtに追加できるほか、ビットマップやベクターファイルの編集など、Adobe製品間を行き来しながら作業できる。プラグインによる機能追加にも対応する。

2016年初頭でのリリースを予定しているUXデザイナー向けツール「Project Comet」

ストックフォトサービスにビデオ追加、ポートフォリオサイト作成サービスも

 6月に提供開始したストックコンテンツサービス「Adobe Stock」では、写真やイメージに加えて、新たにビデオを追加した。また、Crearive Cloud Librariesから直接イメージなどを参照できるようになったほか、これまでStockへの直接アクセスに対応していなかった、Muse CC、Dreamweaver CCおよびFlash Professinal CCでも、アプリ内からアクセスできるようになった。

 Stockでは、Creative Cloudグループ版ユーザー向けに、プールライセンスを追加コストなしで提供するエンタープライズ版を提供開始する。エンタープライズ版では、ライセンス管理、レポートツール、ストックコンテンツを大量印刷できる無制限ライセンスとなる。

 また、ポートフォリオサイト制作サービス「Adobe Portfolio」を発表。Creative Cloudユーザーであれば無償で利用でき、写真からファッションまで、あらゆるクリエイティブな分野のポートフォリオに最適なレイアウトの作成が可能。Adobe Portfolioで作成したサイトは、レスポンシブデザインをサポートし、ユーザーでのカスタマイズも行える。また、固定URLを設定でき、パスワードによる保護や、Adobe Tyepkitのウェブフォントも使用可能。

 Adobe Portfolioは、世界560万人以上のメンバーを有するクリエイティブコミュニティ「Behance」に基づいて開発されており、ユーザーは、Adobe Portfolioと、自身のBehanceのプロジェクトページを連携させることが可能。

(山川 晶之)