レビュー
古いPCを快適に復活、決め手の“SSD換装”を
「プロにおまかせ」「自分でやる」の両方でやってみた
6年前のノートPCを格安で復活!
2019年2月28日 06:18
昨今では多くのPCがストレージ(データ記憶装置)にSSDを採用しているが、少し前のPCで主流だったのはHDDである。ただ、HDDはSSDに比べると低速なため、古いPCが“遅い”と感じる大きな原因になっていることが多い。そこで本記事では、SSDを活用してPCのパフォーマンスを大幅に改善するためのテクニックを解説する。
【これだけは覚えていってください!】
・PCが遅いのはメモリよりもHDDが原因
・SSDに換装することでWindowsの起動時間が半分に!
・SSD換装サービスを使えば手間なく高速化できる
・外付けケースとSSDの組み合わせも有効
PCはCPUだけが速くてもダメ!性能の鍵を握るのはストレージ
Windowsの起動が遅い、あるいはアプリケーションで何らかの処理を行なった際に長い時間待たされるなど、PCが遅いと感じた経験がある人は少なくないはず。この原因の多くは、Windowsやアプリが起動するときに読み出されるHDDの速度の遅さに大きく影響を受けている場合が多いのだ。
そこで検討したいのがSSDへの換装である。HDDをSSDに置き換えれば、PCのパフォーマンスにおけるボトルネックを解消することになり、大幅な性能向上が見込める。もしPCの遅さがストレスになっていて、新しいPCへの買い換えを考えているのであれば、より安価にパフォーマンスを改善できるプランとして、SSDへの換装を検討すべきだ。
SSD換装サービスの利用で手間なくパワーアップ
ただ、実際に換装を行うには、PCに関する知識やノウハウが必要になる。さらに作業でミスをしてしまうと、場合によっては大事なデータが失われることにもなりかねない。そのため、特にビジネスで使うPCのHDDをSSDへ換装するのであれば、パソコン工房やツクモなどが実施しているSSD換装サービスを利用する方法がお勧めだ。
これらのサービスは、SSDの代金+作業料で店舗の技術者が換装を行なってくれるというもの。例えば、パソコン工房の「SSD換装サービス」であれば、SSD代金+1万円(検証料金5000円+成功時5000円。SSDへの換装ができなかった場合は検証料金のみ)で換装を行なってくれる。また、単に換装するだけでなく、元のHDDにインストールされているOSや保存済みのデータを新しいSSDにコピーしてくれるため、改めてOSをインストールしたり、事前にデータをバックアップして復元したりする手間がないのもポイントだ。
なお、こうしたサービスの多くは、換装するSSDをユーザー自身で選ぶ必要がある。その際、元のHDDよりも容量が大きいSSDを選択するようにしよう。SSDの容量が元のHDDより小さいと、場合によってはOSやデータを移行できず、以前の状態を復元できないためだ。SSDの容量不足で以前の状態を復元できない場合、業務に必要なアプリケーションやデータの選別、移動やコピーといった面倒な作業が必要になってしまう。
容量の大きなSSDに換装する場合、気になるのはコスト。HDDに比べるとSSDは高価ではあるが、昨今では大容量の製品を低価格で購入できる。例えば、Crucial MX500の1TBモデルは1万7500円前後だ。また、大容量化も進んでおり、MX500は最大で2TBまでラインアップされている。
ツクモ「超高速化サービス」サポートセンター訪問レポート
ツクモでは、東京・秋葉原をはじめとする全国の各店舗にて、SSDの換装サービス「超高速化サービス」を展開している。今回、実際にツクモパソコン本店5Fのツクモ秋葉原サポートセンターに伺って、作業の現場を見学させていただいた。なお、2月現在、Crucial MX500シリーズの同時購入時に限り、サービス価格が3000円引きになるキャンペーンを実施している(「ケイタイdeポイント」会員は6500円(税別)+Crucial MX500購入代金、未加入時は7000円(税別)+Crucial MX500購入代金)。
――SSD換装作業の流れを教えてください
基本的には、内蔵HDDドライブから新しいSSDにデータ転送(クローニング)を行ってから、内蔵ドライブとSSDを換装する、という手順です。ただ、Windows 8.1/7からWindows 10などへ、OSがアップグレードされた後のPC(そのPCが従来備えていたHDDリカバリーやリカバリーディスク作成ツールが利用できなくなっている可能性がある)、Serial ATA接続のHDDからNVMe接続のSSDといった“インターフェース変更を含む”換装、パーティション方式の変更を伴う場合などは、データ転送ではなくシステムのリカバリーをご案内しています。
――作業期間はどれくらいかかるのでしょうか?
サポートセンターの混雑状況や、分解の難易度、元のHDDの状態にもよりますが、通常は数日から1週間程度とご案内しています。
――法人からの持ち込みも可能でしょうか? また、PCに詳しくなくても大丈夫ですか?
法人のお客様も、もちろんご利用いただけます。まず1台お持ちいただき、サポート完了後に「後、数台同じものがあるので、お願いしたい」と依頼されることもあります。PCの知識がなくても、お話を伺いながらサポート内容をご相談します。例えば「最近PCが遅いのでメモリを足せばいいの?」とご相談いただいた場合でも、PCの状態を確認して最適なアップグレードがSSD換装であることが予想される場合は、メモリ増設ではなくSSD換装をご提案することもあります。
――交換できるもの、できないものの傾向や基準はありますか?
作業の難易度の差はありますが、HDDを搭載したノートPCなら対応できる場合が多いです。Lenovoや日本ブランドのノートPCは、小型でもよく練られた構造になっていて、作業はしやすいですね。海外ブランドの小型ノートPCには、難易度の高い製品もあります。
交換できないものとしては、ノウハウのない一部特定メーカーのPC、分解そのものが非常に困難なタブレットPC、ストレージが基板直付け(eMMC)で取り外せない製品、システムドライブがRAID構成である場合などが挙げられます。ネットやお電話でご相談いただいた際には、機種名やパーツ構成をその都度細かく確認させていただいています。
――持ち込みの際の注意点はありますか?
電源アダプター(必須)、PCに付属または作成したリカバリーディスクをご持参ください(「リカバリーディスク作成サービス」も別途実施中)。法人の場合、セキュリティ強化の目的で、Windowsの暗号化機能である「BitLocker」や独自の暗号化機能を利用されていることもあります。これは事前に解除してからお持ちください。
SSD化の効果は抜群!6年落ちノートが快適に!!
では、ノートPCのHDDをSSDへ換装することで、どの程度の効果が得られるのだろうか。実際に2013年に発売された「ThinkPad Edge E130」を使って検証してみた。CPUは「Intel Core i3-3227U」で、4GBのメモリと320GBのHDDを搭載している。このHDDをSSDであるCrucial MX500に換装してベンチマークを実施した。なお、検証に利用したCrucial MX500の容量は500GBである。
まず目を見張るのは、Windows 10の起動時間だ。HDDでは59.6秒に対し、SSDに換装すると30.7秒とおよそ半分の時間でWindows 10が起動した。圧倒的な高速化を体感できるレベルのスピードアップで、同じPCでたった1つのパーツを交換しただけとは思えないほど。現在のPC環境では、それだけHDDが性能面でのボトルネックになっているというわけだ。
ストレージの読み書き速度をチェックできる「CrystalDiskMark」の結果を見ると、SSDの数値が大幅に上回っており、項目によっては数百倍もの開きがある。この読み書き速度の圧倒的な違いが、Windows 10の起動時間の差を生むのだ。
PCの総合的なパフォーマンスを計測できる「PCMark 10」の結果にも注目したい。PCMark 10は、ウェブサイト閲覧やビデオチャット、ドキュメントの作成、写真やビデオの編集など、実際の利用シーンを想定したテストを行なうが、ストレージだけでなくCPUやメモリなど、PC全体の性能がスコアに影響する。
ThinkPad Edge E130でのPCMark 10のスコアは、HDDでは1447に留まる一方、SSD換装後は1586と約10%もスコアが伸びた。この結果からも、SSDがPC全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことが読み取れるだろう。
116MBのPDFファイルをMicrosoft Edgeで開いて表示されるまでの時間を比較したところ、HDDでは5.85秒だったが、SSDでは3.11秒で完了した。同様に、10.5MBのPowerPointファイルが表示されるまでの時間は、HDDが25.82秒、SSDでは7.53秒となった。日常の業務の中でファイルを開くことを考えると、この差は決して無視できないだろう。
腕に覚えがあるのなら自分でSSD換装にチャレンジ
HDDからSSDへの換装に関して、知識やノウハウに自信があり、また作業する時間を確保できるのであれば自分でチャレンジしてみるのもアリ。方法はいろいろあるが、基本的な流れは、HDD全体のバックアップ、SSDへの複製、HDDとSSDの交換(換装)、といった流れが一般的だ。
換装を行なう前の準備として覚えておきたいのは、HDDからSSDにデータを引っ越すためには、引っ越し先となるSSDをPCに接続できるようにしておく必要がある、ということだ。最も一般的なのは、SSDをUSB接続の外付けドライブケースに入れてPCに接続する方法。最近では、外付けドライブケースが800円前後から購入できるのでコスト的にもお手頃だ。さらに、外付けドライブケースの多くは、ドライバー1本あるいは工具不要で簡単にSSDを取り付けられるようになっているので、取り扱いも簡単だ。
一番簡単なデータ移行の方法は、SSDに付属しているシステム移行ツールを利用して、HDDの内容を簡単にSSDにコピー(クローニング)できるソフトを利用するというもの。CrucialのSSDには「Acronis True Image for Crucial」というソフトウェアを無料でダウンロードして利用できるライセンスが付属している。このソフトは非常に優秀で、わずか数クリックの操作だけで簡単に内蔵HDDを新しいSSDに複製し、システムやデータが移行できる。そのほか、Windows 10標準機能の「回復ドライブ」を使って移行したり、フリーソフトで内蔵HDDをSSDにクローニングする、といった方法もある。
高速なデータの保存場所として外付けSSDを活用する
ここまでは、内蔵HDDからSSDへの換装について説明してきたが、場合によっては換装ができないケースもある。例えば、PCをリースで導入していて、内蔵部品の交換や変更が認められてないといった場合だ。ただ、こうしたときもSSDを活用する手はある。それが外付けケースと組み合わせ、外付けドライブとしてSSDを利用する方法である。
USB接続の外付けストレージとしては、古くはHDD、最近ではUSBメモリーが広く使われている。これに対して、SSDを外付けストレージとして利用する場合のメリットは、HDDよりも高速で、USBメモリーよりも大容量である点だ。HDDより耐衝撃性が高いので、頻繁に持ち運ぶような使い方での安心感も高い。HDDのように動作音がしないため、静かな環境でまわりに迷惑をかけずに使える、といった辺りも外出向きの外付けドライブと言える。
ただ、コンパクトで持ち運びやすいとなると、ドライブそのものの盗難や紛失による情報漏えいのリスクには、十分注意しなければならない。WindowsのBitLockerなどによるドライブの暗号化を利用するなど、仮に第三者の手に渡っても情報が漏えいしないように配慮したい。
外付けドライブのデメリットとしては、内蔵ドライブの換装と異なり、アプリケーションのインストール先として使うのにはあまり向かないことだろうか。インストールすること自体は可能だが、当然ながらアプリケーションを使う際に必ず外付けSSDを接続する必要があるので、スマートなスタイルとは言い難い。
また、外付けSSDがPCに接続されていても、何かの拍子にPCから認識されないことがあると、アプリケーションが正常に起動できない、といったトラブルが起きる可能性もある。基本的にはアプリケーションは内蔵ストレージにインストールし、外付けSSDにはアプリケーションで作成した文書などのデータファイルを保存する、という使い分けがいいだろう。
さて、ここまでSSDについて解説してきたが、いずれにしても、PCのパフォーマンス改善において、SSDは極めて強力なアイテムであるのは間違いない。昨今では低価格化も進んでおり、大容量の製品が安価に購入できるようになっているため、コスト負担を抑えてPCをパワーアップできる点も大きな魅力である。このSSDの活用によってPC環境を改善し、快適に作業を進めることができるようになれば、業務効率の向上にもつながるだろう。このように利点の多いSSDをぜひ有効に活用してほしい。
(協力:マイクロンジャパン株式会社)