特別企画

マイナンバーで刷新された平成28年分 源泉徴収票の見方を理解しよう

 長年会社勤めをされている人は12月か1月の給与明細と一緒に、源泉徴収票と書かれた手のひらサイズの小さな紙を受け取っていたはずだ。その源泉徴収票が平成28年分から倍のサイズに変更された。平成27年分以前はA6サイズ(A4の1/4)だったが、平成28年分はA5(A4の半分)となっている。

 様式が刷新された大きな理由はマイナンバー制度の導入だが、そもそも源泉徴収票がどういうものか理解していない人も多いだろう。源泉徴収票には年収や納税額が記載されている。源泉徴収票の見方を理解すると、自分自身の収入や納税額だけでなく税金の仕組みも見えてくる。間もなく確定申告のシーズンとなり、税金に関する話題が増える時期なので、ついつい敬遠しがちな税金に少しだけ興味を持ってもらいたい。

平成28年分の源泉徴収票

 上が刷新された平成28年分の源泉徴収票だ。サイズはA5、縦長の様式となっている。源泉徴収票の細かなリニューアルは時々行われていて、前回は平成24年分に生命保険制度の変更が反映され、その後は平成27年分までは変更なし。下が平成27年度分の源泉徴収票でA6サイズで横長。内容の理解はともかく、見慣れた用紙という人は多いと思われる。今回は用紙サイズが変更となり、見た目は大幅なリニューアルとなった。

平成27年分の源泉徴収票

 新しい源泉徴収票に「マイナンバー(個人番号)の欄なんてないけど……」と思われた人もいるだろう。源泉徴収票は会社から税務署に提出する「税務署提出用」と、会社から従業員に渡される「受給者交付用」があり、前者は個人番号を記入することになっているが、後者は個人番号の欄に斜線が引かれていてる。

左側の税務署提出用には個人番号の欄があるが、右側の受給者交付用は斜線となっている

サラリーマンの特典、給与所得控除とは

 では「平成28年分 給与所得の源泉徴収票」をジックリ見ていこう。お手元にご自身の源泉徴収票を用意して、表計算ソフトか電卓を使って検証しながら読み進めていただければ、より深く理解できるはずだ。過去のツイートなどを見ると、計算通りの値が得られるとかなり達成感があるらしい。

 源泉徴収票にはさまざまな数字(金額)が書かれているが、それぞれの数字の関連性は書かれていない。この用紙に書かれていないルール=所得税の算出方法を知らないと理解できないようになっている。所得税の算出方法を説明するため、ここでは源泉徴収票の主なところを、ブルー、ピンク、グリーンに色分けしてみた。

 所得税の計算式は以下のとおりだ。1行目の式は収入(年収)から所得を求める式。2行目の式は所得から課税所得(税金の対象となる所得)を求める式。3行目は課税所得に税率を掛け所得税の納税額を求める式となっている。それぞれの式が源泉徴収票のブルー、ピンク、グリーンの部分となっている。

・給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得(ブルー)
・給与所得-各種所得控除=課税所得(ピンク)
・課税所得×税率=所得税(グリーン)

所得税算出の概念図

 まずはブルーの部分から見ていこう。この例では支払金額に660万円、給与所得控除後の金額に474万円と記載されている。660万円は給与と賞与の合計額で、ほかに収入がなければこの660万円が1年間の収入=年収だ。474万円は収入から給与所得控除というものを引いた金額で、所得と呼ばれている。

給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得

 この式に出てくる給与所得控除について説明しよう。給与所得控除はサラリーマンの必要経費と言われ、「スーツ代、自腹スマホ、自腹PCなど会社には請求できないけど仕事に必要な経費がサラリーマンもあるはず」ということで、収入に応じて一定額を課税の対象から差し引いて(控除して)くれるものだ。給与所得控除額の計算式は以下のとおりだ。

給与所得控除の計算式
給与等の収入金額(年収)給与所得控除額
162万5000円以下65万円
162万5000円超 180万円以下収入金額×40%
180万円超 360万円以下収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下収入金額×10%+120万円
1000万円超 1200万円以下収入金額×5%+170万円
1200万円超230万円(上限)

 年収が660万円の場合の給与所得控除の額と所得を計算してみよう。

給与所得控除
660万円×20%+54万円=186万円

給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
660万円-186万円=474万円

となり、源泉徴収票に記載された支払金額(年収)660万円と給与所得控除後の金額(所得)474万円、2つの金額の関係が理解できたと思う。

 お手元にある源泉徴収票に記載された金額を計算すると、微妙に差異が発生した人がいると思う。年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(PDF)」という速算表を使用すことになっている。その一部を抜粋すると

給与等の金額給与所得控除額後の金額
4,996,000円以上 5,000,000円未満3,456,800円
5,000,000円以上 5,004,000円未満3,460,000円
5,004,000円以上 5,008,000円未満3,463,200円

となっていて、500万円でも500万1000円、500万3000円でも給与所得控除額後の金額は一律346万円となる。表計算ソフトや給与アプリ/システムがなかった時代のなごりだと思われるが、正確にご自身の源泉徴収票を計算したい方は、この速算表で確認していただきたい。

 余談となるが、サラリーマン時代の筆者は給与所得控除の存在を知らなかった。根拠なく「自営業者(個人事業主)はサラリーマンより税金面でお得」と思っていたが、実際には逆だった。多くの自営業者は「サラリーマンの給与所得控除はうらやましい」と口をそろえることが多い。

 例えば、年収500万円の人の給与所得控除の額は154万円。配偶者控除の38万円などと比較しても給与所得控除の154万円はとてつもなく大きな控除となっている。事例の安倍進次郎さんの年収660万円で計算すると、もし給与所得控除の186万円が控除されない場合、課税所得が186万円増え、所得税の納税額は8万4700円から28万2300円に激増する。住民税も増えるので所得税、住民税の増税額は約38万円となる。給与所得控除はサラリーマンの大きな特典だと言えよう。

 給与所得控除は平成24年(2012年)までは上限額がなかったので、年収1億円の人は控除額が670万円と巨額になったが、平成25年(2013年)からは年収1500万円(控除額245万円)の上限が設定され、その上限が徐々に引き下げられ平成28年は1200万円(控除額230万円)、平成29年以降の上限は1000万円(控除額220万円)となる。

 ちなみに給与所得控除の上限が設定された当時のニュースによると、サラリーマンで年収1500万円を超える人は50万人(1.2%)とのことだ。

所得控除はサラリーマンの納税額を左右する

 次はピンクの部分を見て行こう。一番上の「所得控除の額の合計額」に308万円と記載されている。その下の段には○印や数字の1、さらに下の段には99万円、12万円などの金額が記載されている。下段の金額を合計しても308万円にはならない。ここもこの用紙に書かれていないルール=所得税の算出方法を知らないと理解できないようになっている。

 所得税の計算式の2行目は所得から各種所得控除を差し引き、課税所得を算出する式だ。所得が同じなら所得控除の合計額が多いほど課税所得は減る。課税所得に税率を掛けて納税額を算出するので所得控除が増えると納税額が減ることになる。

給与所得-各種所得控除=課税所得

 1行目の式の給与所得控除、3行目の式の税率は定められた計算なので、誰でも同じルール。同じ年収であれば納税額に差が出るのは所得控除の合計額だ。サラリーマンの納税額を左右する重要な項目と理解したい。

 ピンクの部分は所得控除に関する項目が並んでいる。まずは所得控除について説明していこう。所得控除は個人の実情に合わせて、所得から一定額を差し引き(控除し)、税金を計算するときの金額(課税所得)を引き下げるものだ。

 具体的には「専業主婦の奥さんがいる」「大学生の息子がいる」「親と同居している」「生命保険に加入している」といった個人の実情を加味して、納税額を減らす仕組みだ。同じ所得のサラリーマンでも、養う家族がいる人は独身の人より納税額が減ることになる。

 主な所得控除は以下の表を見ていただきたい。その中で今回の事例に該当するものは色を付けてある。

主な所得控除
控除名金額概要
基礎控除38万円全員が一律に受けられる控除
配偶者控除38万円所得が38万円(年収103万円)以下の奥さんがいると受けられる控除
配偶者特別控除3~38万円所得が38万円を越え76万円未満の奥さんがいると受けられる控除
扶養控除(一般)38万円16歳以上の子どもや親を養っていると受けられる控除
扶養控除(特定扶養親族)63万円所得が38万円以下の19歳から22歳の子どもがいると受けられる控除
扶養控除(同居老親)58万円公的年金が158万円以下で70歳以上の親と同居し養っていると受けられる控除
扶養控除(同居老親以外)48万円公的年金が158万円以下で70歳以上の親を別居し養っていると受けられる控除
寡婦控除27万円+α夫と死別または離婚した女性のための控除。条件により増額
寡夫控除27万円妻と死別または離婚し子を扶養、所得500万円以下の男性のための控除
社会保険料控除年間の支払額年金や健康保険などを納めた分の控除
生命保険料控除
(一般生命保険)
旧:~5万円
新:~4万円
一般の生命保険に加入すると受けられる控除
生命保険料控除
(介護医療保険)
~4万円新制度の介護・医療保険に加入すると受けられる控除
生命保険料控除
(個人年金保険)
旧:~5万円
新:~4万円
個人年金保険に加入すると受けられる控除
地震保険料控除~5万円地震保険の支払いがあると受けられる控除
医療費控除1年の支払額-10万円年間の医療費の10万円又は所得金額の5%を超えた分に対する控除

 所得控除の中で多くの人が該当するのは配偶者控除、扶養控除といった人的控除。年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除。生命保険に加入していると受けられる生命保険料控除だ。人的控除から順番に説明していこう。

 左側の「控除対象配偶者の有無」の有に○がついている。これは控除対象となる配偶者がいるということだ。配偶者は旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さんだ。多くの場合は奥さんが対象となるが、奥さんが正社員として生計を支え、旦那さんがアルバイトをしながらアーティストや芸人を目指しているようなケースでは、旦那さんが奥さんの控除対象配偶者となる。

 配偶者控除の条件は所得が38万円以下であること。収入に換算すると103万円以下となる(給与所得控除の65万円を引くと103万円-65万円=38万円)。「103万円の壁」と言われるのはこの金額だ。奥さんのパートの年収が103万円を超えると旦那さんは配偶者控除が受けられなくなり、(配偶者特別控除はあるが)旦那さんの納税額が増えることになる。当然奥さんも正社員としてバリバリ働いていて、年収が300万円といったケースではこの欄に○印は付かない。

 配偶者控除の所得税の控除額は38万円。控除対象の配偶者がいれば所得控除の合計額が38万円増え、課税所得が38万円減ることになる。

 少し右側を見ると「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」という欄があり、その下の特定の欄に1人、老人の欄の左に1人、点線をはさんで右側に1人となっている。次はこの控除対象扶養親族を説明していこう。

 子どもや親を養っていると受けられる控除が扶養控除だ。扶養控除は対象となる親族の年齢により控除額が異なっていてやや複雑なので図で説明しよう。

 その年の年末時点の年齢が16~18歳であれば38万円。19~22歳であれば63万円。23~69歳であれば38万円。70歳以上で同居していれば58万円、別居であれば48万円となっている。年齢以外の条件は配偶者控除と同じく所得が38万円以下であれば控除対象となっている。

 もっとも高額な控除が得られる19~22歳はほぼ大学生で、対象となる親族を特定扶養親族と呼ぶ。控除額が増額されている理由は「大学生の子がいるとお金が掛かるから控除を増やして税金を減らしましょう」ということだ。ただし、大学に通っていることは条件となっていないので、浪人生もフリーターも年齢と所得の条件を満たし、生計を一としていれば(親が養っていれば)控除対象だ。

 ほぼ大学生となっているのは、税金は1月から12月を対象としているが、就学は4月から翌年3月が同学年となるためで、大学1年生で早生まれの人は12月末時点では18歳のため特定扶養親族の対象とならず税金面では不利となっている。

 もう1つ増額されているのは70歳以上で、老人扶養親族と呼ばれている。老人扶養親族は同居(同居老親等)と別居で控除額が異なっている。さらに右側に「16歳未満扶養親族の数」」に1人と記載されているが、所得税では16歳未満の親族は控除の対象外となっているため控除額の計算には関係がない。では配偶者控除、扶養控除の概要を意識して源泉徴収票をもう一度見てみよう。

 「控除対象配偶者の有無」の有に○がついているので配偶者控除が38万円。「控除対象扶養親族の数」の下の特定の欄(特定扶養親族)が1人でほぼ大学生がいるから控除額は63万円。老人の欄は点線の右側の1人は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、点線の左側の1人はその内1人が同居老親であることを表しているので控除額は58万円となる。もし別居の老人扶養親族がいる場合は点線の左側の内は0人、右側は1人となる。

 「社会保険料金等の金額」に記載された99万円は厚生年金、健康保険、雇用保険など、毎月天引きされた社会保険料の1年間の合計額だ。その右側の「生命保険料の控除額」は人的控除と並び理解しづらい項目なので図を使って説明しよう。

 生命保険は平成23年以前に契約したものは旧制度、平成24年以後に契約したものは新制度と分けられている。さらに旧制度は一般と年金の2つ、新制度は一般、介護医療、年金の3つに分けられ計5つに分類されている。

 支払った保険料に対する控除額の計算式は旧制度、新制度で異なり、加入している保険の分類ごとに控除額を計算し合計したものが「生命保険料の控除額」となる。ただし、合計額の上限があり最大の控除額は12万円だ。

 この生命保険の旧制度、新制度……という話、少し前に聞き覚え、書き覚えはないだろうか。2~3カ月前に記入した年末調整に記載した内容が反映され、源泉徴収票に記載されているということだ。次の図は事例の安倍進次郎さんが年末調整で記載したものだ。

 この例では旧制度の生命保険に12万円、介護医療保険(新制度)に8万円、旧制度の個人年金保険に12万円を支払っていて、それぞれの控除額は以下の計算となっている。

旧制度の生命保険料12万円控除額5万円(10万円超は一律5万円)
介護医療保険料8万円控除額4万円(8万円×1/4+2万円)
旧制度の個人年金保険料12万円控除額5万円(10万円超は一律5万円)

 3つの保険の控除額の合計は14万円となるが上限が12万円なので、生命保険料の控除額は12万円となっている。源泉徴収票には生命保険料の控除額(合計額)の12万円と旧制度の生命保険の12万円、介護医療保険の8万円、旧制度の個人年金保険の12万円が記載されているが、計算式を知らないと理解できない仕組みとなっている。

 源泉徴収票に呪文のように記載された○印、人数、金額の意味がおぼろげに理解できたら控除額を合計してみよう。

配偶者控除 38万円+特定扶養親族 63万円+同居老親 58万円+社会保険料控除 99万円+生命保険料控除 12万円=270万円

 「所得控除の額の合計額」に308万円に対し38万円足りない。自分も知らない隠し子を税務署が知っていることはない。足りない38万円は基礎控除だ。源泉徴収票のどこにも記載はないが、所得がある人全員に基礎控除の38万円があるので、これを加えると記載のとおり308万円となる。これで2行目の計算式が完成した。

給与所得-各種所得控除=課税所得
474万円-308万円=166万円

所得税の計算は簡単

 最後のグリーンの部分を説明しよう。グリーンの部分で課税所得から所得税の納税額を算出する。課税所得に税率を掛けるだけで簡単に最終的な納税額は計算できる。まずは税率を確認しよう。所得税の税率は以下の表となっている。

所得税の税率
課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%9万7500円
330万円超 695万円以下20%42万7500円
695万円超 900万円以下23%63万6000円
900万円超 1800万円以下33%153万6000円
1800万円超 4000万円以下40%279万6000円
4000万円超45%479万6000円

 所得税の税率は課税所得が増えると税率が上がる累進課税方式となっている。勘違いしがちなのは課税所得全体に税率が掛かるのではなく、課税所得の195万円以下の部分の税率が5%、195万円を超え330万円以下の部分の税率が10%とそれぞれの部分ごとに税率が異なるということだ。195万円が200万円に増えたらいきなり納税額が倍近くになるわけではなく、195万円の5%と195万円を超えた5万円の部分に10%を掛け合計した額が納税額となる。課税所得200万円で計算してみよう。

195万円×5%=9万7500円
(200万円-195万円)×10%=5000円
9万7500円+5000円=10万2500円

 税率表の右側の控除額を利用するともっと簡単に計算できる。

200万円×10%-9万7500円=10万2500円

 では安倍進次郎さんの事例の所得税を計算してみよう。

課税所得×税率=所得税
166万円×5%=8万3000円
(課税所得は1000円未満の端数は切り捨て)

 記載された8万4700円にかなり近づいたが、まだ1700円の差異がある。所得税の納税額は計算のとおり8万3000円で間違いないが、平成25年から25年間は東日本大震災の復興特別所得税を上乗せする必要がある。復興特別所得税額は所得税の納税額の2.1%分となっている。

8万3000円+(8万3000円×2.1%)=8万4743円
100円未満を切り捨て      =8万4700円

 これで源泉徴収票のとおりの納税額となった。このように、給与所得控除、各種所得控除額、税率など源泉徴収票に記載されていないルール=所得税の算出方法を知らないと理解できないのが源泉徴収票だ。用紙サイズは変更となったが、基本的な考え方は変わっていないので一度理解すると一生役に立つ知識だと思われる。これまで無縁に思えた税金が少し身近に感じられたり、今後の税制改革で注目される配偶者控除の廃止などのニュースも理解できるようになるだろう。