米政府が「消費者プライバシー権利章典」草案公開、“追跡拒否”強制可能に


 米ホワイトハウスは23日、「Consumer Privacy Bill of Rights(消費者プライバシー権利章典)」の草案を公開した。すでにGoogle、Yahoo!、Microsoft、AOLなどが大枠で合意しており、約9割の行動ターゲティング広告によるトラッキング(ユーザー行動の追跡)を、消費者の希望により拒否できる仕組みを設けることに強制力を持たせたい意向だ。

 オバマ政権は米国議会と協議し、消費者保護を担当している米連邦取引委員会が強制力を持って消費者のプライバシーを保護できる法律策定を目指す。

 今回の草案は、最近ではGoogleとAppleが、また、それ以前にも携帯キャリアやFacebookなどのテクノロジー関連企業が消費者のプライバシーを著しく侵害すると考えられた事例が多発し、人々の関心が高まっている流れの中で公開されたものだ。

 米国商務省は2010年以来、消費者のインターネットにおけるプライバシー保護に関連した法案の検討を行っていた。

 オバマ政権が公開した草案では、インターネット利用者に、プライバシーに関するさまざまな権利を与えることになっている。その中には、企業が収集するデータの扱いに責任を持つことをユーザーの権利として期待できること、収集データの種類の設定、収集されたデータをわかりやすく確認し、修正できる権利、第三者によってデータが利用されない権利、個人情報収集に適切な制限を設けることなどの要件が含まれている。

 草案には、現時点で大手広告配信ネットワーク各社が賛同を表明。「Do Not Track」テクノロジーをほとんどのメジャーなブラウザーに実装することによって、消費者が簡単にトラッキング可否を設定できる仕組みを設けるとしている。これらの企業にはGoogle、Yahoo!、Microsoft、AOLが含まれており、90%近い行動ターゲティング広告が含まれると考えられている。同意した企業は米連邦取引委員会の強制力のもとに置かれるとしている。

 また、広告業界は、消費者のブラウジングデータを広告目的以外で使用する可能性のある企業に提供しないことにする。例えば、雇用主による採用決定や、保険会社の査定などでの利用が想定されている。しかしこうした文面からは、それ以外の方法で利用される危険性が示唆されることから、一部プライバシー保護団体は懸念を表明し、法案の本格的な策定状況を注視している状況だ。

 インターネットのプライバシー問題はますます重要性を帯びてきている。特に今週、GoogleがSafariとInternet Explorerのプライバシー設定をすり抜けることによって、ユーザーのプライバシー情報を不当に利用していたとして、激しい批判を浴びている。また、iOSアプリ「Path」がiPhoneのコンタクト情報を自社サーバーに無断で保存していたことで批判を受け、謝罪に追い込まれた結果、Appleはユーザーのコンタクトを許可なく収集するアプリは同社のガイドラインに違反していることを明確に表明することとなり、モバイルアプリのプライバシーにも注目が集まった。

 それ以前にもGoogleとAppleが位置情報の収集に関して批判を受けただけでなく、iPhoneやAndroid端末に組み込まれたソフトウェア「CarrierIQ」による情報収集でもプライバシー侵害との声が上がり、大きな問題となった。

 Facebookは、ユーザーの個人情報の塊ともいえるサイトであるだけに、プライバシー設定の問題や、「いいね!」ボタンのトラッキング、広告表示方法などについて、常にユーザーからの批判にさらされている現状がある。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2012/2/24 12:37