auが電子書籍サービス開始、専用端末や専用料金プランなど発表


 KDDI、沖縄セルラーは、電子書籍専用端末となる「biblio Leaf SP02」を12月25日より、関西・沖縄地域から順次販売開始する。新端末の発売に伴って、月額525円の専用定額料金プラン「biblio Leafプラン」も提供され、さらに電子書籍配信サービス「LISMO Book Sore」もスタートする。

biblio Leaf SP02

 「biblio Leaf SP02」は、CDMA 1X WIN方式および無線LAN(IEEE802.11b/n/g)に対応した電子書籍専用ブックリーダー。KDDIが開発したモデルとなり、メーカーは KDDI、本体の製造メーカーは台湾のFoxconnとなる。Foxconnは、デジタル機器の生産を請け負ういわゆるEMS企業。Amazon.com の電子書籍端末「Kindle」や、家庭用ゲーム機などの生産を受託している。

 ディスプレイは約6インチ、800×600ドットの電子ペーパーとなる。E Ink方式の電子ペーパーとなるため、ページを繰る際には画面のリフレッシュが必要。同じ方式はソニーの電子書籍端末「Sony Reader」などが採用しており、「Sony Reader」が画面全体を明滅させるのに対し、「biblio Leaf SP02」は、文字部分のみ明滅させることでページが切り替わる。端末はLinux OSベースと。端末は読書好きをターゲットとしたもので、性別や年齢などによるターゲット設定はしていないという。

 本体下部の操作キーのほか、本体に収納されている専用スタイラスペンでタッチ操作が可能。本体メモリは約2GBで、約3000冊相当の書籍を保存できる。microSDHCカードスロットを搭載する。側面部のボタンで文字の拡大縮小が可能。なお、対応電子書籍フォーマットはXMDF形式となる。

 メモ機能やイラスト機能、カレンダー、電卓機能なども用意されている。スタイラスを使ったタッチ操作で文字入力が行える。国際ローミングには非対応。

 大きさは約198×129×9.8mmで、重さは約 282g。連続閲覧時間は約1万3000ページ。ボディカラーはホワイトの1色で、パッケージにはノートタイプの専用ケースが同梱される。

 端末価格はオープンプライスとなるが、店頭では1万円台半ばで販売される見込み。関西・沖縄以外のエリアは順次販売される予定で、関東エリアは1月上旬になる予定。

biblio Leafプラン

 「biblio Leafプラン」は、2年契約が条件となる「誰でも割シングル(特定機器)」適用で月額525円、非適用で月額1575円の専用料金プラン。新規契約時には事務手数料2835円が別途かかる。

 特定通信に利用を限定したサービスとなるため、電話番号は付与されるが通話はできない。月額利用料のみでパケット通信料の負担はなく、基本料のみで利用できる。なお、電子書籍コンテンツの利用料は別途かかる。

 「誰でも割シングル(特定機器)」を中途解約した場合、解除料として9975円かかる。「biblio Leaf SP02」自体は契約解除後も利用が可能で、後述する「LISMO Book Sore」についても無線LAN経由で利用できる。

LISMO Book Sore

 「LISMO Book Sore」は、小説や実用書、ビジネス書を中心とした電子書籍コンテンツ販売サイト。「biblio Leaf SP02」の発売と同時、12月25日よりサービスが開始される。

 KDDIは、ソニー、凸版印刷、朝日新聞の4社と電子書籍の配信プラットフォームを提供する事業会社「ブックリスタ」を設立しており、「LISMO Book Sore」はソニーの「Reader Store」に続く、ブックリスタの電子書籍配信プラットフォームを採用した2例目となる。ただし、コンテンツの調達はブックリスタに限ったものではないという。

 サービス開始時に約2万点、2011年度中に約10万点のコンテンツが用意される。ブックリスタでは、文章主体のコンテンツを取りそろえており、「LISMO Book Sore」でも「Reader Store」と同等のコンテンツが用意される。

 コンテンツには試し読みコンテンツが用意され、ユーザーレビューも投稿・閲覧できる。作家名や作品名、書籍ジャンルなどで検索できる。現時点は単行本の電子書籍版が中心となり、雑誌の定期購読コンテンツの提供については検討中としている。サービス開始時点では電子コミックは配信されておらず、ブックリスタには朝日新聞が名を連ねているものの、新聞コンテンツについても提供されていない。

 なお、「LISMO Book Sore」は2011年4月にもサービスを拡充し、auのスマートフォンシリーズ「IS series」に対応する予定。カラー液晶モデルが登場するこのタイミングで、電子コミックなどが拡充されるようだ。

 コンテンツの価格は、100円~2000円程度と幅があり、このほか、青空文庫の名作文学など約2000作品が無料で楽しめるようになっている。コンテンツを購入すると購入金額に応じて3%のポイントが発生し、貯まったポイントでコンテンツを購入することも可能だ。

 決済手段は、auの毎月の基本料金と合算して支払える「auかんたん決済」のほか、クレジット決済にも対応する。解約した場合、auとの合算請求はできなくなるが、クレジット払いでコンテンツが購入できる。

 このほか、「LISMO Book Sore」のオープンにあわせて、電子書籍を通常価格の半額で購入できるキャンペーンが展開される。期間は2010年12月25日~2011年3月31日。

電子書籍のマルチユース、マルチデバイスに言及

写真右から、KDDIの雨宮氏、ブックリスタの今野氏

 発表会に登壇したKDDIのグループ戦略統括本部 新規ビジネス推進本部の雨宮俊武氏は、KDDIが業界でいち早く電子書籍にフォーカスしてきたことを説明。調査資料を元に、国内の電子書籍市場の中でも特にモバイルでの電子書籍が盛り上がりを見せているとした。

 雨宮氏は、モバイル環境での電子書籍のメリットにういて、いつでもどこでもコンテンツが購入でき、閲覧が可能な点、保管場所を選ばない点などを挙げた。デメリットとしては、画面の小ささやバッテリー消費、目の疲労感などを挙げ、「biblio Leaf SP02」は高い携帯性とデメリットを払拭した専用端末だと紹介した。

 さらに雨宮氏は、コンテンツのマルチデバイス対応にも言及。「将来的には、同一ユーザーであれば複数のデバイス間でコンテンツを共有できるようにしたい」と語った。版元との権利関係の調整はブックリスタが今後行う予定で、実現時期については未定とした。

 auの電子書籍サービスは、回線契約を伴うため、通常の電子書籍サービスよりも詳細な属性データが得られる。「LISMO Book Sore」は当面、全てのユーザーが同じインターフェイスを利用することになるが、属性データや購入履歴をベースに、よりユーザー個々人の趣味嗜好に合わせた配信ストアの見せ方にも期待される。雨宮氏は、「個別配信はケータイの強みでもある。検討していきたい」と話した。

ブックリスタ今野氏、今度こそ「電子書籍元年」

 発表会には、ブックリスタの代表取締役社長である今野敏博氏も登場した。同氏は、6月までレコチョクの社長に就いており、携帯電話向け音楽配信での成功体験を電子書籍サービスでも展開していく考え。

 今野氏は「ケータイの電子書籍は充実しているが、専用端末の市場は今、マーケットを作る時期。これまでに、3、4回ほど“電子書籍元年” と言われたが、今度こそ市場を作っていきたいと思う。まずはコンテンツを充実させて、各ストア間を横断したキャンペーンや、出版社や映画業界と連動した取り組みなどを視野に、大きな流れにしていきたい」と語った。

 このほか今野氏は、音楽業界において、デジタル配信がCDの売上げ減少を引き起こしたという質問に対して、「多くの方の誤解」とコメント。「現状は、デジタル配信とアルバムCDがコラボしている。配信で音楽を聴いて、その人がCDを買う。かつてのシングルCDとアルバムCDの関係になっており、配信がCD販売の減少を食い止めている。本についても同じようなコラボレーションが起こるのではないか」と述べた。


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(津田 啓夢)

2010/12/21 15:32