インタビュー
「あなたに合う出展者」をAIが教えてくれる!「共創のプロ」アビームコンサルティングが描く「CEATECでの共創の作り方」とは
人気の「共創体験ツアー」は今年も実施、AI×コンサルタントの組み合わせも
2025年10月10日 23:01
CEATEC展示会場における「共創の実践例」として、毎年注目を集めているアビームコンサルティングが、2025年10月14日から千葉県幕張メッセで開催されるCEATEC 2025に、今年も出展する。
そして、今年も同社ブースでは人気企画の「共創体験ツアー(ウォーキングブレスト)」を実施する。今年で3年目となるこの企画は、共創のプロである同社のコンサルタントとともに、スタートアップ企業や大学、研究機関などのブースを巡り、ツアー参加者と各ブースの共創を創出するものだ。さらに今年は、共創の入り口をより広げる「共創アイデア生成AIエージェント」を会場で利用できるようにする。

「共創アイデア生成AIエージェント」は、あらかじめ入力されている各ブースの内容と、来場者の課題や状況をAIがマッチング、「あなたに合う出展者」を紹介するものだ。
そして、この「共創アイデア生成AIエージェント」と「共創体験ツアー」でさらに様々な共創を作り出していくのが同社施策の特徴だ。
また、5つのテーマをもとにした講演およびパネルディスカッションを用意。未来の価値創造に向けた共創のヒントを提示する。同社執行役員 プリンシパル 未来価値創造戦略ユニット長の橘知志氏に、CEATEC 2025の出展の狙いなどを聞いた。
「AIを実装し、その成果を求めるフェーズに入ってきた」
アビームコンサルティングは、「Build Beyond As One」をブランドスローガンに掲げる、日本発のグローバルコンサルティングファームである。専門知識と豊富な経験を持つ約8800人のプロフェッショナルと、世界各地のアライアンスパートナーの力を統合し、企業の変革への挑戦を支援し、企業や組織の未来を共創する役割を担う。
CEATEC 2025に出展するのは、同社の未来価値創造戦略ユニットであり、あらゆる産業のプロジェクト実績をもとに、マルチインダストリーでの技術や知見を組み合わせて、グローバルネットワークや社外組織との共創を通じた新たな企業変革の実現を支援している。
アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 未来価値創造戦略ユニット長の橘知志氏は、「海外で開催される展示会の状況を見たり、日本のお客様から話を聞いたりすると、いよいよAIを実装し、その成果を求めるフェーズに入ってきたと実感している。また、約5年前に注目された社会課題解決に向けた戦略策定などの内容が改めて見直され、それに合わせて、官民連携のような動きも表面化している。いい意味での先祖返りをしている」と前置きし、「たとえば、これまではスマートシティという大きな枠組みの中での議論が多かったが、モビリティや災害対応、海洋問題など、より具体的なテーマと、より具体的な方法論が議論されるようになってきた。当社の未来価値創造戦略ユニットの取り組みも、こうした変化にあわせて、範囲を広げたり、絞り込んだりしている段階にある」とする。
未来価値創造戦略ユニットでは、「スマートマニュファクチャリング(未来工場構想)」、「オープンイノベーション型事業支援(スタートアップ共創)」、「サステナブル社会と循環経済」といったテーマを柱に、社会変革アクセラレーターとして、価値提供に取り組んでいるところだという。
2つのテーマで描く、未来の共創モデル
今回のCEATEC 2025の同社の出展も、こうした市場動向の変化を捉えたものになる。
橘氏は、「CEATEC 2025では、社会に新たな価値を共創する『社会変革アクセラレーター』として、2つの共創テーマのもとに、講演や展示を実施する」と語る。
ひとつめのテーマは、「新規事業とオープンイノベーション」である。
共創の道筋やイノベーションを持続的に生み出す仕組みや思考プロセスを、展示やコンファレンスを通じて紹介する予定だ。
具体的には、大企業とスタートアップの共創における成功の要諦や事例を紹介する「スタートアップと大企業連携による新規事業共創支援」、自律的な新規事業創出や共創体験の機会を提供する「自律支援型の新規事業創出プログラム」、アートの視点を取り入れた新規事業創出の紹介、体験ができる「アート×ビジネスによるアイデア共創支援」で構成する。
もうひとつは、「サステナブル社会と循環経済」である。
ここでは、地域発のイノベーション創出や産業間連データ連携におけるモデルやユースケースを紹介。資源保護と資源循環をテーマにした取り組みを紹介し、地域発のイノベーション創出を促進する「サーキュラーエコノミーによる社会変革共創支援」と、社会課題解決と経済成長の両立に向けたエコシステム構築の実例を紹介するとともに、データ連携をもとにした業界横断での共創を支援する「産業データ連携による社会変革共創支援」で構成する。
5つのコンファレンスで深掘りする、共創のヒント
会期中に実施される5つのコンファレンスのテーマも、これらに準拠したものになる。
たとえば、10月17日午後1時30分から、国際会議場コンベンションホールで開催する「真に実装されるオープンイノベーションのための処方箋~政策と支援観点からみる共創の難所と克服策~」では、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構、アビームコンサルティングが登壇し、「実装される共創」の構造と実現要件を、多角的に議論。成功事例にとどまらず、失敗例なども交えながら、共創における具体的な課題などを浮き彫りにする。
また、10月15日午後1時から、ネクストジェネレーションパークのステージで行われる「愛知県企業×海外スタートアップ共創プログラム“Landing Pad”から紐解く、日本型オープンイノベーションのあるべき姿」では、注目を集めている愛知県のSTATION Aiによる具体的な取り組みをベースに、日本ならではのオープンイノベーションの在り方について議論する。
さらに、「サステナブル社会と循環経済」の切り口では、10月14日午前11時30分から、「社会課題の解決と経済発展の実現に向けた産業データ連携の取り組み~持続可能な社会の実現と未来型のまちづくり~」と題した講演を実施。地方創生や循環型ビジネス、産業データ連携をテーマに、具体的な資源保護や資源循環、未来型まちづくりの事例を紹介する。社会課題の解決と経済発展の実現に向けた産業データ連携の取り組みも発信する予定だ。製造業における金型のデータ連携活用、モビリティ、海洋問題など、具体的な事例も紹介される。
そのほか、昨年のCEATECでも話題を集めたメガバンクベンチャーキャピタル3社(三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル)による「激変する市場環境におけるスタートアップ・企業共創のあり方とは」と題したコンファレンスや、アーティストや、アート分野でも実績を持つ寺田倉庫など、アート領域のキーパーソンを招き、人々の行動変容や空間活用を通じた価値創造について議論する「アート×都市×企業が描く新たな共創像とは」も開催する。
橘氏は、「この2つのコンファレンスは、昨年も実施して話題を集めた。今年はより具体的で、わかりやすい事例を紹介できる」とし、「とくに、アートの共創事例では、デザイン思考の観点からの説明も行う。アーティストの多くは、歴史を勉強し、デジタルにも興味を持ち、作品を仕上げる工程がデジタル化しているなど、多くの企業のビジネスに必要な素養を兼ね備えている。アートは、ビジネスとの親和性が高いという点も伝えたい」と語る。
AIが「あなたに合う出展者」を紹介する「共創アイデア生成AIエージェント」人気の「共創体験ツアー」は今年も実施
CEATEC 2025におけるアビームコンサルティングの取り組みで注目を集めるのが、CEATEC共同企画と位置づける「共創体験ツアー(ウォーキングブレスト)」と、「共創アイデア生成AIエージェント」である。
共創のプロとスタートアップをめぐる「共創体験ツアー」
「共創体験ツアー」は、今年で3回目となるアビームコンサルティング監修の企画である。共創のプロであるコンサルタントが来場者の課題や関心領域をヒアリングし、回答をもとに、CEATEC 2025のネクストジェネレーションパークに出展する国内外100社以上のスタートアップ企業などを厳選して紹介する体験型企画となっている。
参加したい来場者は、ネクストジェネレーションパークのアビームコンサルティングのブースと、NGPステージ横のネットワークラウンジに設置された特設カウンターで受付ができる。時間は約30分間で、複数のスタートアップ企業を、アビームコンサルティングのコンサルタントの監修をもとに訪問。1日5、6件の個別ツアーを実施する予定だ。
橘氏は「これまでは、どのようなスタートアップ企業があるのかを知りたいという目的で参加する来場者が多かったが、今年は具体的にテクノロジーを実装したい、課題を解決したいと考える来場者の参加が増えると予想している。共創体験ツアーの参加者にも、自らが持つ課題をしっかりと提示してもらったほうが、課題解決に最適なスタートアップ企業を紹介しやすい」と語る。
AIが「あなたに合う出展者」を紹介する「共創アイデア生成AIエージェント」
もうひとつの目玉となる「共創アイデア生成AIエージェント」は、スタートアップとのマッチングを、AIエージェントを活用して後押しする企画だ。
昨年のCEATECでは、「Biz-Board」の名称で、会場内に設置した大型タッチディスプレイに、来場者が持つ課題を入力すると、それを見た出展者やスタートアップ企業が解決できる技術やソリューションを提案。マッチングのきっかけを提供していた。今年のCEATEC 2025では、AIを活用することで、この仕組みを大きく進化させたともいえる。
橘氏は、「アビームコンサルティングの共創ノウハウを活用したAIエージェントであり、マッチングのきっかけを提供し、共創の0.1歩目を支援する」と語る。
会場内に設置したタブレットに、興味があるテーマや、活用したい場面、気になっている課題などをインプットすると、CEATEC 2025の出展企業の中から共創の可能性があるスタートアップ企業候補を表示。さらに、共創アイデアの提案や、会話の切り口として、最適なヒントも提示する。

アプリは、CEATEC 2025のためにオリジナルで開発したものであり、利用できるタブレットを6台を設置。アプリの操作は、質問に答える形でタッチするだけでOKだ。
用意されているAIエージェントは、事業構想領域コンサルタント、技術連携領域コンサルタント、社会実証領域コンサルタントの3種類であり、それぞれの特性を生かしたマッチング提案が行われる。たとえば、技術分野での共創を求めるのであれば、技術連携領域コンサルタントを選択し、自治体などの場合には、社会実証領域コンサルタントを選択するのがいいという。
共創イメージとして、「協業/PoC」、「調達/投資」、「導入/発注」、「共同研究」、「採用」、「情報収集」などの項目を用意。さらに、共創において「気になる分野」として、「AI/生成AI」、「ロボティクス」、「ヘルスケア/ウェルネス」、「グリーンテック/環境」、「モビリティ」、「セキュリティ」などを選択できる。
そのほか、導入時期、予算感などを指定すると、最適と考えられる出展者を、ブース番号とともに表示する。選定する出展者は、AIエージェントごとに異なり、マッチ度を表示すると同時に、AIエージェントが選定した理由も表示する。
コンサルタントが常駐する展示ブースで、共創のきっかけを
アビームコンサルティングの展示ブースでは、「新規事業創出とスタートアップ共創」、「海洋資源保護や事業系排出油循環の推進支援」、「モビリティ発のまちづくりに向けたエコシステムの構築支援事例」、「アート×ビジネスによる新規事業創出サービス」、「自律支援型の新規事業創出プログラム」の5つのソリューションを展示する。
また、ブース内では、来場者とディスカッションを行えるほか、ワークショップの場所も用意。会期中には、約20人のコンサルタントが常駐して、共創のきっかけづくりを支援する。
橘氏は、「共創の新たなきっかけを生み出す場として活用してほしい」と語る。また、「新規事業の創出に悩んでいる企業や、DXやAIの取り組みがうまく進んでいない組織の方々にもぜひ来場いただきたい。会期中にブースのコンサルタントと接点を持つことで、CEATEC 2025の会期終了後に改めて相談してもらっても構わない。半日間でいいので、CEATEC 2025の会場に気軽に足を運んでいただければ、何らかの解決策をご提案できるのではないか」と述べている。
具体的な共創の成果を求めている企業や組織だけでなく、DXの推進や課題解決の壁に直面している企業や組織にとっても、解決の糸口が得られるかもしれない。
CEATEC 2025見どころガイド
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