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ネットバンク不正送金の被害額、年間30億7300万円で過去最悪

電子証明書を利用していた法人口座が被害に遭ったケースも

 警察庁は3日、2015年におけるインターネットバンキングの不正送金事犯の発生状況をとりまとめた。発生件数は1495件で、前年の1876件から減少。その一方で、被害額は約30億7300万円に上り、前年の約29億1000万円を上回って過去最悪となった。特に信用金庫の法人口座被害が急増しているという。

月別被害額の推移(警察庁の発表資料より)

 被害額の口座種別は、個人口座が16億700万円(52.3%)、法人口座が14億6600万円(47.7%)。金額・割合ともに個人口座のほうがまだ大きいが、前年は個人口座が18億2200万円、法人口座が10億8800万円だったため、個人口座で被害額が減少、法人口座で増加したことになる。

 金融機関の種別は、都市銀行等が14億4600万円(47.1%)、地方銀行が6億円(19.5%)、信用金庫・信用組合が9億4000万円(30.6%)、農業協同組合・労働金庫が8700万円(2.8%)。都市銀行等は前年の19億500万円から減少したが、信用金庫・信用組合は1億2300万円から大幅に増加した。また、前年まで被害が確認されていなかった農業協同組合・労働金庫にも、2015年は被害が拡大した。

 被害口座の名義人の多くがセキュリティ対策を実施していなかったという。具体的には、個人口座の被害1222件のうち、916件(75.0%)はワンタイムパスワードを利用していなかったという。また、法人口座では273件のうち、185件(67.8%)が電子証明書を利用していなかったという。その一方で、ワンタイムパスワードを利用していた個人口座118件(9.7%)、電子証明書を利用していた法人口座47件(17.2%)でも、被害が発生している。

 なお、「被害額」とは、犯人が送金処理を行ったすべての額のこと。このうち、金融機関が不正送金を未然に阻止した額を差し引いた「実質被害額」は約26億4600万円だった。ただし、こちらも前年の約24億3600万円を上回っている。

 警察庁によると、不正送金先の口座の約6割が中国人の名義のもの。警察庁では、中継サーバー事業者の一斉取り締まりを行うなど、不正送金事犯にかかわる犯罪インフラ対策を推進したという。

(永沢 茂)