まもなく公開「ニコニコ動画(Zero)」、川上・夏野氏が注目ポイント解説
株式会社ニワンゴは26日、ニコニコ動画の新サービス先行記者発表会を東京・六本木のニコファーレで開催。5月1日にプレミアム会員先行でリリースされる「ニコニコ動画(Zero)」の詳細を発表した。また、サービスのグローバル化を視野に入れ、ニコニコ動画やニコニコ生放送など各種サービスの総称を「niconico」に変更することを明らかにした。
ニコニコ動画ではサービス開始5周年を機に「原点回帰」をテーマに掲げ、次期バージョンの名称を「ニコニコ動画(Zero)」に変更。Zeroでは、トップページや視聴画面のバージョンアップのほか、音声ダウンロードなどの新サービスを開始する。新旧のバージョンは選択制で使用できる。
以下、株式会社ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏と、同取締役の夏野剛氏の開設をもとに、Zeroの注目ポイントを紹介していく。
サービスのグローバル化を視野に入れ、ニコニコ動画やニコニコ生放送など各種サービスの総称を「niconico」に変更する |
●動画視聴ページを刷新した「ニコニコ動画(Zero)」
1)視聴画面サイズのバージョンアップ
画面サイズが「640×368」から「864×486」に拡大。
2)リアルタイムタグ編集
タグがリアルタイムでページに反映される
3)動画再生リスト
再読み込み不要で動画の切り替えが可能に
4)動画選択ウィンドウ
動画を視聴しながら同じページ上で次に見たい動画が選択可能に
5)動画レビュー
視聴した動画の感想を書き、他のユーザーと共有できる
画面サイズが「640×368」から「864×486」に拡大する |
夏野氏:Zeroで最も大きく変わったのが動画の視聴ページ。現在、ニコ動ユーザーの平均滞在時間は1時間40分と言われているが、その中で最もよく使われているのが視聴ページ。ユーザーの滞在時間をもっと長くして、もっともっとニコ厨にしちゃおうというもの。
川上氏:ニコニコ動画のプレーヤーの外形は過去5年間変わっていなかったが、一から作り直した。最大の特徴は、動画を切り替えなくてもどんどん視聴できること。
川上氏:昔のニコ動はリアルタイム性がユーザーに支持されたが、ユーザー数が増えるに従って、負荷分散などの観点からリアルタイム感が減っていった。リアルタイムタグ編集は、それを一気に取り戻そうというもの。ニコ動は動画の「タグ戦争」が有名。タグを編集合戦したり、タグでチャットする人もいるが、それがリアルタイムに反映されるようになる。
夏野氏:アクセスが多い動画はタグを見ているだけで面白い。
●リアルタイム感を重視した「ニコニコ生放送(Zero)」
1)新画面サイズと高速番組切り替え(ザッピング)機能
画面サイズが「512×384」(プレミアム会員の一部は「640×360」)から「810×456」に拡大。視聴画面の下には関連番組の一覧を表示し、視聴ページのままでも他の番組に切り替えられる。
2)リアルタイム感を重視した「Recent(リーセント)」
生放送の各カテゴリーのトップページに、放送中の番組一覧が表示され、リロードをしなくても、番組のコメント数、視聴者数がリアルタイムで更新される。コメント数、視聴者数の増加、新しく書き込まれたコメントは、更新と同時にポップアップ表示される。
3)話題の生放送がわかる「新ランキング」
ユーザー生放送のランキングでは、コメント数、視聴者数の増加がリアルタイムに表示され、ランキングの基準が「ポイント数」から「コメント数(/分)」になる。また、視聴している番組のランクインの状況は、視聴ページにて放送者と視聴者にリアルタイムで通知される。
高速番組切り替え(ザッピング)機能 | リアルタイム感を重視した「Recent(リーセント)」機能 |
夏野氏:ニコニコ生放送の「Recent」機能は、今までのウェブサービスには無かったもの。現在放映中の生放送のサムネイル画像が出てきて、投稿されているコメントがどんどん表示される。ユーザー生放送は山ほど番組ほどあるが、(Recent機能によって)盛り上がっている番組が視覚的にとらえられる。
川上氏:リアルタイム性を確保するのに相当なサーバーやプログラムの開発が必要だった。地味ではあるが、非常に便利なサービス。生放送のトップページだけでなく、新ランキングでもリアルタイムにコメントが付くため、放送を見ている人に「この番組がランクインした」と通知されたりするのが楽しい。
夏野氏:ランキングで盛り上がっているなら「見てみようか」となる。今ユーザーが増えているとか、コメントが投稿された、というのがポコポコポコポコと温泉みたいに出てくる。
●お気に入りのコメントやタグなどを評価する「ニコる」機能
視聴ページに設置された「ニコる」ボタンをクリックし、対象アイテムを評価できる。「ニコった」履歴や「ニコられた」履歴は、「ニコるページ」から確認することが可能だ。ニコるボタンの対象はコメント、タグ、ニコレポ、動画、ニコニコ市場商品。
お気に入りのコメントやタグなどを評価する「ニコる」機能 |
夏野氏:センスのいいコメントが流れてきた時などに、Facebookの「いいね!」を視覚的にやってしまおうというもの。これでさらにユーザー同士のコミュニケーションを活性化していきたい。
川上氏:ニコ動の「いいね!」と思ってもらえれば。インターフェイスは単純だが、「ニコる」ボタンを押すのは生理的な快感がある。かなり流行るのではないか。
●ニコ動の公式音楽ダウンロード機能「NicoSound」
クリエイター(動画投稿者)が許可した作品に限り、投稿された動画の音声部分をニコニコ動画内(PCブラウザーとAndroid端末)で無料ダウンロードできる。
NicoSound開始にあたっては、日本音楽著作権協会(JASRAC)と使用許諾にかかわる新たな包括契約を締結。これにより、JASRAC管理楽曲を“演奏してみた”“歌ってみた”作品も無料ダウンロードできるようになった。
なお、楽曲がJASRAC信託曲の場合は、ダウンロード数を加味した楽曲利用料が、JASRACから楽曲の権利者に分配される。楽曲のファイル形式はAAC(DRMフリー)。
ニコ動の公式音楽ダウンロード機能「NicoSound」 |
夏野氏:ニコ動の楽曲をスマホで聞きたいというニーズに応えるもの。
川上氏:現在、YouTubeやニコ動の動画をダウンロードするアングラなサービスがあり、中には100万ダウンロードを超えるようなツールもある。いわば半分違法な状態だが、ニーズがあるのであれば、我々としてはしっかりと権利処理をした上で、ユーザーが正規に楽曲をダウンロードできる手段を提供しようと考えた。将来的にはNicoSoundを通じて、楽曲をダウンロード販売できる仕組みも提供していきたい。
●ニコ動に投稿された音楽を聴く、ユーザー参加型リクエスト放送「Nsen」
8つの専門チャンネル「VOCALOID」「ニコニコインディーズ」「歌ってみた」「演奏してみた」「東方」「PV」「蛍の光」「オールジャンル」を開設し、24時間放送する。各チャンネルでは、30分ごとのユーザーによるリクエストコーナーと独自にプログラムされた動画紹介コーナーを交互に放送する。
川上氏:延々と蛍の光が流れ続けるようなチャンネルもある。
夏野氏:どこかの会社がやっているサービスをインターネットでやってしまおうというもの。特にニコ動を見ようと思っていない人が、音楽をかけるかわりにPCでNsenにアクセスしてもらうことを想定している。
夏野氏 | 川上氏 |
このほか、ニコニコ動画のiPadアプリを5月1日にリリースすること、時期は未定ながらもソニーとパナソニックがニコニコ動画に対応したテレビを販売することなどが明らかにされた。
なお、各新サービスは、4月28日、29日に千葉・幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議」で先行公開され、来場者は公開より一足早く試用できる。
26日の記者会見では川上氏と夏野氏がニコニコ超会議にかける思いについてもコメント。川上氏が「我々がもう一度やらない限り、このようなイベントは二度と無いはず。成功するにしても、失敗するにしても歴史的なイベントになる」と語ると、夏野氏は「ネットで起こっていることをすべてリアルの場に集めた。事業的にはどうしようもないが、日本のコンテンツ史に残るイベントになる」と述べ、来場を呼びかけた。
ちなみにニコニコ超会議の来場目標数は2日間で10万人。川上氏と夏野氏は「どこまで行くかわからない」と口を揃えるが、「10万人が入っても赤字」(夏野氏)、「20万人が入っても赤字」(川上氏)、「30万人入ったら対応できません」(夏野氏)という。ただし、イベントにかける予算はニコファーレの建設費ほどではないとしている。
関連情報
(増田 覚)
2012/4/27 06:00
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