特別企画

クラウド?パッケージ?自分に合った青色申告ソフトの選び方

 今年も個人事業主(自営業者)には憂鬱な確定申告のシーズンがやってきた。すでに何度か経験された人は「面倒臭い」「時間を取られるなあ」と労力面を気にすることが多い。今回初めて確定申告に臨む人は「税金のことはよく分からない」「自力でできるかなあ」と不安が先に立つと思う。不安に思うのは当然で、簿記などの知識がない人が手書きで青色申告をするのはかなりハードルが高い、と言うかほぼ不可能。その不可能を可能にしてくれるのが青色申告ソフトだ。

 今回は、自分に合った青色申告ソフトの選び方について考えてみたい。

パッケージかクラウドか

 一昔前は、青色申告ソフトと言えばPCにインストールするパッケージ型が主流だったが、ここ数年はクラウド型の青色申告サービスが話題となっている。世の中の人はどうしているか? MM総研の調査によると、個人事業主で会計ソフトを利用しているユーザーのうち、クラウド会計の利用者は9.7%とまだまだ少ない印象だ。事業者別シェアは弥生が52.8%でトップ。以下、freee、マネーフォワード(MFクラウド)が続いている。

クラウド会計の利用者は1割程度
事業者別シェアは弥生が52.8%でトップ

個人事業主の会計ソフト利用率は32.7%、そのうち約1割がクラウド会計~MM総研調査
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1039716.html

 一昔前も現在も青色申告ソフトの主流はパッケージ型だ。こちらのシェアは家電店、パソコンショップなどのPOSデータを集計したBCNのデータで見てみよう。申告ソフト部門の1位は弥生で58.1%と、2位のソリマチ(17.1%)を大きく引き離している。弥生は13年連続1位で、申告ソフトのデファクトスタンダード的な存在となっている。

BCN AWARD 申告ソフト部門
集計年1位(シェア)2位(シェア)3位(シェア)
AWARD 20172016年弥生(58.1%)ソリマチ(17.1%)BSLシステム研究所(7.9%)
AWARD 20162015年弥生(57.9%)ソリマチ(19.7%)BSLシステム研究所(6.8%)
AWARD 20152014年弥生(64.1%)ソリマチ(15.6%)BSLシステム研究所(5.8%)
AWARD 20142013年弥生(65.8%)ソリマチ(13.0%)リオ(6.6%)
AWARD 20132012年弥生(64.9%)ソリマチ(14.8%)リオ(6.4%)
AWARD 20122011年弥生(58.4%)ソリマチ(16.2%)リオ(10.2%)
AWARD 20112010年弥生(56.2%)ソリマチ(17.6%)BSLシステム研究所(6.7%)
AWARD 20102009年弥生(41.5%)イーフロンティア(23.0%)ソリマチ(18.2%)
AWARD 20092008年弥生(40.0%)ソリマチ(19.5%)インターチャネル(19.3%)
AWARD 20082007年弥生(42.6%)インターチャネル・ホロン(24.6%)ソリマチ(15.3%)
AWARD 20072006年弥生(48.6%)インターチャネル・ホロン(20.2%)ソリマチ(9.4%)
AWARD 20062005年弥生(36.8%)ホロン(22.2%)マグレックス
(11.4%)AWARD 20052004年弥生(29.3%)JCN LAND(27.6%)マグレックス(11.0%)
AWARD 20042003年JCN LAND(37.6%)弥生(24.2%)ソリマチ(9.2%)

 パッケージとクラウド、どちらを選択するかを具体的に比較してみよう。一般的にクラウドのメリットと言われているのは以下の内容となる。

クラウドのメリット説明
アグリゲーション機能インターネットバンキング、クレジットカード、電子マネーなどの入出金データを取り込むことができる
OSを選ばないパッケージ型の青色申告ソフトはWindows対応が主流。クラウドはMacでも使用可能
複数のPCが使えるパッケージ型はインストールしたPCでしか使えないが、クラウドはデスクトップPC、ノートPCなど複数のPCで使えるのでどこでも使用可能。外出中にスマホで入力もできる。
常に最新バージョンアップデートがあった際、ダウンロードしてインストールする必要がない
クラウドにバックアップPCの故障や自分のミスによりデータを失うことがない。反面クラウドに不安を感じる人もいる

 これらのメリットはすべての人に当てはまるわけではない。Windows PCだけ使用している人にはMacで使えることはメリットにはならないし、ローカルPCのデータをNASやクラウドにバックアップをしている人は、クラウドだから安全とは思わないだろう。

 この中で多くの人にメリットと思われるのはアグリゲーション機能だ。あくまでインターネットバンキングやクレジットカード会社のWebサービスを利用していることが前提となるが、膨大な入出金のデータを青色申告ソフトに取り込めることは、確定申告の大幅な時間短縮となる。

 クラウド型の青色申告サービスが始まった当初は、アグリゲーション機能のメリットを理由にクラウドを選択する傾向があった。ところが、青色申告ソフトで圧倒的なシェアを持つ弥生が、パッケージ型でありながらアグリゲーション機能に対応した製品を2014年に発売した。

 PCにインストールをするパッケージ型の青色申告ソフトでも、インターネットバンキングやクレジットカード、電子マネーのデータを取り込むことが可能となり、現在ではアグリゲーション機能の有無がクラウド、パッケージの選択理由ではなくなったということだ。

 冒頭のMM総研の調査を今一度確認してみると、クラウド会計ソフトが9.7%、インストール型会計ソフトが80.3%となっている。やや乱暴だが、インストール型会計ソフトの80.3%のうち58.1%(BCNのデータより)が弥生製品と仮定すると、会計ソフト利用者の約56.3%(インストール型の弥生製品+クラウド)が、アグリゲーション機能による入出金データの取り込みが可能。言いかえると約6割弱は、すでにクラウドの恩恵を受けているということだ。

 クラウド会計ソフトの利用者が思いのほか伸びない、と感じている読者もいるだろう。あくまで筆者の仮説だが、「クラウド会計ソフトに乗り換えようか検討を始めた」「と思っていたら自分が使っている弥生製品がアグリゲーション機能を搭載した」「ならそのまま弥生のパッケージ型青色申告ソフトで継続しよう」というユーザーが多く、クラウド会計ソフトの利用者が増えていないと考えられる。

 クラウドとパッケージ。どちらかを選択する際のポイントは「OSを選ばない」「複数PCでどこでも使える」というクラウドのメリットに価値を見いだせるかだ。「Macで使用したい」「複数のPCで家でもカフェでも使いたい」「移動中にスマホで入力したい」が必須条件という人はクラウドで決まり。「普段Windowsだし、スマホで作業しないし」という人はクラウド、パッケージの両方からコスト、操作性など別の評価で最適な製品を選べばよいだろう。

人気の3製品を比較

 冒頭の調査結果で筆者が気になった点は2つ。1つはクラウド会計ソフトの利用者が少ないこと。もう1つは全体の半数が「会計ソフトを利用していない」と回答したことだ。半数の人がどうやって確定申告をしているか想像すると「税理士にお願いする」「Excelを使用」「手書きで作成」「記帳しない」などが思い浮かぶ。

 Excelと手書きのほとんどの人は、白色申告をしていると思われる。記帳していない人は、平成26年分から白色申告でも記帳が義務化されたことを知らないのであろう。いずれにせよ、「会計ソフトを利用していない」と答えた多くの人が白色申告を行っていると想像される結果だ。今回のテーマは青色申告ソフトの選び方なので、主役は青色申告ソフトだが、該当する人が多い白色申告ソフトも加えて、申告ソフトを選ぶ際のポイントを考えてみたい。

 ここからは具体的な製品を比較していこう。パッケージ型の青色申告ソフトの代表は圧倒的なシェアを持つ「やよいの青色申告 17」。パッケージ型でありながらアグリゲーション機能を搭載した優れものだ。クラウドからは2製品。1つは白色申告専用の製品はほとんどない中、貴重な存在でありつつ無料で使える「やよいの白色申告 オンライン」を選定。もう1つはシェアの高さと今回の比較対象としての分かりやすさを優先して「やよいの青色申告 オンライン」を選定した。詳細は後述するが、いずれもキャンペーンにより価格面も魅力がある。

やよいの青色申告 オンライン
やよいの白色申告 オンライン
やよいの青色申告 17

 シェアが高い製品の利点は情報量が多いことだ。自己解決力の高いINTERNET Watch読者なら困ったときに「やよいの青色申告 減価償却」などと検索して答えを見つけられるだろう。クラウド?パッケージ?青色?白色?という視点で3製品を比較しながら申告ソフトの選び方を考えたい。

 では3製品の簡単なスペックを比較しよう。まず申告の種類だが、「やよいの白色申告 オンライン」は白色申告専用となっていて、残りの2製品は青色申告、白色申告の両方に対応している。

 これは初期設定の際に青色、白色が選択できるということだ。もし今回の確定申告(2016年分)は白色申告だけど、次回から青色申告に切り替えるぞ、という人は最初から青色申告ソフトを選択してもよい。

3製品スペック比較
製品名やよいの青色申告 17やよいの青色申告 オンラインやよいの白色申告 オンライン
形式インストールクラウドクラウド
申告の種類青色申告
白色申告
青色申告
白色申告
白色申告
対応OSWindowsWindows/Mac OSWindows/Mac OS
取引入力の方式かんたん取引入力
スマート取引取込
現金出納帳
振替伝票
かんたん取引入力
スマート取引取込
仕訳入力
かんたん取引入力
スマート取引取込
作成できる書類青色申告決算書
確定申告書B
収支内訳書
青色申告決算書
確定申告書B
収支内訳書
確定申告書B
収支内訳書
スマホ確定申告アプリ×
スマホレシート取込

 クラウドの対応OSは、Windows/Mac OSの両対応。。OSのバージョンや対応ブラウザなどの細かな情報は、製品ページなどで確認していただきたい。取引入力の方式にある「スマート取引取込」は、アグリゲーション機能の名称。スマート取引取込に対応している=インターネットバンキングやクレジットカード、電子マネーなどのデータ取込ができる、ということだ。これにはパッケージ版の「やよいの青色申告 17」を含め、3製品とも対応している。

クラウド版には取り引きの入力ができるスマホアプリもある

3製品の価格を比較

 3製品の価格を確認してみよう。「やよいの青色申告 17」はパッケージの購入価格と「あんしん保守サポート」のサポートプランの組み合わせで、価格が異なっている。2017年2月22日のAmazonの販売価格は1万1440円。サポートプランはセルフプラン、ベーシックプラン、トータルプランの3つが選択できる。

 普段から自己解決を基本とし「ユーザー登録しない。サポートも受けない」という人もいると思うが、「やよいの青色申告 17」でアグリゲーション機能を利用するには、この「あんしん保守サポート」に入る必要がある。

 「あんしん保守サポート」はセルフプランとベーシックプランは最大15カ月無料のキャンペーン中で、2017年の2月に申し込むと2018年の4月までは無料ということだ。加えて「あんしん保守サポート」は次期バージョンが無償提供されるので、次回の確定申告を終えるまで追加費用は発生しない。パッケージの購入価格が約1万2000円なら、1年分は実質6000円ほどということだ。

やよいの青色申告 17「あんしん保守サポート」のプラン比較
プラン名セルフプランベーシックプラントータルプラン
初期最大15カ月の料金0円0円8640円
通常料金(1年間)8640円1万2960円2万1600円
次期バージョンが無償
電話、メール等のサポート
確定申告、経理業務などの相談

 「やよいの青色申告 オンライン」はセルフプランとベーシックプランがある。セルフプランは電話、メールなどのサポートはなしだが、初年度1年間(最大14カ月)無料となっている。2017年2月に申し込めば2018年3月まで無料だ。次回の確定申告が終わるまで無料で使用できるので、2年間無料と言えなくもない。

やよいの青色申告 オンラインのプラン比較
プラン名セルフプランベーシックプラン
初年度(最大14カ月)の費用0円6480円
次年度の費用8640円1万2960円
電話、メール等のサポート
確定申告、経理業務などの相談

 「やよいの白色申告 オンライン」はフリープランとベーシックプランがある。フリープランは電話、メールなどのサポートは受けられないが、すべての機能が使えてずっと無料。白色申告ができてアグリゲーション機能も使えて無料は凄い。インターネットバンキングを利用している白色申告の人には、確定申告の最強ツールとなりそうだ。

やよいの白色申告 オンラインのプラン比較
プラン名フリーフプランベーシックプラン
初年度(最大13カ月)の費用0円4320円
次年度の費用0円8640円
電話、メール等のサポート
確定申告、経理業務などの相談

 次に、3製品の価格を比較してみよう。やよいの白色申告 オンラインはフリープラン、残りの2製品はセルフプランで比較したのが以下の表だ。ずっと白色申告を続ける人は「やよいの白色申告 オンライン」の安さは0円なので圧倒的。青色申告をする人で価格重視なら、「やよいの青色申告 オンライン」は2年分の確定申告が無料なのでかなりお得だ。パッケージ版の「やよいの青色申告 17」は初期投資が必要となるので、この3製品で比較するとやや高めに見えるが、一般的な青色申告ソフト(パッケージ、クラウドを含め)と比較すれば高くはない。

 念のために補足しておくと、8640円は8000円+消費税8%なので、消費税が10%になるとこれらの価格は変更となる。

3製品価格比較
製品名やよいの青色申告 17(セルフプラン)やよいの青色申告 オンライン(セルフプラン)やよいの白色申告 オンライン(フリープラン)
初期費用1万1440円0円0円
2017年(2016年分)の確定申告の費用1万1440円0円0円
2018年(2017年分)の確定申告の費用0円0円0円
2019年(2018年分)の確定申告の費用8640円8640円0円

操作性を比較

 ここからは3製品の操作性を比較してみよう。文房具を購入した場合の記帳方法を見てみたい。白色申告の記帳はお小遣い帳や家計簿と同じで「いつ」「何を」「いくら」で買ったかを入力するだけだ。

 「やよいの白色申告 オンライン」では、かんたん取引入力を使用する。よく使う取引に文房具と入力すると例として「文房具の購入」が表示されるので、これを選択。科目が自動的に消耗品費となるので、金額を記入し登録すれば完了だ。

かんたん取引入力でよく使う取引に文房具と入力し文房具の購入選択
金額を記入し登録すれば完了

 「やよいの青色申告 オンライン」も、かんたん取引入力を使用する。同じように文房具で検索すると、科目に消耗品費が自動的に記入される。青色申告は複式簿記による記帳となるため、取引手段は現金を選択。金額を記入し登録すれば、こちらも完了となる。

文房具で検索すると科目に消耗品費が自動的に記入される
取引手段は現金を選択し、金額を記入し登録すれば完了

 「やよいの青色申告 17」は、現金出納帳や仕訳日記帳などさまざまな入力方式で記帳できるが、ここではかんたん取引入力を使用する。取引名に文房具と入力し「事務用品(文房具等)を購入した 現金」を選択。取引手段に現金、相手勘定に消耗品費が自動的に入力されるので、金額を記入し登録する。下段に仕訳プレビューが表示され、借方勘定科目が消耗品費、貸方勘定科目が現金となっていることが確認できる。

やよいの青色申告 17では、取引からかんたん取引入力を選択
取引名に文房具と入力し「事務用品(文房具等)を購入した 現金」を選択
取引手段に現金、相手勘定に消耗品費が自動的に入力されるので金額を記入し登録。仕訳プレビューで借方が消耗品費、貸方が現金となっていることが確認できる

 青色申告に必要な複式簿記による記帳は、簿記の知識がないと難しいが、以上のようにソフトがアシストしてくれるので初心者でも難易度は高くない。

売り上げと回収の記帳を比較

 次は、売り上げと回収の記帳を比較してみよう。売り上げといっても業種によって差があり、飲食や店舗販売はその場で現金取り引きが主となり、法人との取り引きは「月末締め翌月末振り込み」といった掛け売りが主となる。ここでは難易度の高い掛け売りしたケースを記帳してみよう。

 青色申告は請求時に売り上げを記帳し、回収時に売掛金の入金を記帳するため2回の記帳が必要となるが、白色申告の記帳は1回だけで済むので簡単だ。「やよいの白色申告 オンライン」ではかんたん取引入力の収入を選択し、よく使う取引から「商品の販売・売上」を選択。取引先を選択し金額を記入。原稿料などの源泉徴収税が入金時に引かれる場合は、「うち源泉徴収税額」にチェックを入れると10.21%の源泉徴収税が自動的に記入されるので、登録をすれば完了となる。

よく使う取引から「商品の販売・売上」を選択
取引先を選択し金額を記入。源泉徴収税が引かれる場合は「うち源泉徴収税額」にチェックを入れて登録

 注意点が1つ。売り上げのタイミングは、納品や請求書を発行したときが基本となる。例えば12月に請求書を送り、1月に入金があった場合は12月の売り上げとなる。これは白色申告も青色申告も同じだ。

 次は青色申告の売り上げと回収を記帳しよう。青色申告は複式簿記による記帳で、難易度が高くなる。「やよいの青色申告 オンライン」も、売り上げ時はよく使う取引から「商品の販売・売上」を選択する。自動的に科目に売上が記入されるので、取引手段は売掛金を選択。回収予定日を記入し取引先、金額を記入すれば売り上げ時の記帳は完了だ。

 入金された場合は、上段の「売掛・未収」のプルダウンメニューから取引先を選択する。下段に対象となる取り引きが表示されるので①、回収取引を入力②をクリックし、上段で振り込まれた口座を選択③、源泉徴収税が引かれていれば「うち源泉徴収税額」にチェック④を入れて登録する。

よく使う取引から「商品の販売・売上」を選択
取引手段は売掛金を選択し回収予定日、取引先、金額を記入する
「売掛・未収」のプルダウンメニューから取引先を選択
対象となる取り引きが表示されるので①、回収取引を入力②をクリックし口座を選択③、「うち源泉徴収税額」にチェック④を入れて登録

 「やよいの青色申告 17」では、かんたん取引入力の取引名に売掛金と入力し、「掛けで商品を販売した」を選択する。取引手段の売掛金と相手勘定の売上高が自動的に記入されるので、取引先と金額を記入すれば売り上げ時の記帳は完了だ。

取引名に売掛金と入力し「掛けで商品を販売した」を選択
取引先と金額を記入する

 次は回収時の記帳。取引名に売掛金と入力し「売掛金が普通預金に振込まれた」を選択する。取引先と銀行口座を選択し、金額は実際に入金された金額を記入する。下段のプレビューで借方勘定科目が普通預金、貸方勘定科目が売掛金となったことが確認できる。

取引名に売掛金と入力し「売掛金が普通預金に振込まれた」を選択
取引先と銀行口座を選択し、実際に入金された金額を記入する

 この段階では売り上げと入金は記帳されたが、差し引かれた源泉徴収税が記帳されていない。かんたん取引入力では記帳できないので、売掛帳を使って記帳しよう。相手勘定科目に事業主貸、摘要に源泉徴収税と記入し、源泉徴収税の金額を記入すると回収時の記帳は完了となる。

源泉徴収税は売掛帳を使って記帳
相手勘定科目に事業主貸、摘要に源泉徴収税と記入し金額を記入

 比較すると、フリーランスを意識して開発された「やよいの青色申告 オンライン」の方が、回収時の記帳は簡単だ。実際には慣れてしまえばそれほどの難易度ではないが、初めて確定申告をする人、簿記の経験がない人には「やよいの青色申告 17」は少し難しいかもしれない。

アグリゲーション機能は同じ

 インターネットバンキングやクレジットカード、電子マネーのデータを取り込むことできるアグリゲーション機能は3製品とも同じだ。スマート取引取込は銀行やクレジットカードの入出金のデータ以外に、スマホでレシートを撮影して取り込むアプリや請求書、POSレジと連携するアプリなどが用意されている。

アグリゲーション機能は3製品とも同じ

固定資産の減価償却を比較

 確定申告の初心者に難関と言われるのが、固定資産の減価償却だ。難関と言っても難しいのは操作ではなく、理屈が分かりにくいこと。10万円以上の機材は固定資産と呼ばれ、対応年数に分けて減価償却する。車なら6年(72カ月)、PCなら4年(48カ月)に分割して経費とするルールだ。例えば24万円のPCは毎月5000円(24万円÷48)ずつ経費となる。

 仮に11月に、現金で24万円のPCを買ったときは、1つめの作業として、11月に24万円の現金が減って、固定資産を購入したことを記帳する。2つ目の作業として、固定資産の登録と減価償却方法を入力する。48分割する定額法で償却すると11月、12月の2カ月分の1万円がその年の経費となる。以降4年間それが継続する。この2回の作業を3製品で比較してみよう。

 「やよいの白色申告 オンライン」は、よく使う取引にパソコンと入力し「パソコン(10万円以上)の購入」を選択する。科目が固定資産となるので、金額などを記入して1つめの作業が終了する。

 登録をすると「固定資産情報を登録しますか?」とメッセージがポップアップするので、固定資産の新規登録を手順にそって進める。償却方法の選択で白色申告は3つの選択肢が表示されるが、通常は「定額法」を選択する。耐用年数を調べて4年と入力すると、この例では8月に購入したので5/48の1万4125円が本年分の普通償却費=経費となった。

よく使う取引にパソコンと入力し「パソコン(10万円以上)の購入」を選択
金額などを記入して1つめの作業が終了
「固定資産情報を登録しますか?」とメッセージがポップアップする
償却方法の選択で白色申告は3つの選択肢が表示される
耐用年数を調べて入力する

 「やよいの青色申告 オンライン」の手順は、「やよいの白色申告 オンライン」とほぼ同じだ。「パソコン(10万円以上)の購入」を選択するのは同じ。1つ目の相違点は取引手段に現金、クレジットカードなどの取引手段を選択すること。2つ目の相違点は償却方法の選択肢が増えること。30万円未満の資産は、青色申告なら即時償却=その年に全額を分割不要で経費にすることができる。この特例は年末ギリギリの節税対策に有効だ。相違点はこの2点だけで、理屈を知れば操作は難しくない。

やよいの青色申告 オンラインも、よく使う取引にパソコンと入力し「パソコン(10万円以上)の購入」を選択
青色申告では取引手段の記帳が必要とされる
減価償却の方法が増え、即時償却が可能だ
即時償却が選択できるのは青色申告の大きな特典

 最後は「やよいの青色申告 17」で記帳してみよう。パソコンは工具器具備品に分類されるので、取引名に「工具」と入力し「パソコンを購入した 現金→工具器具備品」を選択する。金額などを入力すると、プレビューで借方勘定科目に工具器具備品、貸方勘定科目に現金と記帳されたことが分かる。

取引名に「工具」と入力するし「パソコンを購入した 現金→工具器具備品」を選択
金額などを入力し、プレビューで借方勘定科目に工具器具備品、貸方勘定科目に現金を確認

 減価償却は「決算・申告」の「減価償却資産の登録」から行う。「新規作成」をクリックすると「固定資産の編集」が開くので必要な欄を記入する。償却方法はここでも即時償却を選択。登録をすると固定資産一覧が表示されるので「仕訳書出」をクリックすると振替伝票が表示される。内容を確認し登録すると完了となる。「やよいの青色申告 17」では購入の記帳と減価償却の記帳が連動していないため、仕組みを理解していないとやや難易度が高い。

減価償却は「決算・申告」の「減価償却資産の登録」から行う
「新規作成」をクリック
「固定資産の編集」の必要な欄を記入
「仕訳書出」をクリック
内容を確認し登録

確定申告書の作成を比較

 最後の比較は、確定申告書の作成だ。確定申告書の作成はそれほど難しくはない。強いて言えば、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などは、手書きで作成する場合は知識を要求される。

 「やよいの白色申告 オンライン」と「やよいの青色申告 オンライン」の操作は同じだ。生命保険料控除の画面はその部分だけ切り抜くと見分けがつかない。どちらも保険の種類と保険料を記入すれば控除額を自動で計算してくれるので、複雑な控除額の計算は不要だ。操作は同じだが「やよいの白色申告 オンライン」は最後に「来年は青色申告にしませんか?」というメッセージが表示される。実際の申告内容から節税効果を算出してくれるので参考になるだろう。

やよいの白色申告 オンラインの画面
やよいの青色申告 オンラインの画面
「やよいの白色申告 オンライン」は最後に「来年は青色申告にしませんか?」というメッセージが表示される

 「やよいの青色申告 17」はパッケージ版らしく確定申告書どおりの画面が表示される。該当するエリアをクリックすると入力画面がポップアップする凝った作りだ。こちらも保険料を入力すると控除額は自動計算され自動的に記入される。

確定申告書どおりの画面が表示される
該当するエリアをクリックすると入力画面がポップアップ。保険料を入力すれば控除額は自動計算

 確定申告書の出力に関しては3製品とも操作性は秀逸だ。直感的な分かりやすさは、パッケージ版の「やよいの青色申告 17」が1歩リードしているように思う。

初心者にはクラウド版がお勧め

 ここまでの操作比較では、「やよいの白色申告 オンライン」と「やよいの青色申告 オンライン」はほぼ同じで、パッケージ版の「やよいの青色申告 17」が初心者には少々難しい印象だ。クラウド版には価格面の魅力もあるので初心者には「やよいの白色申告 オンライン」か「やよいの青色申告 オンライン」がお勧めだろう。

 ただし、あくまで初心者の視点で比較した場合だ。例えばExcelのセルをコピーするとき、初心者はセルをクリックしてツールバーのコピーボタンをクリックし、別のセルをクリックしてツールバーの貼り付けボタンをクリックする。

 が、おそらくINTERNET Watchの読者ならセルをCtrl+Cでコピーして、キーボードでセルを移動してEnterかCtrl+Vで貼り付けるはずだ。

 冒頭のクラウド会計調査やPOSデータで明らかなように、日本で最も利用者が多い申告ソフトはパッケージ版の弥生製品だ。業務で毎日使用している人が大勢いると思われるし、顧客とのデータのやり取りに使用している税理士先生も大勢いるだろう。かんたん取引入力を使用しないで、キーボードでバシバシ操作する人の視点で比較すると、異なる評価となるかもしれない。

 筆者自身は起業して10年を過ぎたが、ずっとパッケージ版の「やよいの青色申告」ユーザーだ。クラウド版が登場するまで7~8年はパッケージ版しかなかったので、その間にそこそこ慣れたこともあるが、パッケージ版のサクサク感はせっかちな筆者には捨てがたいものがある。パッケージ版なら1000行を超える仕訳のスクロールも一瞬だ。

 「やよいの白色申告 オンライン」はずっと無料。「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無料。「やよいの青色申告 17」は30日間使用できる体験版が用意されているので、実際に操作して比較することもできる。ジックリ検討したい人は、操作性を自分で確認してから判断していただきたい。

(協力:弥生)