国会図書館、電子書籍や電子雑誌などの「オンライン納本」を制度化へ


国会図書館によるオンライン資料収集のイメージ

 国立国会図書館は7日、インターネット上で提供される民間の電子書籍や電子雑誌などの「オンライン資料」について、紙の書籍・雑誌と同様に国会図書館が収集する制度を設ける方針を発表した。

 図書、雑誌、新聞、CD、DVD、ビデオなど、頒布を目的として発行されたすべての出版物は、国立国会図書館法により国会図書館に納付することが義務付けられている。ただし、現行法では有形の出版物を対象として想定しており、今後はオンラインでデータとして提供される電子書籍や電子雑誌が増えることが予想されることから、国会図書館の諮問を受け、納本制度審議会がオンライン資料の収集制度のあり方についての答申をまとめた。

 答申では、国会図書館が収集するオンライン資料として、インターネットなどで提供される電子書籍や電子雑誌などを想定。電子書籍や電子雑誌の発行者に対して、国会図書館へのデータ送信を義務付け、収集した資料は紙の書籍や雑誌と同様に館内での閲覧またはプリントアウトの利用に供することが適当だとしている。

 国会図書館では、国や地方自治体が公開しているWebサイトをオンライン資料として、自動収集する保存事業を既に開始している。一方、民間が発行する電子書籍などのオンライン資料については、発行者が国会図書館に対してデータを送信する形とし、発行者はデータを送信する義務を負うが、送信しなかった場合の罰則については現段階では設けないとしている。

 収集するオンライン資料の条件としては、現在紙で収集している「図書や逐次刊行物に相当するもの」。紙媒体版が発行されていても、電子版も収集する。有償・無償は問わず、内容による選別は行わない。具体的には、電子書籍や電子雑誌、電子コミック、携帯小説などが該当すると考えられ、音楽や動画配信、ブログ、Twitter、一般のWebサイトなどは含まれないとしている。

 国会図書館では今回の答申を受け、制度の整備や法改正に向け準備を進め、2011年度の制度化を目指したいとした。

「図書」「雑誌」などに相当するオンライン資料を収集オンライン資料の制度的収集の概略

収集対象は「何らかの編集過程を経ているもの」、Webアーカイブは今後議論が必要

合庭惇氏
濱野保樹氏

 今回の制度について検討した納本制度審議会の「オンライン資料の収集に関する小委員会」で委員長を務めた合庭惇氏は、「携帯小説とブログのように、境界線があいまいなものがあるということは小委員会でも議論となった」と説明。答申では、「従来の出版と同様に、何らかの編集過程を経ているもの」が収集対象として適当であるとしているが、より具体的な条件については今後さらに検討が必要だとした。

 また、収集するファイルのフォーマットや、DRM(著作権保護技術)が施されているファイルの問題、送信に要する費用の補償なども、今後の課題だと説明。原則的には、館内での閲覧に供することができる形で収集していくことを検討しているとした。

 担当者に、INTERNET Watchのような媒体も収集の対象になるかについて尋ねたが、そうした範囲についても今後検討していくと説明された。また、オンライン資料の送信は、国会図書館が設置するサイトに発行者がデータをアップロードする形態を想定しているが、データの量によっては物理メディアによる送付や、発行者の許諾を得て国会図書館が自動収集していく形も想定しているという。

 今回の答申は、電子書籍や電子雑誌などが今後増えていき、紙では発行されないものも増えていくことが予想されることから、こうしたコンテンツを国会図書館がどのようにして収集していくかという課題に対して諮問を受け、検討したものだと説明。ただし、今後は「納本制度」という紙の出版物の制度から離れ、「Webアーカイブ」のようなより広い資料の収集のあり方についても議論が必要だとした。

 米国では、Twitterが米国議会図書館に対して過去のツイートをアーカイブとして寄贈した例がある。今回の制度では一般のWebサイトは収集の対象となっていないが、こうした形でのデータの寄贈は「従来の自費出版の納本などと同様に、既存の収集制度の枠組みで受け付ける」とした。

 納本制度審議会の会長代理を務める濱野保樹氏は、「米国の議会図書館は『米国の記憶』だと言っているが、やはり日本の国会図書館も日本の記憶であってほしいし、文字でも映像でも情報は保存しておいていただきたいと思う。ブログやTwitterなども、保存してあれば望ましいし、それを否定する委員は誰もいない。ただ、現状は予算も人員も限られている。まずは第一歩としてだが、今回の答申に書かれていることが実現できれば、大きな成果になると確信している」と語った。


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(三柳 英樹)

2010/6/7 19:48