特別企画

NECのモバイルルーター「Aterm MR04LN」を持ってMWC取材に出掛けてみた

 筆者は、年に数回、海外のイベント取材に出掛けている。仕事の内容は、海外開催のイベントを取材し、僚誌PC Watchなどに速報記事を書くことが中心。速報記事なので、取材後すぐに記事をまとめ、なるべく早く編集部に送付する必要がある。そのため、現地でのデータ通信手段をいかに確保するか、という点が常に課題となっている。

 現地の通信事業者が販売しているデータ通信可能なプリペイドSIMを購入し、SIMフリーのスマートフォンに装着してテザリングなどを活用しながらデータ通信を行うのが常だ。ただ、スマートフォンでのテザリングはバッテリーの持ちが悪いなど、思ったほど便利ではない場合も少なくない。

 そこで今回、2月下旬にスペイン・バルセロナで開催された、世界最大の携帯電話・携帯通信関連見本市「Mobile World Congress(MWC) 2016」に参加するのに合わせて、SIMロックフリーのLTE/3G対応モバイルルーター「Aterm MR04LN」を活用してみることにした。

NECのSIMロックフリーモバイルルーター「Aterm MR04LN」を利用

 今回、MWCに参加するにあたって、現地で利用するモバイルルーターとして用意したのが、NECプラットフォームズの「Aterm MR04LN」(以下、MR04LN)だ。数多く販売されているモバイルルーターの中からこの製品を選んだのには、いくつか理由がある。

 まず最も大きな理由が、海外での利用を当初より想定し、LTE国際ローミングに対応しているという点だ。今回は、現地から速報記事を日本に送付する必要があり、データ通信環境の確保が不可欠という意味でも、この特徴は非常に心強い。

 LTE国際ローミングは、NTTドコモが提供している国際ローミングサービス「WORLD WING」に対応し、WORLD WINGクラス「クラス5」に対応する機種で利用可能な国と地域をサポートしている。すでに北米、アジア、欧州の主要国を広くカバーしており、「海外1dayパケ」や「海外パケ・ホーダイ」などのパケット定額サービスも適用されるため、簡単かつ料金を気にせずLTEの高速データ通信が可能となる点もうれしい部分だ。

MWC取材時に現地でのデータ通信環境を確保するために持って行った、NECプラットフォームズのモバイルルーター「Aterm MR04LN」
LTE国際ローミング対応で、海外での利用をサポートしている点が、選択した最大の要因
LTE国際ローミングは、NTTドコモの国際ローミングサービス「WORLD WING」に対応し、「WORLD WING クラス5」対応地域で利用可能だ
ヨーロッパも主要国を網羅し、MWCが開催されるスペインでも利用可能となっている
対応プランを利用している場合には、自動的に「海外パケ・ホーダイ」が適用となり、1日最大2980円で容量を気にせず利用できる

 また、2個のSIMスロットを備え、それぞれに装着したSIMを切り替えて利用できる点も便利な部分。海外利用時には、渡航先で入手した異なる事業者のSIMを装着したり、海外SIMと国内SIMを装着するなどして、状況に応じてそれそれを切り替えて使うことで、常に快適なデータ通信環境を確保できる。もちろん、カードスロットはSIMロックフリーとなっているため、microSIMであれば任意のSIMカードを自由に利用できる。

MR04LNは2個のSIMスロットを備え、それぞれにSIMカードを装着して切り替えて利用できる。もちろん双方ともSIMロックフリーだ

 もうひとつ大きな魅力が、5GHz帯域の無線LAN、IEEE 802.11acに対応しているという部分だ。利用場所によっては、帯域に対して利用される対応機器の多さから、2.4GHz帯域の無線LANでは本来の速度が発揮されない場面が増えてきている。それに対し、5GHz帯域の無線LANは帯域に余裕があることから、安定した高速通信が可能。しかもMR04LNは最大867Mbpsの高速通信が行える、802.11ac 2×2通信をサポート。LTE通信部分も、LTE Advanced対応で、最大300Mbpsの高速通信が可能となっているが、802.11ac 2×2ならLTE側の速度も最大限に活用できる(なお、国際ローミング有効時には5GHz帯域の無線LANは利用できない)。

 加えて、サポートするLTEバンドも重要な部分。MR04LNでは、LTEバンドはBand1/3/8/11/17/18/19/21と、比較的多くのバンドをサポートしている。スペインを含む欧州では、LTEバンドとしてBand3/7/20を利用することがほとんどだが、MR04LNはBand3に対応しているため、欧州でも問題なく利用できる可能性が高い。海外に持って行っても、現地通信事業者が利用しているバンドをサポートしていなければ使えないため、この点も重要なポイントとなる。

MR04LNは、5GHz帯域の802.11ac 2×2準拠の無線LANに対応。最大867Mbpsで安定した高速データ通信が可能
MR04LNは、Band1/3/8/11/17/18/19/21と比較的多くのLTEバンドをサポートし、スペインでも問題なく利用できる

 このほかにも、LTE Advanced対応で下り最大300Mbps(注:現行のNTTドコモの300Mbpsには未対応)、上り最大50Mbpsの高速LTE通信に対応している点や、公衆無線LANに接続して共有できる機能、専用クレードル装着でGigabit Ethernet対応Wi-Fiルーターとしても活用できる点、スマートフォン用アプリで簡単に接続状況やバッテリー残量を確認できるといった、さまざまな便利な機能が用意されているという点も、MR04LNを選択した理由となった。

スマートフォン用の専用アプリで、接続状態やバッテリー残量を簡単に確認できる

国際ローミングで到着時から快適データ通信

 2月19日に成田を出発し、スペイン・バルセロナのエル・プラット空港に到着したのは現地時間2月19日の午後9時直前(現地時間)。いつもなら、ここから現地SIMの調達などに向かうが、今回はその必要はない。MR04LNが対応しているLTE国際ローミング機能を利用すれば、到着直後からすぐにデータ通信が可能となる。

 今回は、日本を出発する前に、普段タブレットに装着して使っているサブ回線のNTTドコモのSIMをMR04LNのSIMスロットに装着しておいたので、あとは国際ローミングを有効にするだけで、LTE国際ローミングでのデータ通信が可能となるはずだ。

2月19日午後9時直前(現地時間)にスペイン・バルセロナのエル・プラット空港に到着

 まず、MR04LNの電源を投入し、スマートフォンを接続してスマートフォンのWebブラウザから「http://aterm.me/」または「http://192.168.179.1/」にアクセスし、MR04LNの設定メニューを開く。次に、設定メニューの「基本設定」を選び、その中の「接続先設定(LTE/3G)」の項目に用意されている「国際ローミング」の「使用する」を選択する。すると、MR04LNが国際ローミング設定に変更されるとともに、再起動される。そして、再起動後にしばらく待つと、現地通信事業者の電波をつかみ、データ通信が可能となる。今回は、再起動直後にまず3Gでつながり、さらにしばらく待つとLTEに切り替わってLTE通信が可能となった。

スマートフォンをMR04LNに接続し、ブラウザで「http://aterm.me/」にアクセスして設定メニューを開く
設定メニューを「基本設定」→「接続先設定(LTE/3G)」と進み、下方にある「国際ローミング」を「使用する」に変更
無事国際ローミングでLTEにつながったことをAterm専用アプリで確認

 例年、現地到着後のデータ通信環境の確保に苦労していたことを考えると、この手軽さは非常に嬉しい。土地勘のない場所では、空港から宿泊場所までの移動も不安になることがあるが、到着直後からデータ通信が行えれば、スマートフォンで地図を表示して場所を確認しながら移動できるし、翻訳機能を駆使することで言語の壁も超えられる。土地勘のない海外を旅行する時の安心感を高められるという意味でも、MR04LNのLTE国際ローミング機能はかなり便利に活用できるはずだ。

国内と遜色のない快適さでデータ通信が可能

 現地到着直後からすぐにデータ通信が可能とはいっても、スマートフォンの機能を快適に活用するには、ある程度のデータ通信速度が不可欠。そこで、MR04LNのLTE国際ローミング機能を利用した場合の、スペイン・バルセロナでのデータ通信速度をいくつかの場所で計測してみた。

 速度計測には、Speedtest.netの「SPEEDTEST」アプリを利用し、NTTドコモのスマートフォン「Xperia Z5 SO-01H」をMR04LNに接続して検証した。検証場所は、到着直後のバルセロナ市街地、バルセロナの世界的観光名所「サグラダ・ファミリア」付近、宿泊したアパートの室内、そしてMWC会場となった「Fira Gran Via」の会場ホール内だ。

 まず、到着直後のバルセロナ市街地で速度を計測してみたところ、下り3.69Mbps、上り2.67Mbpsだった。数字としてはそれほど速くは見えないかもしれないが、実際に地図アプリやWebブラウザ、SNSなどを利用する場面で速度の遅さを感じることはほとんどなく、十分快適に利用できた。欧州では、3Gで繋がった場合にはパケット詰まりなどで遅さを感じる場面も多いが、そういったこともなかった。

宿泊地付近で、SPPEDTESTアプリを利用し速度をチェックしたところ、下り3.69Mbps、上り2.67Mbpsを記録

 次に、サグラダ・ファミリア付近。こちらは、現地時間の午前中に計測。午前中とはいえ、周辺には観光客が大勢いたが、野外のため電波状況は非常に良く、下り9.65Mbps、上り4.71Mbpsの速度を記録。これだけの速度があれば、写真のアップロードなども短時間で行え、とても快適。やはり、国際ローミングでもLTEで繋がるという点は、大きな魅力と言える。

バルセロナの観光名所、サグラダ・ファミリアの近くでも検証
下り9.65Mbps、上り4.71Mbpsと、十分な速度を発揮し、快適な通信が行えた

 それに対し、宿泊したアパートの室内では、やや問題が発生。それは、MR04LNを部屋の中心部付近に置くと、LTEではなく3Gで繋がってしまうという点だ。スペインでは、石造りの建物が多数を占めていて、宿泊したアパートも同様だったが、そういった建物は内部では電波が届きにくくなるという欠点がある。ただ、窓際などにMR04LNを置くと、問題なくLTEの電波を掴んで受信が行えた。

 LTEの電波を掴んでしまえば速度は十分に速く、下り6.22Mbps、上り5.85Mbpsの速度を記録した。アパートでは、日本への原稿や写真の送信に活用したが、比較的大容量のデータでも短時間で転送でき、作業効率も高められた。

今回の滞在場所は、右の建物の3階にあるアパート。石造りの建物で、建物内には電波が到達しにくかった
MR04LNを窓際に置くとLTEをつかみ、下り6.22Mbps、上り5.85Mbpsと快適な速度でデータ通信が行えた

 最後に、MWC会場ホール内での検証だ。検証したのは、MWCの開幕初日となる2月22日の午後で、会場内ホール3内で行った。当日は、MWC初日ということもあって、会場内は通路ですれ違うのも難しいほどの大勢の来場者でごった返していた。このように大人数が集まる展示会では、モバイル通信環境が極端に悪くなることが多いが、今回の検証でも、データが流れず「ネットワーク通信の問題」と表示され正常に速度が計測できない場面が続出。この原因は、おそらく2.4GHz帯域のWi-Fi部分にあるものと思われる。

 MR04LNは、海外ローミング設定時には5GHz帯域のWi-Fiが利用できず、2.4GHzのWi-Fiしか使えなくなるが、MWC会場のホール内ではWi-Fiの電波も多く飛び交っているため、帯域を確保できなかったのだろう。この点は少々残念だったが、これは大勢の来場者が詰めかける展示会という性格上、仕方のない部分だ。

 なお、会場には5GHz帯域のフリーWi-Fiが用意されており、そちらを利用した場合には上り、下りとも8Mbps前後でのデータ通信が可能だった。とはいえ、こちらも繋がらなかったり、繋がってもデータが流れないということが頻発していた。このことからも、MWC会場内でのデータ通信環境の悪さが大きく影響していたと言えそうだ。

MWC会場のFira Gran Via。8個以上のホールを抱える巨大な展示会場だ
会場内は非常に多くの来場者でごった返し、通信環境もかなり厳しくなっていた
MWC初日(2月22日)の午後、Fira Gran Viaのホール3内で速度を計測
会場内ではパケットがつまり、速度検証もエラーとなってしまうことが頻発
こちらは、会場に用意されていたフリーWi-Fi(5GHz)での結果。上り、下りとも8Mbps程度の速度だった

 MWC会場内でこそ、データ通信が行えないこともあったが、それ以外の場所ではほぼ問題なくLTEの電波を掴み、十分快適なデータ通信が行えた。また、NTTドコモの国際データローミングは、対象料金プランに契約している限り、自動的に「海外パケ・ホーダイ」という定額プランが適用となり、1日あたり最大2980円で利用できるため、コストが青天井にかかることがない点も安心な部分。過去、渡航のたびに現地の通信環境確保に苦労していたことを考えると、苦労することなく到着直後からLTEの快適な通信環境を確保できるという点は、思っていた以上に魅力的と感じた。

現地大手通信事業者のプリペイドSIMを利用してみた

 スペインでは、空港の売店や街の通信事業者ショップなどで比較的簡単にプリペイドSIMを購入できるため、短期旅行者でもかなり容易にデータ通信環境の確保が可能となっている。加えて、2015年に入ってMVNOでも高速なLTE通信サービスの提供が開始されたことで、より利便性が高まっている。

 もちろん、現地でのSIMの入手は、慣れていないとなかなか難しく、ツアー旅行ではSIMを購入する時間を確保できない場合も多いだろう。ただ今回は、現地の大手通信事業者のプリペイドSIMを入手する機会があったので、MR04LNで利用できるかどうか試してみた。

 なお、MR04LNでは海外ローミングを利用して海外で利用することは可能だが、海外通信事業者のSIMを装着して利用するのはサポート外。今回は、あくまでも筆者の自己責任のもとで使ってみたので、その点はご了承願いたい。

 入手した現地通信事業者のプリペイドSIMは、30日の期間で最大4GB(キャンペーン期間中で通常2GBのところ4GBに増量されていた)のLTEデータ通信が行えるというもので、購入価格は20ユーロ。こちらをMR04LNのSIMスロットに取り付けて利用した。

バルセロナ中心街「エスパーニャ広場」そばの繁華街には、大手通信事業者のショップが点在している
今回、プリペイドSIMを購入した大手通信事業者のショップ。過去何度かこのショップでプリペイドSIMを購入した経験があり、今回もお世話になった
購入したプリペイドSIMのパッケージ。プランごとに異なるパッケージとなっている

 MR04LNで設定する項目は、日本のSIM設定と変わらず、電波を掴むことを確認するとともに、設定メニューからAPNを登録することでデータ通信が可能となる。実際に、APNを設定してMR04LNを再起動すると、問題なくLTEの電波を掴み、データ通信が行えた。

MR04LNはmicro SIM対応なので、micro SIM形状で切り出してMR04LNのSIMカードスロットに装着
今回は、スロット1にVodafone SpainのSIM、スロット2にNTTドコモのSIMを装着して利用することにしていたので、MR04LN起動後に設定メニューにアクセスし、「基本設定」→「接続先設定(LTE/3G)」で対象SIMを「SIM1」に変更
次に、「接続先設定(LTE/3G)」でAPNを登録。「未設定」の項目を選択して必要な情報を入力する

 データ通信が可能となったところで、早速速度をチェック。こちらも、スマートフォンとしてNTTドコモのXperia Z5 SO-01Hを使い、SPEEDTESTアプリを利用してチェックしてみたところ、下り68.12Mbps、上り27.63Mbpsと、非常に高速な速度を確認した。LTE国際ローミングでも十分に快適ではあったが、この速度ならより快適に利用できそうだ。

 また、先ほどLTE国際ローミングでの場合と同じ場所で、現地通信事業者のプリペイドSIMを使った場合の速度も検証してみたので、そちらを紹介する。

 サグラダ・ファミリア付近では、下り39.55Mbps、上り24.98Mbpsを記録。設定直後の検証より下りは遅かったが、もちろん全く不満のない速度だ。

計測時の電波状況が良かったのか、下り68.12Mbps、上り27.63Mbpsと、非常に高速な速度が記録された
サグラダ・ファミリア付近では下り39.55Mbps、上り24.98Mbpsと、快適なスピードを確認

 次に宿泊先のアパート室内。こちらでは、LTE国際ローミングの場合同様に、部屋の中心部付近にMR04LNを置くとLTEの電波を掴めなかったが、窓際に置けば問題なくLTEで接続された。また速度は、下り36.83Mbps、上り27.4Mbpsと、こちらもなかなかの速度だった。

 最後に、MWC会場ホール内。こちらでは、LTE国際ローミング同様に、速度検証エラーが多発し、なかなか速度が計測できなかった。ただ、現地通信事業者のSIMを利用する場合には、国際ローミング機能をオフにでき、5GHz帯域のWi-Fiが利用可能となる。そこで、5GHzのWi-Fiで接続して検証してみたところ、下り0.87Mbps、上り3.54Mbpsとかろうじて速度を計測できた。とはいえ、やはり非常に混雑する展示会会場では、電波状況の悪さが大きく影響し、現地通信事業者のプリペイドSIMでも快適な利用は難しかった。

アパートの窓際でも、下り36.83Mbps、上り27.4Mbpsと、十分な速度を発揮
5GHz帯域のWi-Fiを利用することでかろうじて速度を計測できたが、下り0.87Mbps、上り3.54Mbpsと、かなり遅い速度だった

 ただ、全体的には上り、下りとも余裕のある速度が発揮され、スマートフォンの利用や大容量のデータ転送も非常に快適に利用できた。入手や設定の手間はかかるものの、安価に利用できるという点も現地通信事業者のプリペイドSIMを利用する利点で、もし時間に余裕があるなら十分にお勧めできそうだ。

 なお繰り返しになるが、MR04LNは海外での利用をサポートしているものの、それはNTTドコモの国際ローミングを利用した場合のもので、海外通信事業者のSIM利用をサポートしているわけではない。今回、大手通信事業者のプリペイドSIMは問題なく利用できたが、ほかの国やほかの通信事業者のSIMが利用できるかどうかの保証はないため、あくまでも自己責任で試してもらいたい。

 ところで、MR04LNのバッテリー駆動時間だが、MWC期間中に利用した場合では、朝7時ごろに宿泊先を出発して会場に行き、約5時間後の昼12時ごろにはバッテリー残量が30%程度にまで減ってしまうことが多かった。これは、会場内での電波状況の悪さをはじめ、地下鉄に乗車する場合などの電波の切り替わりの多さ、建造物内での電波の弱さなどが影響しているものと思われる。そのため、別途モバイルバッテリーを利用して充電しながら利用する必要があった。

 なお、MWC終了後にバルセロナ市内を観光した場面では、8時間ほどの経過でバッテリー残量が10%程度にまで減少と、MWC期間中よりも2時間ほど長く使えた。公称駆動時間(Wi-Fiテザリング時で約12時間)より短い点は、現地の電波状況の影響が多分にありそうだが、8時間以上利用できるなら、大きな不満はないだろう。

バルセロナやMWC会場などでの電波状況の悪さもあってか、MR04LNのバッテリー消費は比較的速く、5時間程度で残り30%程度まで減ってしまった。電波状況の悪い場所では、モバイルバッテリーでの充電が不可欠と感じた

Gigabit Ethernet対応クレードルで自宅での活用も便利

 今回、スペイン滞在中に利用したアパートでは、無線LANでのインターネットアクセスが可能だったが、速度は下り、上りとも1Mbps前後の速度しか出ず、ほとんど利用することはなかった。また、残念ながら有線LANも用意されていなかったので、MR04LNに用意されているGigabit Ethernet対応クレードルの出番はほとんどなく、充電台として活用するにとどまった。とはいえ、このクレードルはさまざまな場面での活用が可能だ。

 例えば、自宅に光回線を引いている場合には、そちらを接続しておくことで、モバイル回線を利用することなく高速なインターネット通信が可能となる。その場合でも、最大876Mbpsの通信が可能な802.11ac 2×2準拠の無線LANが利用できるので、光回線の速度も最大限活用可能。最近のスマートフォンやノートPCでは、802.11ac 2×2対応の無線LANを搭載するものが増えていることも、活用の幅を広げてくれるだろう。

今回の滞在先では有線LANがなく、クレードルは充電台としてしか活躍しなかったが、日本の自宅では高速Wi-Fiルーターとして、光回線などに接続して活用できる

海外で便利に利用できるモバイルルーター

 MR04LNは、日本での利用はもちろん、NTTドコモのLTE国際ローミングを活用したり、自己責任ではあるが、現地通信事業者のSIMを装着することによる海外での利用も可能な、万能モバイルルーターであることが、今回実際に利用して十分に確認できた。

 海外で現地通信事業者のSIMを装着して利用するのはサポート外となり、自己責任での利用になるとともに、SIMの購入やAPNの設定などを地力で行う必要があるため、ハードルは高い。そういった意味で、NTTドコモのLTE国際ローミングでデータ通信が行えるという点は、利便性を高めてくれるという点で大きな魅力となる。そして、NTTドコモのLTE国際ローミングの活用と現地通信事業者のSIMの利用のどちらかを、ユーザーが自由に選択できるという点こそ、MR04LNの大きな魅力と言える。

 今回、実際に海外で利用した結果から、海外でのデータ通信のお供として、MR04LNは非常にお勧めの存在と結論づけたい。

(協力:NECプラットフォームズ株式会社)

平澤 寿康