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ヤマハ、機械音声による自然な相づちを実現する技術「HEARTalk」、ソフトウェア/ハードウェアライセンスの提供を開始

 ヤマハ株式会社は11日、機械音声の自然応答技術「HEARTalk」のソフトウェア/ハードウェアライセンス提供を開始したと発表した。

 HEARTalkは、人間の発声の強弱、長短、高低、間、抑揚などの「韻律」をリアルタイムに解析。応答に適した自然な韻律を導出できる特許出願中の技術だ。主に既製の音声対話システムでの組み込み用途を想定しており、応答用の機械音声に自然な韻律を容易に付加できるとしている。

 同社では、HEARTalkの技術の一部を利用したソフトウェアとハードウェアのライセンス提供を行う。提供技術は相づちに特化したもので、人間の問いかけ音声の入力に合わせて、“うん”“はい“といった相づち音声を返すもの。人間の発話内容の解析は行わず、韻律の解析処理のみで動作するため、少ない処理量で動作するとしている。ソフトウェアライセンスは、主に音声対話システムをすでに自社開発してる法人向けとして提供。ハードウェアライセンスは主に玩具向けを想定しており、実装面積の小さい低コストな基盤モジュール、参考回路図、参考サンプルプログラムの3つを提供する。

 音声認識と音声合成からなる音声対話システムとHEARTalkが連動した高度な音声対話システムを構築するため、株式会社フュートレック、NTTアイティ株式会社との共同開発を行う。フュートレックの音声認識エンジン、NTTアイティの音声合成製品「FutureVoice」と連動し、新たな音声対話システムの年内の商品化を目指す。

対話システム連動ソフトウェアの商流
相づちソフトウェア/ハードウェアもフュートレックが販売、サポートを担当する

まるで人間と話しているような機械とのコミュニケーション実現へ

 都内で開かれた記者発表会では、ヤマハ株式会社事業開発部企画担当次長の松原弘明氏、株式会社フュートレック代表取締役社長の藤木英幸氏、NTTアイティ株式会社代表取締役社長の長谷雅彦氏が登壇した。

 音声対話システムを搭載した機械音声は誰しもが“機械の声”と分かる不自然さがあると松原氏は感じ、HEARTalkの開発に2年前から着手。呼び掛けに適した自然な韻律を導出する技術により、あたかも自然で機械の心が感じられるような対話音声システムの構築に貢献できるという。「対話システムはスマートフォンや玩具などに導入されており、年率10~20%で伸びている。HEARTalkを組み込むことで機械と人とのコミュニケーションがより円滑になる」。

HEARTalk技術により抑揚をつけて人間味を与えることが可能になる

 藤木氏は「SFの世界だった対話システムが現実のものになっている。しかし、これまでは対話の内容を正確に把握して答を導くための技術開発に取り組んでいたが、韻律は全く考慮していなかった」。「機械との対話では感情のこもった話し方は必要ないのではないかと思われる点もあるが、この先、機械と共存する上でフレンドリーな返答を得られることは人間にとって悪いことではないと考えた。HEARTalkは社内でも好評で、今まで見えなかった市場、用途が出てくるのではないかと考える。今秋をめどにトライアルを実施していく」と述べた。

 長谷氏は「HEARTalkのようにシンプルでフレンドリーな技術があれば市場が開拓できると感じた。3社協業により新しい会話市場を開いていきたい。具体的にはコールセンターやカーナビなどにトライアル実施していく」と意気込みを語った。

対話の中にも音程があり、この韻律をリアルタイムで解析してどの返事が心地よいのか判断させる
対話システムとの連動
HEARTalkの技術を利用した基板モジュール
ヤマハ株式会社事業開発部企画担当次長の松原弘明氏。「HEARTalkにはボーカロイド技術は使っておらず、カラオケ採点技術の一部を用いている」という
株式会社フュートレック代表取締役社長の藤木英幸氏
NTTアイティ株式会社代表取締役社長の長谷雅彦氏

(磯谷 智仁)