「ニコニコ大会議」東京で開催、「ニコニコアプリ」構想を発表


 ニワンゴは、2月19日と20日に東京都文京区にある「JCB HALL」で、イベント「ニコニコ大会議2009-2010 ニコニコ動画(9)全国ツアー ファイナル 2Days in 東京」を開催した。初日の19日には、オーディション番組「ニコ生☆生うたオーディション」のファイナルで小室哲哉氏がスペシャルゲストとして登場した。

夏野剛氏「2010年内にニコニコ動画の黒字化達成を」


(左から)ニワンゴの杉本氏、ドワンゴの夏野氏、ニワンゴの西村氏、ドワンゴの小林氏

 「ニコニコ大会議2009-2010 ニコニコ動画(9)全国ツアー」は、ニコニコ動画で人気を集める各地のユーザーをゲストに呼ぶなど、2009年11月14日の仙台から2010年2月6日の広島まで全国8カ所で開催されており、今回の東京公演はツアーのファイナルとして開催された。また、2009年10月に公開した「ニコニコ動画」の新バージョン「ニコニコ動画(9)」で新たに追加する機能や新サービスを大会議の中で多数先行発表された。

 19日には、全国ツアーに参加したニワンゴ取締役の西村博之氏とドワンゴ取締役の夏野剛氏に加え、冒頭にはドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏、ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏が登壇。「ニコニコ動画(9)」のユーザー数や新機能を紹介した。なお、普段は私服にサンダル姿が多い西村氏はスーツ姿で登場し、他の登壇者や来場者を驚かせていた。一方、夏野氏は酒を飲み過ぎたとのことで、声が枯れた状態でイベントを進行させていた。

 「ニコニコ動画(9)」のID登録者数は2月19日時点で1583万人、モバイルID登録者数は476万人。また、月額525円の「プレミアム会員」は68万人に上る。2月4日発表のドワンゴの2010年9月期第1四半期決算によれば、「ニコニコ動画(9)」を含んだポータル事業の売上高は12億9900万円と前年同期比の2倍以上に拡大。ただし、サービスへの先行投資や全国ツアーイベント費用などが発生したことで、営業損失は1億3800万円と前年同期からは改善しているが引き続き赤字が続いている。

 夏野氏は「このイベントの影響で、ニコニコ動画事業は黒字にならない」と語り、「全国を回って費用が1億円を超えている」という。イベント中には「みんなが楽しければOK」との発言がある一方、「今回以降はイベント開催をやめて黒字化させたい」とも述べ、今後の開催の可能性は若干不透明な印象だった。

 夏野氏によれば、イベントを開催していなければ黒字化できる状況になりつつあり、「2010年内に絶対黒字化させる」方針という。その際は、単月黒字を達成するだけではなく、3カ月連続(四半期)の黒字化というように継続的に黒字を維持させたい考えだ。


「ニコニコ動画」のID登録数は1583万人、モバイル版は476万人にプレミアム会員は68万人

夏野氏は2010年内の黒字化達成を目指すと繰り返し発言スーツ姿の西村氏。今回の全国ツアーでは東京以外の8会場すべてに参加した

ニコニコ動画でもアプリ開発が可能に。2010年内に公開予定

 新機能としては、動画の視聴中に他ユーザーとゲームが楽しめる「ニコニコ遊園地」で、ライブ配信サービス「ニコニコ生放送」の番組視聴中にもゲームプレイが可能になる。対応時期は3月中を予定し、ユーザーが配信する「ユーザー生放送」でも配信ユーザーともゲームがプレイできる。


「ニコニコ遊園地」が3月をめどに「ニコニコ生放送」でも利用可能にユーザー生放送でも利用できる予定だ

 また、2010年内には「ニコニコ動画」上で動作するアプリケーションを開発できる統合環境「ニコニコアプリ」を公開すると発表。「ニコニコ遊園地」の開発過程で「ニコニコアプリ」への構想に発展させたものだが、西村氏は「mixiアプリが流行っており、ニコニコ動画でも流行りに乗ろうと思った」とも述べた。

 現時点では構想段階ということもあり、課金機能の有無を含めて詳細は不明。今後、アプリケーションインターフェイスの策定や仕様の決定作業などを進めた上で、事務局の設置、参加受け付け手続き、サーバーや開発環境の増強を踏まえて、「ニコニコアプリ」の公開にこぎつけたい考えだ。なお、「ニコニコアプリ」では誰でもアプリケーションを開発することが可能だという。


ニコニコ動画でもアプリケーション作成が可能になる今後の予定。具体的なスケジュールは不明だが、年内公開を予定する

 イベント中には「ニコニコアプリ」の開発例として、動画の再生画面上に落書きできるというアプリケーションを紹介。同じアプリケーションをインストールしたユーザー同士で落書きした内容を、「ニコニコ動画」に投稿したコメントと同様に非同期での落書き共有にも対応するとした。

 西村氏は「ドワンゴにはチュンソフトなどのゲーム会社がグループ内にいるので、その中からゲームを提供してもらえれば」とコメント。また、ゲームアプリ以外の作成も可能で、夏野氏は「ニコニコ動画の画面をいじることも可能で、面白いアイデアがあれば、同じアプリを入れているユーザー同士でコミュニケーションの幅も広がる」と期待を込めた。


「ニコニコアプリ」では誰でもアプリを開発できる見込みイベントでは落書きアプリのデモも行われた

JASRAC公認の「二次創作オンラインワークショップ」を開催


二次創作オンラインワークショップが開催

 イベントではまた、「ニコニコ生放送」と素材投稿・管理サイト「ニコニ・コモンズ」で、日本シンセサイザープログラマー協会および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科主催による「二次創作オンラインワークショップ~みんなで創って考える~」を開催すると発表した。

 同ワークショップは、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)公認のもと、音楽制作の楽しさや著作権に関して「ニコニコ生放送」で学びながら、ユーザーが実際に二次創作を体験して、その楽しさを知ってもらうことを目的にしている。

 ワークショップでは、「MIDI調教講座」と「動画コンテスト」を通じて、MIDI作品の募集やMIDI作品を使った動画の投稿を募集。MIDI作品の制作にあたっては、JASRACに演奏権が信託された楽曲が利用できる。

 動画コンテストでは、MIDI調教講座の投稿作品を使った動画を募集。利用可能なMIDI作品としては加えて、日本シンセサイザープログラマー協会の会長で、かつてYMOのサウンドプログラマーとして参加し、「4人目のYMO」とも言われた松武秀樹氏による「CHA-LA HEAD-CHA-LA」と「粉雪」、SweetVactionの未発表曲「アンバランス」も、「ニコニ・コモンズ」を通じて公開されている。

 「ニコニコ生放送」での番組配信予定としては、2月22日と23日の各日19時から松武氏やSweetVaction、「VOCAOID」の開発者であるヤマハの剣持秀紀氏らが出演する「MIDI調教講座」を配信。また、2月28日には松武氏やJASRAC常務理事の菅原瑞夫氏らが出演する「二次創作オンラインワークショップ 著作権講座」も配信される予定だ。

 投稿期間は、3月9日23時59分までで、3月14日に審査結果を発表する。優秀作品に選出された作品は、「ニコニコ動画」内で使用されるという。


MIDI調教講座や著作権講座が生配信される優秀作品はニコニコ動画で使用される予定

「ニコ生☆生うたオーディション」では小室哲哉氏も登場


「ニコ生☆生うたオーディション」のファイナリスト6名

 イベント後半には、ニワンゴと株式会社247Musicが共同で実施している「ニコ生☆生うたオーディション ~注文の多い音楽祭~」のファイナルも開催。ファイナリストに残ったぱーらーさん、高田虎太郎さん、でにろうさん、菜遊さん、やまだんさん、キャシャさんの6名が、JCB HALLのステージ上でそれぞれの歌声を披露した。

 大賞は、「ユーザー大賞」と「生うた大賞」の2種類。「ユーザー大賞」は、「ニコニコ生放送」を視聴中のユーザーによる投票と、本イベントに参加したユーザーによる携帯電話を通じた投票数の合計で選出。「生うた大賞」は、審査員を務める都倉俊一氏、川村ゆみ氏、沖田純之介氏の3氏が大賞を選出するもので、大賞選出者はCDデビューもできる。

 ユーザー大賞にはキャシャさんが選出された。一方、「生うた大賞」は該当者なしとなり、都倉氏は「みな魅力的であるし、チャーミングではあったが、プロとしてデビューできるレベルには至ってない」とその理由を説明した。ただし、審査員特別賞が設けられ、同賞には高田虎太郎さんとでにろうさんが選ばれた。また、2月19日には本オーディション企画の第2弾の応募受け付けも開始された。


それぞれが自らの歌声を披露していた(写真はユーザー大賞のキャシャさん)「ユーザー大賞」の生放送投票は、「もう一度聞きたい」と「お腹いっぱい」から二者択一式

 ユーザー大賞の投票者代表として登場したのは、スペシャルゲストの小室哲哉氏。当初は中継映像を通じての参加と紹介されたが、大賞発表時にはステージ上に登場してユーザー大賞のプレゼンテーターを務めた。小室氏自身は「ニコニコ動画」に会員登録していないものの、「奥さん(KEIKO氏)が会員登録をしていて見ています」と語っていた。

 このほかイベントでは、「ニコニコ生放送」の帯番組「とりあえず生中(二杯目)」でパーソナリティを務める陣内智則さん、大島麻衣さん、角谷浩一さんによる座談会も開催。また、“ピアノのおねえさん”こと妃田智さんによるミニライブも行われた。


小室哲哉氏。当初は会場外からの中継として紹介されたが大賞発表時にはステージ上に登場して、ユーザー大賞のプレゼンテーターを務めた

座談会の様子ピアノのおねえさんによるミニライブも

イベントの様子


会場の様子前説はお笑い芸人のデスペラード本イベント配信の裏で生配信をしていたメンバー

会場のロビーには上半身裸の西村氏や夏野氏の写真パネルもこちらは夏野氏の写真。どちらも恐らく写真は合成だと思われる西村博之像も展示されていた

各界の著名人から多数の花も贈られた。上記写真左にはソフトバンクモバイルの孫社長の花もグーグルの辻野社長や音楽業界関係者の花も見られた恒例のグッズ販売も行われた

関連情報


(村松 健至)

2010/2/22 11:36