ニュース
ヤフー、社内外のサービス/デバイスをつなげるIoTプラットフォーム「myThings」をリリース
(2015/7/28 06:00)
ヤフー株式会社は27日、 IoT時代に向けた事業者向けプラットフォーム「myThings」を発表した。また、同プラットフォームが利用できるiOS/Androidアプリ「myThings」を提供開始した。
「Connect Everything」をテーマに、ヤフーの社内外のウェブサービスやハードウェアを連携できるオープンなプラットフォーム。それぞれの製品・サービスは「チャンネル」と呼ばれる1つのモジュールとして構成され、それらを「組み合わせ」することで、IoTサービス/デバイスのハブとして機能する。
スマートフォンアプリのmyThingsでは、さまざまなシーンで利用できる組み合わせを提案し、「ブロガー向け特集」「エンジニア向け特集」「写真マニア向け特集」「夏フェス特集」などの特集なども用意する。また、ユーザー自身で組み合わせをカスタマイズ可能。ユーザーは組み合わせたいチャンネルを選択し、どのような動作を行うかを指定できる。
提供チャンネル数は27日時点で30で、約6万通りの組み合わせが可能。ファーストパートナーとしては、シャープやソフトバンクなど。MicrosoftのAzureやIntelのクラウドプラットフォームとも連携するという。チャンネル数は順次拡充予定で、現段階ではAPIを開放している企業にお願いする形で参画してもらっているという。機器側では、いったんバックエンドのサーバーにアクセスすることでつなぎ込みを実現しているという。
自作デバイスを連携させることも可能。IDCフロンティアが提供する「IDCF Cloud」というチャンネルを組み合わせ、自作デバイスと「MQTT」「REST」「Web Socket」といったプロトコルを使って通信する。ヤフーでは、IDCFチャンネルを利用するためのスターターキット(Raspberry Pi2、Wi-Fiモジュールなどをセットにしたもの)を、SWITCH SCIENCEから提供するとしている。
ヤフースマートデバイス推進本部アプリ開発室室長の椎野孝弘氏は、実際にアボカドの育成を観察する自作デバイスを制作し、IDCFチャンネルと連携させているという。Raspberry Pi2で湿度・温度・気温をモニタリングし、アボカドの水温をBeagleBone Blackに接続したセンサーで計測している。27日に開催された発表会では、一定以上の水温になったらSlackに投稿するといったデモを展示していた。
myThingsによって、例えば「YouTubeで好みの動画が公開されたらリンクを自動保存して見逃しを防止する」「室内温度が一定以上になるとメールで通知する」といったことが可能となり、単機能なものが多いIoTを組み合わせることで広がりが出るとしている。また、「朝起きたら、ロボットがヤフーのニュースや天気を読み上げる」「雨の予報だとLEDを搭載した傘が光って知らせる」といったことや、災害情報に強いヤフーならではの「廊下にLEDを仕込んでその時々に合わせた避難経路を示す」といったことも技術的には可能になるという。
myThingsの発表会の会場では、各チャンネルの組み合わせ例を展示していた。スマートロックの「Akerun」とPepperを組み合わせ、解錠するとPepperが「お帰りなさい」と声をかける、ライフログツール「Jawbone Up」とシャープの「COCOROBO」を組み合わせ、起床した際にCOCOROBOがYahoo!天気から気象情報を取得し、天気を通知する、ソニーのセンサーモジュール「MESH」と連携させて、ゴミ箱を開閉するとFacebookに投稿する――といったデモを行っていた。
IFTTTとの差別化について「だれでも簡単に利用できる」
ヤフー執行役員CMOの村上臣氏は、IoTについて、物と通信がペアになることでインターネットの恩恵を受け、1つのシームレスな体験となって手元に現れると説明した。また、周囲の物がインターネットに繋がり、相互に連携したりクラウドにアクセスすることで、街そのものがウェブ化していくと指摘。「街レベルですべてが有機的に、それぞれが考えて動き始めたらどんな世の中になるか。ワクワクが止まらない」「常にレディの状態で周囲の物が自動的に動き始める。今まで見たことのない新しい世界が見れる」と、IoTの可能性について述べた。
また、すでに世にあるIoT関連のサービスや製品は、横の連携がとれておらず、通信方式やクラウドなど要素技術がそれぞれの力関係でバラバラだと指摘。こうした課題をmyThingsは解決するとしており、完全にオープンなプラットフォームとして公開し、さまざまな企業と提携することでより大きなプラットフォームに成長させるという。また、グローバルでも展開したいとしているが「まだよちよち歩き」だとしており、まずはプラットフォームを育てていくとしている。
マネタイズは、将来的にAPI課金なども検討しているというが、まずはmyThingsの世界観を理解してもらうために無料で提供する。ヤフーでは、2950万のアクティブなYahoo! JAPAN ID、決済基盤、インフラ基盤をベースに盤石な体制でスタートできるとしている。
なお、IoTのプラットフォームとしては、米Qualcommの「AllSeen」や、米Intelや韓国SAMSUNGが参画する「Open Interconnect Consortium」など、ハードウェアベンダーによるIoTアライアンスが設立されているが、村上氏は「サービスレイヤーのプラットフォームはまだ無い」としており、ヤフーが得意な分野にフォーカスして展開したいとしている。なお、ヤフーがコンシューマー向けのサービスを展開していることもあり、エンタープライズ用途は想定していない。
また、myThingsと似たサービスとして、複数のウェブサービスを組み合わせられる「IFTTT」との差別化について質問を受けた村上氏は、「似たようなものという意味ではおっしゃるとおり」とした上で、IFTTTの問題点として日本語されていないことや、APIのつなぎ込みにしてもギーク目線で使いづらく、一般ユーザーでは使いづらいのではないかということを指摘。分かりやすい世界観をユーザーに見せ、ユースケースの提案などで一般のユーザーでも簡単に利用してもらえることで差別化するとしている。
IoT機器でヒット商品がないという声もあるとしているが、この分野ではニーズやユースケースが細分化していく方向にあるほか、日常生活に深く浸透していく分野でもあるため、国ごとの事情や文化に影響を受けやすいと説明。ヤフーは日本に根ざしている企業であり、細かいニーズを拾っていくという。ハードウェアも、メーカームーブメントによる小規模ロットでも採算がとれるようになり、100~1000人がとても便利と思う商品が山ほどある世界になると述べた。