Open Book Alliance、Googleブック検索和解案へ反論する意見書

データベースのライセンス提供義務化を提案


Open Book Allianceのサイト

 Open Book Allianceは8日、ニューヨーク南部地裁に対して、Google Book Search(Googleブック検索)和解案に反論する意見書を提出したと発表した。

 この意見書は、米Microsoftの独占禁止法問題に携わった経験を持つ、著名な独占禁止法専門弁護士のGary Reback氏によって書かれたもので、同団体の考えを反映している。

 Reback氏は、Open Book Allianceの共同創設者の1人でもある。すでに同団体に加盟しているInternet Archive、Microsoft、Yahoo!、Amazon.comなども意見書を提出している。

 今回の意見書の中でReback氏は、この和解案がGoogleの独占を促進し、市場競争を阻害することで消費者に害をもたらすと主張。これに対してReback氏は、Googleがスキャンした書籍のデータベースを他の企業や団体に対して無償あるいは適当な価格でライセンスすることを義務化すべきと提案している。

 意見書の冒頭でReback氏は、かつて19世紀にロックフェラー氏がカルテルを結成し、その結果、ライバル企業を市場から追い出し巨額の利益を上げた有名なエピソードを紹介し、このロックフェラーの行動とGoogleの行動を重ね合わせている。

 さらにGoogleが当初、市場原理に基づいたビジネスプランを検討していたことを立証している。しかしそのプランではわずか15%の書籍しか同社のシステムに組み入れることができなかったために諦め、代わりに法廷を利用して独占的地位を確立し、他の企業が市場に参入できないようにしたと主張している。

 この和解案が成立すれば、Google以外の企業が絶版となった書籍をスキャンしてデジタル化し、正当なライセンスを受ける方法はあまりにも困難なものとなり、そのようなリスクをとる企業が実質的にいないからだ。

 もしそうなれば、Googleが書籍販売の分野で圧倒的な力を確保することになる。すでに米Sonyが電子ブックリーダーを米国で発売する際に、Googleと提携することによって100万冊の書籍をダウンロードできることを訴え、そのメリットを消費者に訴えていることを例として挙げた。この力によって、Googleと提携する出版社はデジタル書籍だけでなく、紙の書籍の価格も高く設定でき、独占によって消費者はより高い代金を支払うことになると主張している。

 Reback氏は、この問題を解決するための有効な方法として、国の反トラスト部門を使用することを挙げ、法廷で細かな法律論争を重ね、司法省の監督のもとに置くよりもはるかに効果的だと主張する。「市場は規制ではなく、競争によって最もうまく働く」と述べている。

 その際に活用できる1つの提案として、Googleがスキャンした書籍のデータベースを、司法省の監督のもとに競合相手にライセンスさせることを義務化することを挙げている。このデータベースは物理的資産ではないため、コピーは迅速かつ正確に行うことができ、それによってライセンスを受けた競合他社は速やかに市場に参入できると主張する。

 ライセンス価格について、経済学者たちはさまざまな経済モデルを作成して検討しているが、いずれにしてもその価格は「それほど高くはない」と算定しており、特に図書館など非営利機関がライセンスする場合には「無償にすべき」と主張している。

 このような方法は珍しいことではなく、司法省の過去の有名な成功例を挙げている。司法省の反トラスト部門が、巨大電話会社のAT&Tに対して、その画期的な発明であったトランジスタのライセンスを認めさせたために、現在のシリコンバレーが存在するに至ったとしている。

 Googleブック検索和解案に関しては、日本や欧州でも多くの反論が出ており、この和解案が認められるかどうか、またGoogleが譲歩するのかどうかが今後注目されるところだ。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2009/9/9 12:15