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富士通研、モバイルにも適用可能な通信高速化技術を開発

圧縮と重複除去をソフトウェアで実現

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は8日、さまざまな通信環境に適用可能な、データ転送の高速化技術を開発したと発表した。重複除去と圧縮により、ソフトウェアだけで、データ転送速度を最大10倍に高速化できるという。

 データ転送を高速化するには、重複除去(重複排除)や圧縮といった技術が有効とされているが、重複除去を利用するには、一度送信したデータを双方がストレージに保存しておく必要があるため、ストレージ容量が限られるモバイル端末では実現が困難だった。また、一般的なモバイル端末に搭載されているCPUでは、重複除去・圧縮を行う際にCPU負荷が高くなってしまい、通信全体の処理に時間がかかる点も課題とされていたという。

重複除去・圧縮の概要

 しかし富士通研では、ネットワーク上を流れるデータの中で、統計的に出現頻度の高いデータだけを選択し、優先的に保存する省メモリ化技術を開発。高い重複除去性能を維持したまま、出現頻度の低いデータはなるべくストレージに保存しないようにすることで、ストレージ容量の少ないモバイル端末にも適用可能になった。同社の社内実験では、モバイル端末側のストレージに保存する重複データ量を、最大約80%削減できることが確認されたという。

省メモリ化技術

 さらに、データ圧縮処理のCPU利用率を最大で従来の約1/4に削減する技術を開発した。圧縮ではデータ内に繰り返し出現するパターンを探索してまとめる処理を行うが、パターンが見つからないときは、まばらな間隔で探索を行う一方、パターンが見つかった際には、その前後のデータを細かく探索する、といった手法でデータ全体の効率の良い探索を実現し、CPU利用率を軽減している。

 一方で、転送データの重複除去・圧縮処理は、転送するデータのサイズが小さく、内容も毎回異なるような状況で利用すると、かえってデータ転送速度が低下する場合がある。効果の有無は、送信データサイズ、ネットワークの利用可能な帯域、端末のCPU性能などに依存するので、これらの情報を定期的に収集して高速化効果を予測し、その結果から、重複除去や圧縮処理の実施有無を判定する技術もあわせて開発した。この技術により、システム運用管理者が適用環境ごとに設定を調整する必要がなくなったことから、運用性も向上している。

 なお、これらの技術はソフトウェアによって実現されているため、クラウドや仮想環境、モバイル環境など幅広い環境に適用できる点もメリット。既存のサーバーやOS上に搭載可能で、ノートPC、タブレット端末、スマートフォンなどのモバイル端末への適用も想定されている。

 利用シーンとしては、例えば、「営業担当がA社向け営業資料をA社訪問時に事務所からダウンロードした後で、B社向けに一部が編集されている資料を再度事務所からダウンロードする」といった場合に、重複するデータが除去され、ダウンロード速度を高速化できる。同社が利用可能帯域が10Mbpsの回線で行った実験では、最大で約10倍の高速化を確認したとのこと。

 富士通研は今後、2014年度中の実用化を目指して実証実験を進める考えだ。

利用シーンの例

(石井 一志)