ニュース

「プレミアムな乗車体験を」、ハイヤー手配のUberが正式サービス

 Uber Japanは、スマートフォンからハイヤーを手配できるサービス「Uber」の正式サービスを、東京都内において開始した。利用料は、最低料金が800円。走行距離と時間にあわせて課金される形で、100円でスタートし、毎分65円および1kmごとに300円かかる。なお、成田空港~東京23区は定額として4万円となる。

ハイヤーをアプリで

 Uberで利用できるサービスは、丁寧な接客や上質な自動車を用いる、いわゆる「ハイヤー」をアプリから呼び出せる、というもの。アプリの利用開始時には、クレジットカードを登録して会員になり、地図上で迎えにきて欲しい場所を指定する。配車依頼を行うと、その場所へ向かうドライバーの名前と顔写真がアプリに表示される。名前の表示は、今のところ、海外版と同じくドライバーのファーストネームが示されるという。アプリから運転手に電話をかけて、より具体的な配車場所を伝える、といったこともできる。

 これまで六本木周辺で試験サービスを提供してきたが、正式サービスを迎え、今後は提携するハイヤー会社を拡大し、利用できる場所を広げる。さらにその次の段階として、利用できる車種を指定する、といったサービスの提供も検討される。

エリアは徐々に拡大

密度を高め、エリアを広げ、そしてバリエーション(車種の選択)を広げたいという

 サービス開始当初は、Uberが提携するハイヤー会社はどこか、あるいは何台利用できるのか、といった情報は明らかにされていない。そのため、利用できるエリアや、配車にかかる時間もUberのWebサイト上では明確には示していない。

 3日の記者会見では、Uber Japanの塩濱剛治氏は、「当面は六本木からスタートして、渋谷、新橋などに拡がっている。ユーザーのもとに到着するまでの時間は10分くらいを目標に拡大していきたい」とコメント。また東京以外でのサービス提供についても、「まず東京でのローンチを目指してきたため、他の都市については正直考えていない」とした。

降車時に支払い手続きなし

 登録したクレジットカードで支払う形となり、降車時に支払いすることはない。レシートはメールで届けられる。一方、ハイヤーにはiPadが搭載され、運転手は配車依頼先の地図を確認して目的地に向かう。

 Uberの会員が同乗すれば、アプリ上で「割り勘」を指定することもできる。

グローバルで同じ使い勝手、仕組みは地域ごとに

 Uberが利用する機器、通信ネットワークは、ソフトバンクBBが提供する。

 日本でのサービスを提供するにあたり、Uberは旅行代理店として登録され、タクシーではなく、ハイヤーを手配する、という形態をとっている。米国サンフランシスコでサービスが開始された2010年の段階では、現地のハイヤードライバーがUberと提携して、隙間時間にUberの顧客を運ぶという形。一方、日本では当初より、ハイヤー会社と提携する。

ハイヤーの様子
記者説明会は米国大使館内で開催され、ハイヤーやアプリなど実際のサービスを敷地内に持ち込めず、スライドでの紹介に留まった

 ハイヤー会社のドライバーには、アプリの使い方、あるいは接客の方針などが事前にレクチャーされた上で、Uberが手配するハイヤーとして登録されるという。

 こうした仕組みについて、塩濱氏は「サービスはどこでも同じように使えるのが大事だが、実現するには、各地域にあわせて対応する」と説明。既存のタクシー会社は競合ではなく、Uberは、ユーザー自身が運転手を雇用して、VIPのような送迎を体験できるものとして、異なる体験を提供する事業と位置付けた。

左からソフトバンクBB取締役常務執行役員の溝口泰雄氏、Uber Japan代表取締役社長の塩濱剛治氏、来賓として登壇したクオンタムリープの出井伸之氏、米国大使館商務部商務公使のアンドリュー・ワイレガラ氏

「ラグジュアリー」「プレミアム」な選択肢を提供

 東京・六本木周辺で乗車できる形で、2013年11月から試験サービスが提供されてきたが、この試験を通じて、あるいはそれに並行する形で、Uberでは、机上のシミュレーションで示していた配車予定時間を実地に即する形にしたり、日本の法令に則ったサービス形態にしたりする、といった準備を重ねてきた。

 先端ユーザーを中心に試験サービスが注目され、Twitterやブログで取り上げられることも多く、「利用者はアントレプレナー(起業家)が多い」(塩濱氏)とのことで、試験サービス開始から5週間での会員登録件数も他の都市の2倍~3倍程度、多いという。また、ドライバーの顔写真が事前にわかることから、他国にはない傾向として、塩濱氏は「若い女性の利用も多かった」と紹介する。

 日本のタクシードライバーも、一定の教育を受けて、質の高いサービスの提供に努める中、Uberとの違いはどこに見出せるのか。さらに塩濱氏は「日本は高品質な交通サービスが用意されているが、Uberはこれまでにない、新しい選択肢を提供する」とその意義をアピール。会社役員などに利用されるなど、やや敷居の高いハイヤーを手軽に利用できることで、普段味わえないラグジュアリーでプレミアムな乗車体験を楽しめるとする。

 ネットでの口コミを促進する仕組みとして、料金を割り引くクーポンの発行も積極的に行う。ユーザーがTwitterやFacebookなどにクーポンコードを投稿し、それを見た人がクーポンコードを使うと、クーポンコードを投稿したもともとのユーザーと、その投稿を見て利用した新しいユーザーの双方に、2000円分のクーポンが提供される。Uberでは、一度体験してもらうことが重要とする。

海外のUberも使える、東京五輪向けにも

 記者説明会で、Uberの成り立ちを紹介したアジア地域の最高責任者であるアレン・ペン氏は、「もともとはサンフランシスコの交通手段に課題が多いということで起業したUberだが、口コミで拡がり、ビジネスチャンスを見つけた」と紹介する。

31カ国81都市でサービス、17言語に対応

 米ニューヨークでは数千台まで拡がったとのことで、ハイヤーを提供するだけではなく、ヘリコプターを依頼できるサービス、あるいは昨夏に移動式のアイスクリームショップを手配できるサービスを実施するなど、ユニークな試みも行った。

移動アイスクリームショップ
ヘリコプターまで
映像で登場したカラビック氏

 グーグルからの出資も受け、31カ国、17言語に対応したサービスに成長しており、「誰にでもプライベートライド(私的な運転手付き送迎)を提供できる」(ペン氏)と胸を張る。多くの都市でのサービス提供、そして多言語対抗ということで、グローバルなネットワークを構築したUberのアドバンテージの1つは、「海外でも安心して利用できる」こと。来日予定がかなわず、今回は映像で登場した創設者で共同CEOの1人、トラビス・カラビック氏は「Uberは便利で信頼でき、安全なサービス」と位置付ける。

米国でのサービス開始当初のUber対応カー
現在は格段に増加した

 また、デバイスやネットワークを提供する協力企業であり、来賓として挨拶したソフトバンクBB取締役常務執行役員の溝口泰雄氏は、渡米時に家族で食事をした後、Uberを使って安心して高品質なサービスを海外で利用できた、という点を紹介した。こうした点は、日本人が海外を訪れた際にも恩恵を期待できる点であり、2020年に予定される東京オリンピックの際にも、Uberが一定の役割を果たせるのではないか、とペン氏は語っていた。

(関口 聖)