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「ネット止めたくても止められずに苦しい思い」子供スマホユーザーの28.7%

 フィルタリングソフト/サービスを開発・提供するデジタルアーツ株式会社は10日、子供の携帯電話/スマートフォンの利用実態についてアンケート調査した結果を発表した。

 デジタルアーツが継続的に実施しているもので、今回が5回目の調査。何らかの携帯電話/スマートフォンを持つ全国の小学4年生~高校生618人(小・中・高校生の男女が各103人)を対象に、株式会社マクロミルが2月17日・18日にインターネット調査で実施した。

調査結果について説明したデジタルアーツの吉田明子氏

女子高校生のフィルタリング使用率が倍増、世間騒がせたトラブルの影響か

 携帯電話/スマートフォンを持つ子供におけるスマートフォン率は60.4%。2011年11月に実施した第1回調査の14.4%から約4.3倍に増加した。学齢別に見ると、小学生では37.9%、中学生では55.3%、高校生では87.9%だった。小・中学生では男子の方がスマートフォン率が高いが、高校生では女子の方が高く95.1%に上った。

スマートフォンの使用の有無と今後の使用意向

 フィルタリングを現在使用しているとした子供は、全体の30.9%。第1回調査時の40.6%から4分の3に減少した。学齢別では、小学生が24.3%で、第1回調査時の39.3%から5分の3に減少。中学生は36.4%で、第1回調査時の46.8%から5分の4に減少した。

 高校生は32.0%で、第1回調査時の35.7%からは減少しているものの、小・中学生ほどではなく、2013年8月の前回調査時の23.8%からは大幅に増加している。男子が前回31.1%から今回32.0%とほぼ横ばいで推移したほか、女子は前回の16.5%から今回は32.0%へと倍増した。デジタルアーツの吉田明子氏によると、世間で騒がれているトラブルの影響で、保護者らの啓発活動が効果として表れたのではないかという。

スマートフォン所有者、起床してから就寝するまで長時間使用する傾向

 スマートフォンを所有する子供(373人)の1日当たりの使用時間は、1~3時間未満が38.1%と最も多く、以下、3~6時間未満が22.8%、1時間未満が19.0%、6~9時間未満が10.5%、9~12時間未満が4.6%、12~15時間未満が2.7%、15時間以上が2.4%。平均は4.0時間だった。なお、スマートフォン非所有者では平均1.2時間だった。

 また、1日のうちでスマートフォンを使用している時間帯(5分以上)は、18~21時が72.7%、21~24時が63.3%で、夕方から夜にかけての時間帯が多った。それ以外でも、0~3時が17.4%、3~6時が5.9%、6~9時が44.2%、9~12時が29.8%、12~15時が35.7%、15~18時が48.3%となっており、スマートフォン所有者は起床してから就寝するまで長時間使用する傾向にあるとしている。

 一方、スマートフォンを所有しているが、どの時間帯も「5分以上使うことはない」とした子供も2.7%いた。

携帯電話/スマートフォンの1日あたりの使用時間
携帯電話/スマートフォンの使用時間帯

ネットを始めてから気分の落ち込み/自己嫌悪……スマホ所有者の38.3%が

 携帯電話/スマートフォンを使い始めてからの行動や感情の変化についても聞いている。

 まず、携帯電話/スマートフォンを使い始めてから「注意を受けたことがある」とした子供は33.0%だった。女子中学生が43.7%、男子中学生が41.7%と高い割合を示している。内容としては「四六時中、使い過ぎていると注意された」が23.9%、「食事中もいじっていて注意された」が19.7%と比較的多く、以下、「寝落ちするまでいじっていた」が12.1%、「学校の成績が落ちてきたと注意された」が9.1%、「寝不足で頭がぼーっとしていたり、注意力散漫になった」が8.7%など。

 女子高校生では、注意された経験や、心身ともに不調を感じる割合が高い傾向にあるという。「四六時中、使い過ぎていると注意された」が38.8%、「寝落ちするまでいじっていた」が35.9%、「食事中もいじっていて注意された」が30.1%で、全体平均を大きく上回っているほか、「歩きながらいじっていて、他の人や物にぶつかった」が全体平均4.4%なのに対して女子高校生では14.6%、「誰かと繋がっていないと不安になるようになった」が全体平均3.7%なのに対して女子高校生では13.6%に上った。

携帯電話/スマートフォンを使い始めてから注意されたことなど経験した内容

 「インターネットを始めてから気分が落ち込んだり、自分が嫌になることがある」と回答した子供は、全体の26.7%(「結構ある」5.8%と「たまにある」20.9%の合計)。高校生で割合が高く、男子で42.7%、女子に至っては58.3%に上った。また、スマートフォンの有無で見ると、スマートフォン非所有者が9.0%だったのに対して、所有者では38.3%に上った。

 「インターネットを止めようと思っても止められずに苦しい思いをしたことがある」と回答したのは21.5%(「結構ある」5.0%と「たまにある」16.5%の合計)。女子高校生では39.8%で特に高かった。また、スマートフォンの有無で見ると、スマートフォン非所有者が10.6%だったのに対して、所有者では28.7%に上った。

大人のスマホ利用が子供に大きく影響、大人がオン/オフの区切りをはっきりと

 デジタルアーツは10日、調査結果についての記者説明会を開催した。ネット依存などについての相談を受け付けている任意団体エンジェルズアイズの代表を務める遠藤美季氏が登壇。ネット依存の問題の背景は、スマートフォン端末やアプリといった単純なものではないと指摘する。

任意団体エンジェルズアイズ代表の遠藤美季氏(左)と、デジタルアーツ株式会社経営企画部の工藤陽介氏(右)

 遠藤氏によると、子供からは「大人もやっているじゃないか? 大人は許されるのに何で子供は許されないのか?」といった言葉もよく聞かれるとし、「子供がスマートフォンを欲しがるのは、父親がゲームをしているからということもある。大人の利用が子供にも大きく影響している」と説明する。

 “ネット依存”の問題を未然に防ぐには、大人が「利用時のオン/オフをはっきりと子供たちに見せてあげること」だという。例えば、子供から呼ばれた時に、だまってスマートフォンをしているのではなく、「今は仕事だから使っているんだよ」とか、「あなたの話の方が大事だけど、どうしても急いで連絡しなければならない事があるからちょっと待ってて。すぐに終わるから」というように、いろいろな場面でスマートフォン利用のオン/オフや区切り、線引きを保護者が見せてあげることが、子供たちが上手に使いこなすことにつながるとし、「すべての社会人がやっていくべきこと」とした。

エンジェルズアイズが埼玉県の複数校で調査した結果から、遠藤氏は、現実生活の中で子供たちが安らぐ場が少なくなってきいるという印象があり、ネットが子供たちの居場所として大きくなってきていると指摘する。東京都が2月に発した青少年のネット依存を予防するための緊急メッセージの影響について、子供から一律に“居場所”を取り上げてしまう流れが生まれかねないとの懸念も示していた

 なお、デジタルアーツの調査では、子供に対するアンケート調査とともに、全国の未就学児~高校生の子供を末子に持つ保護者624人に対しても、携帯電話/スマートフォンの利用状況について聞いている。これによると、携帯電話/スマートフォン使用時に「気を付けていることがある」とした保護者は39.6%で、子供の51.3%よりも10%ほど少なかった。注意している内容については、子供の方が時間的な項目(使い過ぎ)に気を付けている傾向があるという。

他人のながら携帯/ながらスマホの許容範囲

 デジタルアーツでは、遠藤氏の監修のもと、自身あるいは子供のネット依存タイプをチェックできるウェブコンテンツを3月3日から公開している。○×形式の10問の設問に解答すると、「健康被害型」「時間浪費型」「心的ストレス蓄積型」「人間関係崩壊型」タイプのいずれかが表示され、各タイプの傾向と今後の対策が示される。

ネット依存型のかんたんチェック

(永沢 茂)