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「ハイスコアガール」事件、知財法の研究者など26人が刑事手続に反対声明
表現活動に重大な萎縮効果もたらす
(2014/12/22 17:05)
マンガ「ハイスコアガール」内で他社のゲームのキャラクターを利用したことについて、作者や出版社社員が書類送検された事件について、知的財産法の研究者や実務家など26人が連名で、刑事手続が進められることに反対する声明を発表した。
声明には、明治大学研究・知財戦略機構特任教授/東京大学名誉教授の中山信弘氏や、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの野口祐子氏、弁護士の福井健策氏など26人が賛同している。
声明では、刑事手続・民事裁判で問題となっている「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用態様については、著作権侵害の要件としての類似性が認められない可能性や、適法な引用(著作権法32条)に該当する可能性などがあり、著作権侵害が明確に肯定されるべき事案とは言い難いと主張。著作権を巡る紛争では、侵害の成否が「微妙」な事案が少なくなく、民事裁判においても侵害の成否の判断は一審、二審、上告審で分かれることがしばしばあり、刑事事件でもWinnyの作者を巡る裁判が最終的に無罪とする判決が確定した例などがあると指摘している。
著作権侵害に対する刑事罰や刑事手続は、「典型的な海賊版の事案など、明らかな著作権侵害行為が行われている事案」で「民事訴訟では十分な権利行使ができない状況」においては実効性の点で重要な意義を有するとした上で、今回のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について刑事手続が進められることは、「今後の漫画・アニメ・ゲーム・小説・映画などあらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたらし、憲法の保障する表現の自由に抵触し、著作権法の目的である文化の発展を阻害することとなりかねない」と主張。著作権侵害に関わる刑事手続の運用、刑事罰の適用に対しては謙抑的、慎重であることが強く求められると主張している。