無料で使えるモニター版でAndroidにセキュリティ対策を「ESET Mobile Security for Android」


 高速かつ高性能なPC向けセキュリティ対策ソフトとして定評があるキヤノンITソリューションズの「ESET」シリーズに待望のAndroid版が登場した。スマートフォンのセキュリティ問題が話題になる中、7月25日まで無料で使える同製品を実際に試してみた。

PC版で定評があるESETセキュリティ製品のAndroid版が登場

 「そろそろスマートフォンにもセキュリティ対策を……」。不正アプリによる被害や紛失による情報漏えいなど、スマートフォンの普及に伴って増えてきた新たな脅威を耳にするようになったことで、本格的な対策を検討している人も少なくないのではないだろうか?

 スマートフォンのセキュリティ対策に関しては、端末を提供するメーカーや通信事業者などもサービスの提供を開始しつつあるが、まだ認知度が低く、有効に活用されていない状況だ。インストールしてはみたものの、機能や動作速度に満足できなかったり、費用面が気になるなどの理由で、今は使っていないという人も少なくないだろう。

 そんな中、キヤノンITソリューションズから登場したのが「ESET Mobile Security for Android」だ。

 登場したと言っても、現状は検証を目的としたモニター版で、発売はまだ先となっているが、PC版で定評があった軽快な動作と高いウイルス検出率を誇る「ESET」製品が、ようやくスマートフォンで使えるようになったわけだ。

キヤノンITソリューションズの「ESET Mobile Security for Android」。スマートフォンのウイルス対策、スパム対策、盗難対策、セキュリティ監査、パスワード保護が可能

 PC向けのセキュリティ対策ソフトは、黎明期から存在した製品同士の激しい競争によって機能追加競争となった結果、PCへの負荷が高くなりすぎたり、高機能化の弊害によるトラブルが増えていった時期があった。そんな中でもESET製品は、セキュリティ対策ソフトの基本中の基本ともいえる高い検出率と裏方に徹する軽快な動作に、かたくなにこだわり続けてきたことで、ユーザーからの評価を着実に得てきた。

 そんなESET製品がAndroid端末で、しかも2012年7月25日まで無料で利用できるようになったとなれば、一度試してみる価値はあるだろう。セキュリティ対策をどうしようか迷っているなら、まずは夏までの数カ月間、タダで安全にスマートフォンを使えるチャンスを有効に活用したほうがよさそうだ。


キヤノンITソリューションのサイトからダウンロード

 それでは、実際の使い方を見ていこう。今回の「ESET Mobile Security for Android」は、前述したように発売前のモニター版となっているため、Androidマーケットでは提供されていない。プログラムを入手するためには、キヤノンITソリューションズのサイトからモニターへの申し込みをする必要がある。

 申し込みと言っても、4問ほどのアンケート(利用スマートフォンの機種など)に答え、メールアドレスを登録するだけという簡単なものだ。これで、ダウンロードページが表示されるので、画面に表示された二次元バーコードをスマートフォンで読み取るなどして、アプリをダウンロードする。

 この際、スマートフォンの設定で「提供元不明のアプリのインストールを許可する」設定をする必要がある。若干、手間がかかるが、こういったアプリのインストール方法もあることを覚えておくのも、セキュリティ対策上の意味がありそうだ。

 スマートフォン向けの不正アプリは、Androidマーケットなどで公開されてしまうこともあるが、これ以外にも一般のウェブやメールからの侵入が考えられる。特に、最近ではSMSなどを利用してユーザーを不正サイトに誘導して不正アプリを侵入させるなどの手口も増えつつある。マーケット以外から、apk形式のファイルをアプリとしてインストールする際の手続きを体験しておくことで、セキュリティに対する意識を高めることができるだろう。

キヤノンITソリューションズのウェブページから簡単な登録をすることでモニター版をダウンロード可能ダウンロードは、QRコードを利用して同社のサイトから直接apkファイルをダウンロードする形式
あらかじめ提供元不明のアプリのインストールを許可しておく


丁寧なガイドで順番に設定するだけの初期設定

 インストールが完了したら、アクティベーションを実行する。前述したように、今回の製品は7月25日まで無料で使えるモニター版となっているため、初期設定の画面から「体験版のアクティベーション」をタップして、体験版として製品を有効化する。

アクティベーションを実行。30日間とあるが、7月25日まで利用可能

 画面上はリリース後を考慮して無料期間が「30日間」となっているが、この方法で7月25日まで使えるので心配は無用だ。メールアドレスを入力してアクティベーションを実行しよう。

 アクティベーションが完了すると、端末の保護が開始されるが、そのままではスマートフォンの安全性を完全に確保することができない。「ESET Mobile Security for Android」は、以下のように、ウイルス対策機能に加えて、盗難対策などの機能が搭載されているため、これらの機能を使うためのの初期設定が必要になる。

機能一覧表
ウイルス対策リアルタイム保護ファイルアクセス時に、自動でウイルスチェックを行う
オンデマンドスキャンモバイル機器全体の検査や、特定フォルダの検査ができる
スパム対策ユーザーが定義したルールに基づいて、SMSメッセージやMMSメッセージの受信、電話の着信/発信をブロックできる。非通知着信のブロックも可能
盗難対策SIMカード照合使用するSIMカードを信頼済みとして登録できる。登録されたSIMカード以外を使用すると、端末がロックされる
リモート制御端末を紛失した際に、SMSによって、リモートロック、リモート消去、GPS座標取得が行える
セキュリティ監査バッテリーレベル、インストールしたアプリケーション、空きディスク容量などの状態をチェックできる
パスワード保護アクセス保護したいESET Mobile Securityの機能に、パスワードを設定できる

 もちろん、どの機能を利用するかはユーザーの自由だが、個人的には「セキュリティリスク」として報告された項目に関しては、すべて初期設定で対策しておくことをおすすめしたい。

 具体的には、5項目の設定が必要になる。まずは、「SIM照合有効」と「信頼するSIMカードを定義」だ。これは、端末に装着されたSIMカードで端末をロックするための機能だ。自分のSIMカードを登録しておくことで、万が一、端末からSIMカードを取り外されたり、別のSIMカードが装着された場合に、自動的に端末をロックすることができる。

ESET Mobile Security for Androidの画面。はじめに初期設定が必要になる初期設定に必要な項目がリスクとして表示される。これらを一つずつつぶしていけば安全に端末を使える

 SIMカードのPINロックとセットで利用すれば、端末を紛失した際でも、まずSIMカードのPINロックでカードと端末を保護することができ、万が一、SIMカードを取り外されても、この機能で端末自体を保護できるというわけだ。

 「信頼するSIMカードを定義」をタップ後、現在装着されているSIMカードから情報を登録し、「SIM照合有効」で機能を有効化すれば、直後から端末を保護できるようになる。

信頼するSIMカードを登録することで、これ以外のSIM、もしくはSIMなしで起動した際に画面がロックされる

 なお、この機能は、NTTドコモやSoftBankの端末向けの機能となる。auのスマートフォンは、auICカードロックによって、1台の端末で1つのauICカードしか認識しないようになっている。このため、auのスマートフォンでは、このSIMカード照合機能は有効にならない。

 とは言え、取り外された場合のロックは有効になってほしいので、auユーザーは、モニター版に参加して、この点を評価レポート(http://canon-its.jp/eset/android/index.html#hyoka)で要望としてフィードバックしてほしいところだ。評価レポートに協力すると、抽選で100名に製品版の1年間の使用権がプレゼントされるので、そのほかの気になった点なども報告するといいだろう。

 さて、SIMカード照合機能が有効になったら、続いて「セキュリティパスワード」を登録する。このパスワードは、「ESET Mobile Security for Android」の設定変更やアプリ自体のアンインストール、ロック画面の解除、リモートSMSコマンド(詳細は後述)の実行などの際に必要になるパスワードだ。

 パスワードを入力後、適用先として、「ウイルス対策」や「スパム対策」などの設定を保護したい機能を選択すれば完了だ(標準ではアンインストール防止のみ有効)。

パスワードを設定することで、各機能の不正な変更やアンインストールを防止できる

 続いて、ESETに端末のデバイス管理用の権限を付与する。「ESETをデバイス管理者として設定」をタップすると、Androidのセキュリティ設定にあるデバイス管理者の一覧にESETが登録される。これで、端末のデータ消去など、デバイスの動作をESETから制御できるようになる。

 最後に、信頼するメンバーを定義する。この機能はリモート制御をする際に必要な設定だ。SMSを送信できる端末が別途必要になるため、必須ではないが、設定しないと、端末の紛失時に遠隔操作で端末をロックしたり、データ消去することができないので、登録しておこう。

 自分が所有している別の端末や家族の端末など、いざというときにSMSを送信できる端末の電話番号を登録しておく。これで、このん端末から、リモート制御のためのコマンドを送信することが可能だ。

ESETを管理者として端末に登録することで、アプリから端末を制御可能となるリモート制御で端末をロックしたいときは、SMSを送信する端末をあらかじめ登録しておく


裏方に徹する快速動作

 初期設定が完了したら、あとは基本的に放っておけばいい。ウイルス対策についてはオンデマンドでユーザーがスキャンを実行することもできるが、リアルタイム保護が動作しているため、アプリがインストールされたり、データがダウンロードされたタイミングで自動的にファイルのスキャンが実行される。

初期設定が完了すると最大限のセキュリティで保護されるようになる

 実際に試してみたところ、アプリのインストール後、即座にスキャンが実行された。その動作は、非常にスピーディで、しかも控えめだ。

 「ESET Mobile Security for Android」の起動中はステータスバー左側に常にアイコンが表示されているが、スキャン中もとくにアイコンが変化したり、いちいち余計なメッセージを表示することなく、一瞬にしてスキャンが完了する。もちろん、左上のアイコンを表示しない設定もできる。淡々と仕事をこなし、特に危険がなければユーザーには何も意識させないので、ストレスなく使える印象だ。

 手動のスキャンも高速で、ファイルが380の場合であれば9秒、695のファイルがある端末でも12秒でスキャンが終了するという快速ぶりだ。

 ウイルス定義ファイルの更新も標準では1日に1回、ストレージの空き容量などをチェックする「セキュリティ監査」も24時間おきに自動的に行なわれるが、これもバックグラウンドで静かに実行される。この普段の操作を妨げない裏方への徹しぶりは、さすがESETといったところだ。

普段は左上にアイコンが静かに表示されるだけ(表示もオフにできる)アプリがインストールされると、自動的にスキャンが実行される手動スキャンも高速


あるとないとでは安心感が違うSIMカード認証とリモート制御

 続いて、初期設定で有効にしたSIMカード認証とリモート制御をためしてみた。まずは、SIM認証だが、端末の電源をオフにし、SIMカードを取り外してから、端末を起動してみると、しばらくして「ESET Mobile Security for Android」が起動し、ロック画面が表示された。

 同様に、別のSIMを装着した場合もロック画面が表示されるので、万が一、端末を紛失しても不正使用から端末を保護できるだろう(くれぐれもSIMのPINロックも忘れずに)。

SIMが取り外されたり、差し替えられるとロック画面になる

 一方、リモート制御を実行するには、前述したように初期設定で登録した別の端末が必要になる。今回は、iPhoneを利用したが、SMSが送信できる端末であれば、どのような機種でも利用可能だ。

 リモート制御は、あらかじめ決められたコマンドをメッセージとして送信することで端末を遠隔操作する。たとえば、「eset lock password」(passwordはあらかじめ設定したパスワード)というメッセージを送れば、端末がメッセージを受信した時点で画面がロックされる。

 同様に、「eset wipe password」でリモート消去、「eset find password」でGPS情報から端末の位置を検索できる。位置の検索の場合、SMSの送信後、返答として端末のGPS情報がgoogle mapのURL形式で送られてくるので、これをタップすることで位置がわかるというわけだ。

 もちろん、コマンドを覚えておく必要はあるものの、比較的単純なので、万が一の場合でもあわてずに対処できそうだ。

登録した端末からSMSでコマンドを送信するとリモート制御可能位置情報から端末の場所を表示することもできる

 スマートフォンの場合、その中にはGmailのこれまでの履歴からスケジュール、重要な仕事の情報、友人や取引先の連絡先、パーソナルな情報が、これでもかというほどに詰め込まれている。データがなくなるだけならあきらめもつくが、ここから仕事の情報が外部に漏れたり、SNSでつながっている人に迷惑がかかるような事態になると、社会的な信用が完全に失われることにもなりかねない。

 これまでも、画面ロックなどでスマートフォンの情報をある程度は保護することができたが、SIMカード認証やリモート制御と組み合わせることで、より確実にスマートフォンの情報を保護することができる。この機能が設定されている場合と、ない場合では、安心感に格段の違いがある。一度、設定してしまうと、ない状態でスマートフォンを使うことが不安で仕方がないほどだ。


7月25日まで無料~とりあえず試してみよう

 以上、キヤノンITソリューションズから登場した「ESET Mobile Security for Android」を実際に試してみたが、普段は意識することなく使えて、いざというときに安心という非常に完成度の高いアプリと言えそうだ。

 これまでに紹介した機能のほか、非通知や特定の番号からのSMSやMMS、電話の着信などをブロックできる機能も搭載されており、迷惑SMSなどにも対応できる。

SMSや電話の着信拒否も可能

 繰り返しになるが、本製品は正式発売前のモニター版となる。2012年7月25日まで無料で利用することができるので、4カ月間、とりあえずのセキュリティ対策として試すにはうってつけだ。まだセキュリティアプリを導入していないなら、ダウンロードして使ってみるといいだろう。



関連情報

(清水 理史)

2012/3/12 00:00