教師を怒り狂わせて動画を撮影、SNSで共有~“サイバー餌付け”日本でも懸念
シマンテックが調査レポート最新版
株式会社シマンテックのロジャー・ヨーダー氏(コンシューママーケティング部執行役員部長) |
株式会社シマンテックは22日、子供のインターネット利用実態などを世界規模で調査している「ノートンオンラインファミリーレポート」の最新版を発表した。
動画撮影可能な携帯電話とSNSの普及を受け、子供たちの間で行われているという“サイバー餌付け”と呼ばれる教師いじめや、親に内緒で行っている秘密のオンラインショッピングなどの動向を報告している。
調査は今年3月、調査会社のStrategyOneがオンラインで実施した。対象国は、日本、米国、英国、中国、オーストラリアなどを含む24カ国。昨年の調査では14カ国だったが、アジアや新興国を中心に拡大した。回答者は、保護者2956人、8~17歳の子供4553人、8~17歳の生徒の教師2379人。今回、新たに教師を調査対象にしたのが特徴だという。日本はこのうち、保護者512人、子供200人、教師100人。
●スマホやSNSが普及すれば、やがて日本でも“サイバー餌付け”が
シマンテックのロジャー・ヨーダー氏(コンシューママーケティング部執行役員部長)によると、サイバー餌付けとは、子供たちが教師に嫌がらせをすることでわざと怒らせ、その様子の動画を携帯電話で撮影、SNSに投稿して教師や学校に恥をかかせる行為のこと。米国が発祥だという。単に怒らせるというレベルではなく、教師が怒り狂う態度を見せるまで嫌がらせをして、そのワナに食いついたところで動画を撮影するのが“餌付け”と呼ばれるゆえんだ。
今回のレポートによると、自分自身または同僚がサイバー餌付けの餌食になったと回答した教師は21%で、5人に1人の割合に上ることがわかった。
教師にとってSNSが、生徒とコミニュケーションをとったり、オンラインでの安全について話し合う機会をもたらすなどプラスの面がある一方で、課題があることも示している。SNSで生徒と友達になっていると回答した教師は34%いたが、その一方で教師の67%は、SNSで生徒と友達になることでリスクにさらされると考えているとの結果も出ている。
日本に限ってみると、SNSで生徒と友達になっていると回答した教師は6%にとどまった。ヨーダー氏は、日本の教育現場が保守的であることや、SNS自体がまだそれほど普及していないことが理由とみているが、今後、ソーシャル化が進むと、日本の子供たちにもこのような行動が出てくるのではないかと予測する。
実際のところ、インターネット利用時間が長い子供ほど、好ましくない行動を経験する割合が高くなるという強い相関関係があるという。とりわけ、SNSを使うようになると、好ましくない行動をする割合が2倍に増えるとの結果も出ているとした。
日本の子供におけるSNSやスマートフォンの利用は、海外に比べて低いレベルだというが、今後スマートフォンが普及し、スマートフォンを持つ子供が増えると予想されている。より多くの子供がより多くの時間をインターネットで過ごすことになれば、日本の子供にもサイバー餌付けがまん延してくるのも時間の問題ではないかと懸念を示している。
なお、インターネットで好ましくない経験をしたことがある子供の割合は、世界では前回調査の62%から今回58%に減少した(24カ国のうち、継続調査している14カ国の数字)。ヨーダー氏は「子供・保護者ともに、インターネットを安全に利用するための活動が少しは浸透してきたと言える」とみている。一方、日本はもともと世界平均よりもこの割合が低く、今回の調査では24%だったが、前回の23%からは横ばいとなっている。
インターネットで好ましくない経験をした子供の割合およびインターネット利用時間との相関関係 |
●自ら子供にカード番号などを渡していた保護者が半数
オンラインショッピングに関する調査では、積極的にオンラインショッピングを行っている子供が33%おり、そのうちの24%は、保護者の許可なしにショッピングした経験があるという結果も出ている。なんと、保護者の半数が、自分のクレジットカード情報やショッピングサイトのアカウント情報を、自分から子供に渡していたという。
日本の状況については、サンプル数が少なくなるために厳密には世界平均と比較できないというが、同様の傾向があるという。積極的にオンラインショッピングをしていると回答した子供が32%、カード情報などを子供に渡していた保護者が56%だった。ただし、保護者の許可なしにショッピングを行っていた子供は11%にとどまり、ヨーダ―氏は「世界の子供に比べて正直なのではないか」とした。
子供が購入しているのは、音楽、ゲーム、エンターテインメント関係のものが多いとしている。
子供のオンラインショッピングの内容 |
●性的画像を受信しても「誰にも言わない」日本の子供で30%、話し合う機会を
ヨーダー氏は、保護者には子供を監督する義務がある一方で、それを24時間行うことは不可能であり、インターネットであればなおさらだと指摘。「親の盲点」というキーワードで課題を提示し、特に日本の状況を懸念する。
ヨーダー氏によると、子供の好ましくない行動が盲点になるのは、子供たちが好ましくない経験をしても保護者にそのことを話さないからだ。話さない理由としては、「怒られるから」の20%、「親が過剰反応するから」の19%などが挙がった。日本の子供もほぼ同じだが、日本特有の理由として「恥ずかしいから」が10%あったとしている。
また、子供が「性的な画像が送信されてきたらどうするか」との設問では、「保護者に言う」が世界では38%だが、日本では10%に過ぎず、逆に「誰にも言わない」が30%に上った。本来であれば、こうした経験をきっかけにして親子でインターネットの安全な利用方法などについて話し合うべきだが、「何も聞かない、何も話さない」と言われる日本人特有の意識こそが、親の盲点になっているとヨーダー氏は指摘した。
実際、子供の監督状況をみると、あまりいい状況ではないという。インターネット利用時間の制限や閲覧サイト制限、ペアレンタルコントロールなどを実施している保護者は世界でも半数以下であり、日本ではさらに少ないという。
ヨーダー氏は、子供のインターネットの安全利用について最終的な責任は親・家庭内にあるとし、日本の保護者も積極的にアクションをとってほしいと言う。ウェブフィルタリングを使うだけでなく、子供と話し合う機会を持つべきだとし、「まずは決まりを設けてそれを守ること」を教訓として挙げた。
レポートによれば、家庭の決まりを守る子供のうち、インターネットで好ましくない経験をする割合が52%と半数にとどまる一方、インターネットに関する家庭の決まりを破る子供の82%がオンラインで好ましくない経験をしているということだ。
家庭の決まりについての設定状況 |
シマンテックでは、子供のインターネット利用を監督するためのソフト/アプリ「ノートン オンライン ファミリー」を無料提供している |
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(永沢 茂)
2011/11/22 19:00
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