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特別企画

ベンダーに聞いた“ネットブック向けウイルス対策ソフト”の中身


 年末商戦を控え、セキュリティベンダー各社の2010年版ウイルス対策ソフトがほぼ出そろった。そんな中、一部ベンダーから“ネットブック向け”を強調する製品がリリースされている。

 光学ドライブ非搭載かつディスプレイ解像度が1024×600ドット前後、CPUパワーが低めとされるネットブック上での動作を考慮し、何らかの技術的配慮がなされた製品なのだろうか? その真相をセキュリティベンダー2社の担当者に直接伺った。

“ネットブック版ノートン”を展開するシマンテックの狙い

シマンテックの風間彩氏(コンシューマ事業部門リージョナルプロダクトマーケティングシニアマネージャ)
「インターネット セキュリティ 2010 ネットブック エディション USB メモリ版」のパッケージ画像

 「ノートン」シリーズのセキュリティソフトで知られるシマンテックでは、今年9月に最新バージョン「ノートン インターネット セキュリティ 2010」(以下、NIS 2010)を発表した。

 “標準版”と言えるのがCD-ROMパッケージ版およびダウンロード版で、利用期間1年の場合のシマンテックストア価格は6480円。「300MHz以上のプロセッサ、256MBのRAM、350MBのハードディスク空き容量」などの必要条件を満たしていれば、Windows 7/Vista/XPで利用できる。

 そして今回新たに発売されたのが、「ノートン インターネット セキュリティ 2010 ネットブックエディション」だ。ダウンロード販売専用の商品で、シマンテックストア価格は同じく6480円。利用期間1年であることや必要スペック、また1シリアルで最大3台のPCにインストールできるという条件も変わらない。

 さらにNIS 2010にはUSBメモリ版がラインアップされている。ダウンロード販売専用のネットブックエディションをUSBメモリに収録し、10月2日から販売している。11月12日には、ダウンロード販売専用のネットブックエディションの製品名と整合性を図るために、USBメモリ版の製品名を「インターネット セキュリティ 2010 ネットブック エディション USB メモリ版」と変更している。

 シマンテックによれば、USBメモリ版はシマンテックストアでは取り扱っていないが、ダウンロード版のネットブックエディションとほぼ同等の価格という。販売店側で独自の値引き、ないしポイント還元を行うケースはあるものの、基本的には“標準版”の価格と、ダウンロード版およびUSBメモリ版のネットブックエディションの価格差はないと考えていいだろう。

 この標準版とネットブックエディションの差について、シマンテックの風間彩氏(コンシューマ事業部門リージョナルプロダクトマーケティングシニアマネージャ)は、「設定画面などの一部表記を除くと、機能的な違いはありません」と説明する。ウイルスやワームを検知するためのエンジン部分などに違いはなく、ネットブックエディションで省略している機能も特にないという。

 わずかにある違いの1つが、ゲームなどを全画面表示でプレイしている際にメッセージのポップアップを行わない「サイレントモード」が、ネットブック版では「ネットブックモード」へと名称のみ変更されている。このほかには、セキュリティ状況などを示すトップ画面の製品名表記が異なる程度だ。

「ノートン インターネット セキュリティ 2010」標準版のトップ画面 こちらは「ネットブックエディション」。画面左上の製品名表記が「Netbook Edition」となっている

 機能差がない製品ながらも、あえて別名称のバージョンを投入した背景には、ネットブック市場の急速な立ち上がりがある。風間氏は「日本でのネットブック市場が前年比20%増、30%増と伸びていく中で、『ネットブックにはノートンがおすすめ』というメッセージを伝えるためのマーケティング戦略としての側面が強い」と説明する。

 ネットブックは通常、一般的なノートPCに対して各種スペックで劣るとされる。ソフトウェア処理が重くなりがちな低スペックPCには、動作の軽さ・速さを徹底的に重視したノートン製品をおすすめしたい――─。これを販売戦略面で強調したのが、ネットブックエディション投入の理由だ。

 シマンテックでは2008年に発売した「ノートン2009」シリーズ以降、基本動作やウイルススキャンの軽快さ、動作応答性といったソフトウェアとしての使い勝手を重視しているという。また、ネットブックの普及に伴い、ノートン2009以降は1024×576ドット表示を想定したユーザーインターフェイスを採用している。風間氏は「標準版をネットブックにインストールしたり、ネットブックエディションをデスクトップPCにインストールしてもなんら問題はなく、安心してご利用いただけます」と補足する。

 その一方で、光学ドライブを持たないネットブックに対し、インストールしやすい手段をダウンロードないしUSBメモリという形で提供する意味合いもあるという。これまでPCに関心を持たなかった層が「低価格」をきっかけにネットブックに触れ、ウイルス対策ソフトの購入に至るケースも今後は増えるだろう。

 PC熟練者であればネットブックは2台目、3台目のPCであることが多く、ネットワーク接続した光学ドライブからインストールすることも可能だろう。しかしネットブックが1台目のPCというユーザーにとって、USBメモリ版は欠かせない存在にもなりえる。風間氏も「シマンテックが女性ブロガーを対象に実施したミーティングでは、CD-ROMよりUSBメモリのほうが気軽にインストールできるという声もあった」というエピソードを紹介。PCに対しての人々の意識が、徐々に変化しつつある情勢も示唆した。

USBメモリ版をネットブック向けにアピールするG DATA

G DATA Software代表取締役社長のJag 山本氏

 ドイツのG DATA Software AGが開発し、日本国内ではジャングルが販売する「G Data インターネットセキュリティ 2010」も、ネットブック向けを謳う製品だ。とはいっても“ネットブック版”といった名称の製品をラインアップに加えるのではなく、USBメモリ版をネットブック向けにアピールする戦略をとっている。

 実際の製品パッケージを見ても、「ネットブックに最適」というキャッチコピーが表記されているのはUSBメモリ版のみ。CD-ROM版パッケージでは特に明記されていない。なお、店頭予想価格は「1年版/3台用」のCD-ROM版が4480円、USBメモリ版が4980円と、500円ほど価格差がある。対応OSはWindows 7/Vista/XPをサポートしている。

 G DATA Software日本法人の代表取締役社長であるJag 山本氏は「光学ドライブ非搭載のネットブックで気軽にインストールしてもらえるのがUSBメモリ版。ウイルス検出などの性能面においても、CD-ROM版との違いはありません」と語る。基本的には、ソフトウェアの収録媒体が異なるのみという。


「G Data インターネットセキュリティ 2010」USBメモリ版。パッケージ表面には「ネットブックに最適」のキャッチコピー

 「G Data インターネットセキュリティ 2010」では、画面解像度が低いネットブックでも利用できるよう、800×600ドット表示を想定したユーザーインターフェイスへと変更したが、これはCD-ROM版・USBメモリ版共通の仕様だ。またG DATA 2010を極端にスペックの低いPCへインストールした場合、負荷のかかりやすい「ダブルエンジン」(異なる2種類のウイルス検知エンジンを併用して、発見率を高める)を「シングルエンジン」へと切り替えるが、やはりCD-ROM版・USBメモリ版ともに適用される。

 山本氏は「ウイルス検知能力を下げたネットブック版ソフトを作るという考え方はあります。しかしブロードバンド回線、モバイルでも広帯域のWi-Fiが使える日本においてはウイルスが流行するスピードも速いため、何よりもリスク低減を優先させるべきと判断しました」と説明。PCスペックだけを考慮するのではなく、ネットワークインフラも念頭に置いたソフト開発の重要性を強調した。

 加えて、製品ラインナップをシンプルに抑えておきたい狙いもある。「“ネットブック”の知名度は高くなったが、あくまでも一般的なノートPCのいちジャンルとも言えます。PC初心者がまだまだ多くいる現状では、ユーザーを混乱させる懸念もあります」と山本氏。ネットブックだけを特別視する必要はあまりないとの考えだ。

 山本氏は、PCの性能に関わらず、こまめにシステム全体のフルスキャンを実施することが重要と語る。「ウイルス対策ソフトが重いと感じるのは、仕事中に自動フルスキャンが始まったりする体験の積み重ね。とはいえ、PCに挿さったUSBメモリに感染したウイルスなどは、右クリックで個別にスキャンするか、フルスキャンをしなければ検出できない。性能が低いPCだからといってフルスキャンを避けずに、安全のために空き時間を有効活用してフルスキャンをしてほしい」とアドバイスする。

ネットブック版と標準版の違いはほぼ無し

 今回はウイルス対策ソフトベンダー2社に話を伺ったが、結論から言えば、ネットブック版と標準版の差はなかった。光学ドライブ非搭載であるネットブックの特性を踏まえ、USBメモリやダウンロードでソフトを提供するという側面はあるものの、ウイルス対策性能に差はないというのが実態だ。

 ネットブックは最初期こそストレージ容量4GBの製品もあったが、近年は160GB HDDが当たり前になるなど、とうてい同列で語ることのできない性能アップを果たしている。通常のノートPCとのスペックの差も結果的に縮まっている。インタビューでは2社いずれかも「安価なネットブックだからといって、ウイルス対策をおろそかにしないで」という声が聞かれた。セキュリティの観点からは、ネットブックと他のPCを区別する考えは危険と言えそうだ。

 こうしたことから、一般ユーザーがセキュリティソフトを選ぶにあたっては、ネットブック向けかどうかを重要視する必要性はそれほどないだろう。例えば、複数ライセンスが利用可能なソフトのユーザーは、余っているライセンス分をネットブックにインストールすれば慣れ親しんだソフトを継続利用できる。また、未体験のソフトを購入して機能を比較してみる、ウイルス検出率に注目して選ぶ、あるいは単純にコストで選ぶなど、自分にあったスタイルでチョイスしてみるとよいだろう。


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(森田 秀一)

2009/11/17 06:00

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