HPがPalmを12億ドルで買収へ、最終合意

スマートフォンからネットブックまでも視野に


 米HPが米Palmを約12億ドルで買収することで最終的な合意に達したことを、両社が28日、発表した。

 買収は、Palm普通株式1株当たり5.70ドルの現金をHPが支払うかたちで行われる。買収手続きは、HPの第3四半期が終わる2010年7月31日までに完了する予定だ。この取り引きはHPとPalmの取締役会によって承認されているが、今後、関係する各国規制当局とPalm株主の承認を得る必要がある。

 HPがPalmを買収した理由として、スマートフォン市場の今後の成長だけでなく、Palmが保有する「webOS」プラットフォームの影響力が大きいと言えそうだ。HPはスマートフォン市場を含むタブレット端末、ネットブック系端末にまで市場を広げていきたい考えだ。

 まず、スマートフォン市場に関して、HPでは市場規模が1000億ドルであり、年間20%以上の成長率で伸び続けていると試算している。

 特にこの市場において、webOSは大きな意味を持つ。webOSは、携帯プラットフォームのために開発されたマルチタスクOSで、Webサービスや高度な検索機能をOSに統合している。また、独自のジェスチャーによる文字入力や操作ができるユーザーインターフェイスを採用し、携帯アプリケーションを実行するプラットフォームとしても機能する。そしてこれらを総合することによって、携帯端末によるクラウドサービスを展開するためのプラットフォームになるとしている。

 このOSを利用することにより、スマートフォンからタブレット端末、ネットブックとを統合したソリューションとして、さまざまな顧客層に向けてビジネスを展開できるとHPでは考えている。

 HPのハードウェアとPalmのwebOSによる実際の商品が市場に出回る時期について、HPは明言を避けた。また、iPhoneやAndroidなど多数のアプリケーションが開発されている中で新たなプラットフォームに参入する理由として、HPパーソナルシステムグループのエグゼクティブバイスプレジデントであるTodd Bradley氏は、「我々はこの市場がまだアーリーステージにある市場だと信じている」とコメントし、新規参入の余地があるとの見方を示した。

 買収のシナジー効果としては、前述したPalmの世界に通用する携帯OSプラットフォームとユーザー体験のほか、関連する貴重な知的財産ポートフォリオと、才能ある多数のエンジニアと経営陣がいることを指摘。これにHPが強力な財務と、多数のPCを出荷してきた世界規模のビジネススケール、そして携帯コンピューティングへのコミットメント、Palmへの追加的投資を行うことによって、大きなシナジー効果が得られると考えている。

 Palmは、1992年にJeff Hawkins、Ed Collican、Donna Dubinskyによって創業された。1996年には同社初のPDAとなる「Palm Pilot」を発売。シンプルな設計とジェスチャーによる高速な文字入力などで大きな注目を集めた。その後、U.S.Robotics、3Comに買収されるなどの経緯を経て、2000年に再び独立し、スマートフォンの先駆けともなる「Treo」シリーズを発売。しかし近年はBlackBerry、iPhone、Androidなど多数のスマートフォン端末との競争で伸び悩んでいた。

 Palmの現会長兼CEOであるJon Rubinstein氏は、同社に残ると発表されているが、役職などの詳細は明らかにされていない。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/4/29 17:16