人はもうIPv6だけで生活できる!? 「Internet Week」で22社が対応状況を報告
まだ“様子見”の事業者はぜひ聴講を
社団法人日本ネットワークインフォメーションセンターの前村昌紀氏 |
東京・秋葉原で11月30日から12月2日まで開催される「Internet Week 2011」が、約1カ月後に迫った。Internet Weekではここ数年、IPv6が大きな話題の1つとなっているが、特に今年はその比重が高まっているようだ。IPv6に関するセッションは合計6つあるが、その中でもユニークなセッションが、11月30日午後に5時間半にわたって行われる「ここまで来ているIPv6インターネット!」というセッションだ。
同セッションでは、Googleに始まり、Akamai、ライブドア、さくらインターネット、NTTコミュニケーションズ、BIGLOBE、ニフティ、IIJ、So-net、NTT東日本、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクBB、フリービット、NECアクセステクニカ、ヤマハなど、総勢22社・22人に登壇してもらい、各社におけるIPv6対応サービス・製品の現状について語ってもらうという。CDN、コンテンツ事業者、ホスティング事業者、データセンター、ISP、キャリア、通信機器ベンダーなど広くカバーしており、各社がなぜIPv6に取り組んでいるのか、現在どれだけ使われているのかをはじめ、IPv6に対応するにあたって直面した困難や想定外だったことなど、ネガティブな側面も含めて情報共有するという。5時間半あるとはいえ、22人も登壇するということで、1人あたりの持ち時間は10分程度しかないらしいが、これを通して聴講することで国内におけるIPv6対応の現状を総覧できるとしている。
Internet Weekを主催する社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の前村昌紀氏は、このセッションの意図について、「なかなかリアルに感じてもらえないIPv6について、国内のインターネットにかかわる全セグメントの事業者に勢ぞろいして現状を紹介してもらうことで、すでにIPv6オンリーで生活できるぐらいプロダクトが出そろっていることを伝えたかった」と説明する。
前村氏によると、普及に向けて本格的な取り組みが求められるインターネット基盤技術の中で、IPv6は、事業者にとって投資することの短期的なリターンやメリットが見えにくい最たるものだと指摘する。IPv4アドレスの在庫枯渇が現実となったことで漠然とIPv6の必要性は意識しながらも、まだ様子見の事業者が多いのが実情だという。実際のところ、ユーザーからの顕著なニーズがまだない中では、インターネット事業者にとってもIPv6サービス・製品を提供しにくいのが事実だ。
しかし、今後ニーズが出てきた時にすぐにIPv6サービス・製品を提供できるよう事前に準備しておくのと、ニーズが出てからとりかかるのとでは事業展開に大きな差が生まれることになる。前村氏は、おそらくはまだ多数をしめるであろう、まだ本格的に準備にとりかかっていない事業者に対して、このセッションに参加してもらい、自社の事業分野以外のセグメントも含めてIPv6の対応状況を実感し、今、IPv6に対応することのリアルなイメージを持って欲しいと呼び掛けている。
このほかのIPv6関連のセッションとしては、「各種移行技術によるIPv6導入~あなたのネットワークをIPv6対応に~」「事例から学ぶIPv6トラブルシューティング」「IPv6セキュリティの勘どころ」「IPv4アドレス枯渇時代のアプリケーション開発」「ロケットスタート!IPv6」という5つのチュートリアルがある。
前村氏は、IPv6をリアルに感じてもらえないもう1つの理由として、インターネット技術者にとってさえ、IPv6がまだ身近な存在でなく、触る機会もないことを挙げる。「ルーターのコンフィグなど、一回いじるまではわからないが、一度やればわかる。最初のワンステップが重要」だとして、今回、比較的初心者向けにIPv6の技術を学んでもらえるセッションとして、日本のインターネット業界第一線級の講師を招いたチュートリアルを意識的に増やしたとしている。
なお、Internet Weekでは夜の部として、あるテーマに興味のある人が気軽に集まって議論する“BoF(Birds of a Feather)”という枠があるが、その1つとしてもIPv6関連の「IPv6 only access network」というセッションが予定されている。
これはWIDEプロジェクトの主催によるもので、同プロジェクトが9月に実施した合宿において、153人の研究者が4日間、IPv6のみのネットワーク環境の中で過ごした結果を発表する。エンドユーザーとして実際にIPv6を使うことで課題も明らかになったという。前村氏は、WIDEの研究者ということで実社会とはちょっとレベルが違うとしながらも、興味深い知見が報告されるのではないかとしている。
ところで、今年のInternet Weekは「とびらの向こうに」というテーマを掲げている。これは、例えば従来のIPv4インターネットに対し、扉の向こうにはIPv6によるインターネットの世界、あるいはDNSSECやRPKIといった今後のインターネット基盤を支えるセキュリティ技術が広がっているイメージを表しているという。
「10年後、20年後のインターネットはどうなっているかと問えば、誰もがIPv6だろうと答える。ところが、10年後には普及しているはずのIPv6に向けて、今は足踏みしているように見える。簡単に開ける扉ではないが、踏み出さないことには扉の向こうの世界は見えてこない。」(前村氏)
「とびらの向こうに」というテーマは、Internet Week 2011を、その第一歩を踏み出すための場にするとの思いを込めて設定したものだ。前村氏は、「Internet Weekは、インターネットの基盤を支える技術にこだわって、それついて幅広い知識を得られることを目的とした唯一のイベントだと思う。現在のインターネットを語る上で最もホットで、ディスカッションをして最もためになるテーマを設定してプログラムを作っている。ぜひ参加して、それを肌身で感じていただきたい」と語っている。
関連情報
(永沢 茂)
2011/11/1 06:00
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