2015年までに世界人口の半分をブロードバンドに接続、ITUが具体的目標


 国際電気通信連合(ITU)は25日、インドのハイデラバードで開催されている「World Telecommunication Development Conference」において、報告書「World Telecommunication/ICT Development Report 2010」を公開した。

 この報告書では、2003年のサミット「World Summit on the Information Society」で設定したインターネット通信技術に関する目標の達成度合いと、2015年までの達成目標へのステップが記されている。

テレビの世帯普及率75%に対して、インターネットは25%

 報告書によると、現在、世界の全世帯の75%にテレビがあるにもかかわらず、インターネットに接続できるのは25%に過ぎず、発展途上国では12%にまで下がる。そのためITUでは、世界全体でインターネットに接続できる人口を増やすための努力を行ってきた。

報告書「World Telecommunication/ICT Development Report 2010」は、PDFファイルでダウンロード可能

 これまでの試みとしては、医療機関、政府、教育機関におけるインターネットの活用、地元の言語や地域によるコンテンツの拡充が挙げられる。

 医療機関をインターネットに接続する取り組みでは、携帯端末を使って医療や公衆衛生に関するベストプラクティスを普及させる試みが注目される。全世界の75%以上の国々や地域でこうした取り組みが行われており、例えば南アフリカでは、HIV/AIDS治療のために携帯電話のテキストメッセージが使用されているという。

 電子政府の取り組みでは、自治体と中央政府省庁すべてを接続する目標は、大方達成されたという。次の段階は、すべての国々がより洗練されたインタラクティブなサービスを提供することにある。これには、例えば運転免許申請、税金申告、クレジットカードやデビットカードを使ったインターネット決済などが挙げられる。

 学校での取り組みは国によって大きく結果が分かれた。ヨルダンでは80%の学校をインターネットに接続し、そのうち73%がブロードバンド接続だ。IT分野における高水準の教員を確保し、ほとんどの学校でインターネットを利用した指導が行われているとしている。一方で、先進国であっても十分な数の教員にインターネット通信技術の使用方法を教育することは大きな挑戦となっている。

 ローカルコンテンツや地元言語の使用に関する側面からみると、インターネットは依然として英語に支配されている。しかし英語を理解できる世界人口はわずか15%程度にすぎない。一方、英語を話すインターネットユーザーの割合は減少傾向にある。インド、ロシア、中国などの2005年から2009年のドメイン登録数はますます増加している。

2015年までの3つの目標と50の指標を設定

 こうした結果を受けて、ITUでは2015年までの3つの目標を設定した。1つめに、2015年までに世界人口の半数が確実にブロードバンドを利用できるようにすること。2つめに、世界的にインターネット通信技術を利用できる社会を築きあげること。3つめに、インターネットコンテンツとアプリケーションを開発し続けることである。

 この目標を達成するため、政府は携帯ブロードバンド事業者へのライセンスによって全市民がブロードバンドにアクセスできるようにすることや、教育機関がインターネットに接続し、カリキュラムに組み込むためにリソースをつぎ込むこと、書籍や文書をデジタル化することによってインターネットコンテンツとアプリケーションを発展させ、電子的な文化を醸成することなどを挙げている。特に、全世界のインターネットユーザーの半数は非ラテン系文字を使用していることから、最近になって非ラテン系文字のドメイン名が使用できるようになったことを高く評価している。

 また、2015年にこれら目標を達成するために、明確な政治的目標と進展状況の監視を行うことの重要性を指摘。そのために必要な50の具体的な指標を提示している。

 この調査はITUによって行われ、UNESCO、WHO、UNDESAといった国連関係機関の支援を受けて作成された。


関連情報


(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/5/26 13:29