Dropboxを超える!? Office連携など多彩な機能を備えた新生「SkyDrive」


 マイクロソフトは24日、オンラインストレージサービス「Windows Live SkyDrive」のリニューアルを実施。PCのフォルダーとオンラインストレージの自動同期が可能になるなど大幅な機能拡充が行なわれた。同様のサービスと比較しながらWindows Live SkyDriveの魅力を検証する。

PC同期機能など大幅リニューアル。無料で7GBまで利用可能

 Windows Live SkyDriveは、マイクロソフトが運営するオンラインストレージサービス。サービスを開始したのは2008年2月と4年以上前だが、何度ものサービス拡充を重ねることで利便性を向上しており、今回のリニューアルではPCフォルダーとの同期機能など、最近人気のオンラインストレージサービス「Dropbox」に近い機能を取り込んだ。

 サービスの利用はWindows Live IDを取得すれば無料。IDの取得は新規に「@hotmail.co.jp」「@live.jp」という形式のメールアドレスを利用するか、マイクロソフト以外のメールアドレスでもWindows Live IDへ登録することでWindows Live SkyDriveが利用できる。

 ディスク容量は無料の場合7GBまで、有料プランは年額800円で20GB、年額2000円で50GB、年額4000円で100GB。なお、無料版のディスク容量はSkyDriveのリニューアルが行なわれた4月24日に上限25GBから上限7GBへ引き下げられた。ただし、リニューアル前からSkyDriveを利用しているユーザーは、ログインすることで以前の25GBという容量を無料で利用できる、という措置が取られており、既存ユーザーがアップロードしていたファイルが削除される、ということはない。

 クライアントソフトはWindowsとMacにプレビュー版が新たに提供。さらに提供済みのiOS向けアプリとWindows Phone向けアプリが今回のリニューアルに合わせてアップデートされた。現在のところスマートフォンはiOSおよびWindows PhoneのみでAndroid版には対応していない。また、Windowsの対応OSはVista/7/8と一世代前のOSもサポートしているが、Mac OSはLion以降をサポートしており、Snow Leopard以前のOSは対応していない点は注意が必要だ。

PCに保存したファイルを自動でアップロード。大容量ファイルも対応

 PCで利用する際は専用ソフトをインストールし、自分のWindows Live IDでログインすると、ユーザー名の直下にSkyDriveのフォルダーが作成される。このフォルダーに保存したファイルはすべて自動でオンラインにアップロードされ、他のPCでも同様の設定を行なうことでファイルがすべて同期される仕組み。このあたりは先行するDropboxとほぼ同様の使い勝手だ。

フォルダーにファイルを保存するだけで自動アップロード

 ファイルのアップロード中はタスクバーがアニメーションするため、アップロード中であることがわかりやすい。なお、他のPCでアップロードしたファイルの同期が完了した際、Dropboxではポップアップによる通知が行なわれるが、SkyDriveにはそうした通知機能がない。ただし、詳しくは後述するが、現状のところPCフォルダーで他のユーザーとファイルを同期する機能が存在せず、同期されるのは自分が保存したファイルのみのため、通知機能は現状ではさほど必要ないだろう。

同期中はタスクバーのアイコンがアニメーションする

 1ファイルのアップロード容量は、SkyDrive日本語サイトでは上限300MBと記載されているが、試しに300MB超の動画ファイルをSkyDriveのフォルダーに保存したところ、問題なくオンラインにもアップロードされていた。英語版のヘルプでは「With the SkyDrive app, you can add files up to 2 GB in size to your SkyDrive folder, which gets automatically uploaded to SkyDrive.」とあるため、大容量のファイルもアップロード可能なようだ。

下から5つ目のファイルは602,149KBと300MBを超えるサイズ

ファイルの共有はブラウザー経由で操作。他ユーザーとの同期もブラウザーのみ

 他ユーザーとのファイル共有はPCフォルダーからは利用できず、ブラウザー経由での操作が必要だ。ファイルやフォルダーを右クリックして表示される「共有」か、該当のファイルやフォルダーを選択した時に画面の右側に表示される「共有」からファイルを共有できる。

ファイルの共有はブラウザーから行なう

 共有方法はメール、ソーシャルサービス、URL取得の3種類で、ソーシャルサービスはTwitter、Facebook、LinkedInへの投稿が可能。公開範囲はメール共有の場合、受け取った相手のみ、ソーシャルサービスの場合は全体に公開のみと公開範囲が決められているが、URL取得の場合は「表示のみ」「表示と編集」「公開」の3種類から選択が可能。ただし、メールの場合は受信者が編集できるかどうかを共有時に選択することができる。

共有時の公開範囲設定

 共有時の指定によってWindows Live IDでのログインを必須とすることもできるが、基本的に共有URLはログイン不要での閲覧が可能なため、相手がユーザーでなくても共有できる。また、Windows Live IDでログインすることで、共有されたファイルを編集することも可能。共有フォルダー内のファイルを一括ダウンロードする機能や、画像をアルバム表示する機能など、オンラインで利用できる機能が充実している。

共有相手はログイン不要でフォルダーやファイルにアクセスできる
写真はアルバム表示が可能

 なお、自分のファイルを相手に見せるという共有以外に、同じフォルダーを複数のユーザーで同期することも可能だが、共有されるフォルダーはオンラインの「共有」フォルダーへ別に保存され、自分の保存できるフォルダーとは別に扱われる。このため、PCフォルダーでは他ユーザーとの共有フォルダーやファイルは自動でダウンロードされず、ブラウザー経由で利用することが必要となる。現在PC用アプリはプレビュー版として提供されていることもあり、この点は今後の機能拡張での対応を期待したい。

他のユーザーとフォルダーを同期する場合はブラウザーで行なう

ブラウザー上でOfficeファイルを編集。PCへのリモートアクセス機能も

 オンラインとPCでデータを同期できるという基本的な機能に加えて、マイクロソフトならではの機能と言えるのがOffice連携。WordやExcel、PowerPointといったOffice文書を、ファイルを変換することなくブラウザー上で編集できる。

 マイクロソフト自ら提供する機能だけに、ブラウザー上でもクライアントソフトと同等の操作感で利用が可能。ファイルの再現性も高く、クライアントソフトでの表示とほぼ変わらない状態でブラウザーから編集できる。編集後もファイルが変換されることなくOfficeファイルの形式を維持しているのもメリットだ。

SkyDriveでExcelを表示
同じファイルをPCで表示
SkyDriveでPowerPointを表示
同じファイルをPCで表示

 Officeファイルを扱えるサービスやソフトはいくつもあるが、サードパーティー製のサービスはどうしても再現性に課題がある。その点でマイクロソフト公式のサービスであり、ファイル形式を変えることなくオンラインで編集できるこの機能は、他のオンラインストレージにはない魅力的な機能と言えるだろう。

 独自の機能としてはこのほかに、SkyDriveアプリをインストールしたPCへ、ブラウザー経由でアクセスすることが可能。この機能を利用するにはSkyDriveをインストールしたPCが起動してインターネットに接続している必要があるが、外出先から自宅のPCに保存したファイルを利用したい、という時には便利な機能だろう。

SkyDriveアプリをインストールしたPCへSkyDrive経由でアクセスできる

iOSとWindows Phoneに対応。Windows Phoneはファイル編集も可能

 スマートフォンは現在のところiOSとWindows Phoneに対応しており、Android版は未提供。バージョンはiOS版がiOS 4.0以上、Windows Phoneが7.5以上をサポートしている。

 どちらもSkyDriveにアップロードしたファイルの表示やダウンロードに対応。PCのフォルダーと異なり、共有されたファイルの利用も可能で、共有フォルダーへのファイルアップロードにも対応している。この機能はPC版にもぜひ欲しいところだ。

iOSアプリiOSアプリでExcelを表示
共有設定ファイルのアップロードや名前変更も可能
Windows PhoneアプリWindows PhoneアプリでExcelを表示
共有設定新規フォルダー作成も可能

 また、Windows Phoneの場合、OfficeファイルをWindows Phoneで開いて編集することも可能。残念ながら編集できるのはOffice 2007以降のファイル、つまり拡張子が「.docx」「.xlsx」「.pptx」といったファイルに限られ、Office 2003以前のファイルは閲覧のみとなるものの、表示の再現性も高く、スマートフォンで直接編集できるメリットは大きい。

Windows Phoneアプリはファイルの編集も可能

SkyDriveならではの独自機能が魅力。今後の機能拡張に期待

 PCに保存したデータを自動でアップロードし、複数のPCで同期するというオンラインストレージはDropboxが代表的な存在だったが、Windows Live SkyDriveが同様の機能を備えてリニューアルを行ない、その直後に長らく噂されていたGoogle ドライブが登場するなど、オンラインストレージを取巻く環境は急激に競争が激しくなっている。

 他の2サービスと比較すると、無料のディスク容量は2GBのDropbox、5GBのGoogle ドライブに対し、SkyDriveは上限が下げられたとはいえ7GBが利用できるのはメリット。Dropboxでは、他ユーザーを招待することで容量を追加できるといったキャンペーンを展開しており、ユーザーによっては20GB超の容量を利用できているケースもあるが、SkyDriveは既存ユーザーの場合25GBが無料のため、既存ユーザーのメリットはSkyDriveが大きいだろう。

 有料プランは年額で比較するとDropboxが50GBで99ドル、100GBで199ドル、Google ドライブは25GBで29.88ドル(2.49ドル×12カ月)、100GBで59.88ドル(4.99ドル×12カ月)に対し、SkyDriveは20GBで800円、50GBで2000円、100GBで4000円。ドル建てと円建てで比較しにくいものの、100GBの年額を円換算するとDropboxの約1万6000円(4月30日時点)、Google ドライブの約4800円(4.99ドル×12カ月、4月30日時点)に対しても安価に利用できる。

 ファイルの同期機能は他サービスと比べてもほぼ同等だが、現状ではPCフォルダーで他のユーザーと共有する機能が提供されていないのが課題。この点は今後の対応に期待したい。一方で自分のPCへアクセスする機能やOffice連携といった機能は他のサービスよりも魅力的。特にOffice連携はマイクロソフトが提供するサービスならではということもあり、SkyDriveの大きなメリットとなるだろう。今後は現在プレビュー版として提供されているPCアプリのアップデートに期待したいところだ。


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(甲斐 祐樹)

2012/5/7 06:00