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年末年始によくあるRAID障害、早く安く復旧するには?

 いよいよ今年も年末を迎える。企業では大掃除や仕事納めを経て、年末年始の休暇の期間となる。

 とはいえ、この時期でもマシンの障害は起きる。さらに、この時期に増えるタイプの障害もある――と、ハードディスクのデータ復旧サービス「日本データテクノロジー」(サイト名は「データ復旧.com」)の上級技術員である笠嶋一貴氏は説明する。

 こうした年末特有のハードディスクのトラブルの例や、年末年始ならではの復旧事例について、笠嶋氏に話を聞いた。

年末年始に特有の4つのディスク復旧依頼パターン

日本データテクノロジー上級技術員の笠嶋一貴氏

 笠嶋氏によると、年末年始にトラブルが増えるのは、本格的なサーバーのディスクではなく、PCや、比較的小規模なソフトウェアRAIDのNASなどの機器だという。というのも、本格的なサーバーはサーバー室やデータセンターなどの場所で365日稼働しているため、年末年始にのみ起きるトラブル要因も特にないからだ。

 それを前提として、年末に起こりがちなトラブルとして、4つのパターンがあると笠嶋氏は説明した。

 1つ目は、正常でないシャットダウンによって起こる障害だ。休暇期間で誰も使わないということで、節電の目的などからNASを停止することがある。このときに、正しいシャットダウンの方法がわからず、電源ボタンを長押ししたりケーブルを抜いたりして停止してしまい、システムを壊してしまうというケースだ。

 「こうしたケースでは、システムのみの障害で、データ領域に影響がないことが多いので、復旧は比較的容易です。そのため、期間も比較的短かく、料金も比較的少なく済みます。容量にもよりますが、1TB×4本ぐらいのNASで、2〜3日で復旧できます」と笠嶋氏。このような障害にならないように、もしNASなどを停止する場合には、必ず説明書に書かれているような正規の方法でシャットダウンするべきだろう。

 2つ目は、NASのディスクの不良箇所をチェックするディスクスキャンをかけた結果、不良セクタによりRAID障害が起きるというものだ。特に、営業日を終えて使う人がいないときにディスクスキャンをかけることにより、年末年始などの長期休暇の時期に復旧依頼が増えるという。

 「ディスク全域をスキャンしたことにより、ふだんアクセスしていない不良セクタに遭遇し、さらにディスクに高い負荷もかかります。これでデータを失うのを防ぐには、バックアップが一番ですね。」(笠嶋氏)

年末年始に復旧依頼が増えるというRAID機器

 3つ目は、各自のPCやNASのデータを整理していて、誤って必要なデータまで削除してしまうケースだ。年末は大掃除の一環でデータも整理する人が多く、こうした事例も増える。

 「RAIDはハードウェア障害などからデータを守るための技術ですが、人為的な削除や上書きはその時点で複数のディスクに反映されるので、RAIDでは防げません」と笠嶋氏。RAID機器でデータを削除した場合、複数のディスクにデータがまたがることや、ファイルシステムとしてやや難度が上がることから、PCの単体のハードディスクより復旧が難しくなり、「場合によっては1週間近くかかることも」。このケースも、防ぐには日頃から定期的にバックアップをとるのが重要だということだ。

 4つ目に挙げられたケースはそれと裏腹ともいえるもので、バックアップをとろうと外付けディスクをNASに接続し、フォーマットしようとして、誤ってNASのディスクをフォーマットしてしまうというケースだ。

 「実はこのケースも少なからずあります」と笠嶋氏。このケースの復旧は、1つ目のシステム障害よりは難しく、3つ目の削除よりは簡単で、期間と費用も両者の中間程度だという。「これを防ぐ方法は、フォーマット先をきちんと確認するか、NASの管理画面に慣れていなくてPCでフォーマット操作をした経験があれば、PCでフォーマットすること、ですね」。

年末年始にパーツを求めて静岡に

 年末年始には、特有のトラブルが起こるだけでなく、復旧する側でも作業が難しくなる場合がある。笠嶋氏はそのような事例として、正月休み期間に依頼を受けたケースを紹介した。

 このケースで持ち込まれたのは、1990年代に作られた古いサーバーだ。すでに12月の時点でディスクの調子が悪くなっていたのが、年末年始に障害となってしまったという。笠嶋氏によると、「他社に連絡したものの、年末年始は電話がつながらない会社や、受け付けはしているものの実作業はしていないということで、我々の元に持ち込まれました」。

 症状としては難しくなく、筐体の基板の障害で、ディスク自体には問題がなかったという。ただし、古いフォーマット形式なのでデータを取り出すのが難しいため、新しい筐体にディスクを付けてデータを取り出すことになった。

 「ところが、そうした中古パーツの入手で頼りにしている店が何件かあるのですが、どれも正月で開いていない。八方手を尽して、ようやく静岡の清水で入手できることがわかったので、時間を惜しんで直接行って入手しました」。それにより、翌日に無事納品したという。

復旧確率を高める心得とは?

 「事業者によって、年末年始も受け付けはしているものの、復旧作業は新年の営業開始日から、という場合もあります。我々の場合は、問い合わせだけでなく診断や復旧の作業も休まずやっていますので、“年明けすぐに必要なのですぐ復旧したい”という依頼もしばしば受けます」と笠嶋氏は説明する。

 年末年始に限らず、作業期間や復旧確率を上げるための心得について、笠嶋氏は、できるだけ、障害が発生したままの状態で依頼することだと語る。

 「自分で復旧を試みたり、技術力の低いところに依頼して直らず返るといったことがあると復旧の確率が下がります。特に、物理障害でハードディスクを一度開けてしまうと、復旧は難しくなります。」

 業者の選び方については「復旧率を公表していても基準がないので、見ても実際のことはわかりません。大手企業などの復旧実績を出しているのは、勝手に偽れないので、目安になるでしょう」という。

 また、復旧エンジニアが依頼主から伝えて欲しい情報としては、「何が起きたか、してしまったかの詳しい状況」「利用人数やOSなどの利用環境」「RAIDのレベル・台数などRAIDの構成情報や、障害の発生したディスクの番号」「試してしまったこと」などが挙げられた。「エンドユーザーではなく設置している業者からの依頼になる場合も多いのですが、できるだけエンドユーザーの証言も伝えていただければと思います」(笠嶋氏)。

(高橋 正和)