年間4万台のHDDを復旧、「データ復旧.com」の作業現場(後編)

東京・銀座のインターネットオーナーズ見学レポート

 東京・銀座にあるインターネットオーナーズのオフィス。前編では、同社が提供するデータ復旧サービス「日本データテクノロジー」の作業風景などをお伝えした。後編では、同社事業部長の森茂雄氏に、銀座の一等地にワンフロア240坪のオフィスを構える理由などを伺った。

デスクの上には色とりどりのボールが団子状に

 インターネットオーナーズのオフィス内には、データ復旧作業を行う工場エリアに加えて、顧客からの電話に対応するサポートエリアがある。

 各デスクには黄と赤のボールが団子状に串刺しにされているのが目に付くが、黄色は「ハードディスクを持ち込む顧客」、赤は「ハードディスクを郵送する顧客」を担当した分だという。これにより、その日の受注件数が一目でわかるようになっている。

顧客からの問い合わせに応える電話サポート用のスペース

 また、電話の傍らにはオレンジと緑のボールが掲げられている。これは、オレンジが「電話対応中」、緑が「現在対応可能」ということを示しており、新たな依頼が寄せられた際に管理者が誰に仕事を任せればよいか一目でわかるようになっている。

技術的な相談にも応じているという

 社員の各PCはインターネットに接続しているが、個人情報保護の観点から、「Winny」などのファイル交換ソフトはもちろんのこと、社員が自由にソフトをインストールできない。フリーメールやインスタントメッセンジャーの通信も遮断している。

銀座の一等地にワンフロア240坪のオフィスを構える理由

インターネットオーナーズ事業部長の森茂雄氏

 オフィスの厳重なセキュリティ体制について森氏は、「ハードディスクを預けるということは、お客様にとっては、自分の大事な手帳を見知らぬ人に預けるのと同じような心境なのです。情報漏えいに対する取り組み、厳重な設備の導入は、このサービスを提供するに当たって必要最低限のことだと考えています」と胸を張る。

 「普通の人から見ると『やりすぎ』と思われるかもしれませんが、仮に社員に悪意のある人間がいれば、そこから情報が漏えいする可能性もあります。こうしたことから、人材を採用する際には、モラルに関する試験を3回受けてもらっています。」

 インターネットオーナーズでは、組織内の機密情報を漏えいさせないことを目的に、社内体制を整備する情報セキュリティシステムの国際認証規格「ISO27001/ISMS」や、「プライバシーマーク」を取得しているほか、スタッフ全員が機密保持契約を結んでいる。

ミーティングスペースはガラス張りだ

 また、銀座の一等地にワンフロアで240坪のスペースを確保していることについては、ハードディスクを直接持ち込みたいという顧客の交通の利便性を考えただけでなく、セキュリティ体制を強化する狙いもあったという。

 「診断から復旧まで私たちの目の届く範囲で行っています。一部のアジアの国ではデータ復旧の技術が進んでいるために、日本の復旧業者でも難易度の高いものを海外に出しているところもあるようですが、やはりセキュリティ面を考えると不安が募ります。私たちは、自社内ですべて完結させるためにセキュリティの強化と技術習得にも力を入れているのです。」

社内では復旧技術に関する勉強会が行われていた。こうした勉強会は1日に何度も行われているという

成功報酬制の料金体系を採用

 データ復旧にかかる料金は、「必要なデータが復旧できなければ無料」という成功報酬制を採用している。料金が発生する「成功の定義」は、「顧客データ入りのExcelファイル」「マイピクチャフォルダ内の孫の写真」など、顧客ごとに事前に決めた上で復旧作業を開始する。

 ハードディスクの初期診断費用は3万円だが、同社のサイト「『データ復旧.com』のサイトを見た。」と連絡すれば初期診断費用は無料。復旧料金の最低金額は総ディスク容量が20~40GBで1万5000円、40~60GBで4万5000円、60~80GB以上で5万円、80~100GBで6万円、100GB以上で7万円。これに復旧の難易度や工程数を反映させて料金を決定する。

プラッタ部分に傷が付いたハードディスク(右)と正常なハードディスク(左)「データ復旧.com」のトップページ

 なお、インターネットオーナーズは2009年1月以降、ハードディスクを持ち込んだ顧客に対して、オフィス内の作業現場を見学してもらっている。「業界で初めて」というオフィスの見学を開始した理由について森氏はこう語る。

 「サービスの根幹である技術が盗まれるのではと心配される方もいますが、見ただけでマネできるものではないという自負があります。また、お客様の視点から考えれば、大切なデータを預けるのですから、どのような場所で、どのようなスタッフが対応しているのかも含めてオープンにすることで、少しでも安心してデータを預けていただけると考えたからです。」

「日本が救われた」と感謝されたことも

 森氏によれば、同社にハードディスクを持ち込む顧客の半分以上は、オフィスの見学を希望するという。「特に法人のお客様は電話だけの取り引きでは怖いと思われるせいか、実際に現場を見た上で依頼していただくケースが多いですね」。

 インターネットオーナーズの受注件数は年間で約3万5000件。顧客の割合は個人と法人が同程度。ある官公庁のデータを復旧した際には、「日本が救われた」と感謝されたこともあったという。

 データの復旧率は91%に上るが、ユーザーがPCからハードディスクを取り出す延長線のようにハードディスク自体を開封してしまった場合などは、復旧できないケースもあるという。

 「適合しないフリーソフトを使用したり、ご自身であれこれ試すことで症状の悪化を招く恐れがあり、最悪の場合、データ復旧不可になってしまいます。症状が出た際は何も触らずに、できるだけ早い段階でご相談ください。」


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(増田 覚)

2009/9/18 11:00