インターネットイニシアティブ(IIJ)が日頃のTCP/IPに関する研究成果を発表する「IIJ Technical WEEK 2003」が11月5日から7日までの3日間、東京都千代田区にあるIIJ本社にて開催されている。2日目となる6日は、IIJ技術研究所のメンバーがそれぞれIPv6の最新動向やIETFでの標準化の動きなどについて語る注目のセッションが行なわれた。
● IPv6の普及を阻害しているのは、アクセスラインとブロードバンドルータ
「IPv6最新事情」と題したセッションでは、日本におけるIPv6のオーソリティのひとりとして有名な山本和彦氏が、なぜIPv6がなかなか一般に普及しないのかという現状について分析を行なった。
まず、IPv6の現状について山本氏は「IPv6の普及シナリオとしては企業ネットワーク、ホームネットワーク、それ以外の新分野の3つが考えられる。そのうち企業ネットワークについては企業がIPv4に満足しており、逆にIPv6になるとファイアウォールでの通信の制御が難しくなることからむしろ困ることが多く、IPv6のメリットがあるかというと個人的には疑問だ」と述べ、IPv6はまずはホームネットワークや新分野から広がっていくのではないかとの予測を示した。
特に山本氏は、新分野における機器の例として、横河電機が開発したIPv6対応のCD試聴機や、同じく家電分野での例としてソニーが実証試験中のIPv6対応「CoCoon」などを挙げた。CD試聴機については、「試聴機でCDが聴かれてから30分以内に同じCDが購入された場合、(購入したCDと)同時に試聴されたが購入されなかったCDと、ショップの会員IDとを関連付けて記録する機能などがあり、POS以上のシステムと言われている」とその優位性を強調した。また、CoCoonについては「実際1カ月お借りしてみたがすごく便利で、台湾出張の際にはWeb経由でサッカーの試合を録画予約したりするなど、これなしでは生きていけないぐらいになってしまった」とのこと。
ただ、このようにIPv6対応機器が着実に増加している一方で、なかなか実際にはIPv6が一般に普及していないのが現状だ。その理由として山本氏はいわゆる「Weakest Link」の法則を持ち出し、現在IPv6の普及を阻害しているWeakest LinkとしてブロードバンドルータとADSLなどアクセスラインのキャリアの2つを挙げた。
このうちブロードバンドルータについては、「現在はまだIPv6とプレフィックスデリゲーションの両方をサポートした製品は少ないが、一方で製品開発の競争は激しいため、1社が両方をサポートする製品を出してくれば他社も追随せざるを得ないだろう」「先日台湾に行った際も、IPv6をしゃべるホームルータの試作品を見かけた(ただし、プレフィックスデリゲーションには未対応だったとのこと)」と、山本氏は比較的な楽観的な見通しを語った。
一方でアクセスラインについては、「今現在IPv6での(商用)サービスが受けられるのはOCNとアッカ・ネットワークスの組み合わせのみ」「すでにADSLのBAS(Broadband Access Server)をIPv6対応にするファームウェアは存在するのに、キャリアがそれをインストールすることに躊躇している」と述べ、IPv6の普及にはユーザーが通信キャリアに対しもっとIPv6対応を求める声を上げていく必要があるとの認識を示していた。
● 会場では「IP*VLAN」のデモも
会場内にはIIJのサービスも展示されており、5日に同社が発表したばかりの、IP-VPN上でレイヤ2のネットワーク伝送を可能にする「IP*VLAN」技術のデモも行なわれていた。実際に同技術を使って構築されたネットワーク上で、クライアントとなったMacからiTunesを使いサーバー上の音楽ファイルを再生するデモが行われたほか、同技術によるネットワークを管理するための管理ツールも展示され、多くの参加者の注目を集めていた。
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「IP*VLAN」デモ用の機材。クライアント側にはOpenBlocksを使用していた
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同時に展示されていた「IIJ SEIL/neu 2FE Plus」(未発表)。同ルータにも近日中に「IP*VLAN」のクライアント機能を実装する予定とのこと
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管理ツールの画面
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関連情報
■URL
IIJ Technical WEEK 2003
http://www.iij.ad.jp/techweek/
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・ IIJ、レイヤ3上でレイヤ2ネットワークを構築可能な新技術を開発(2003/11/05)
( 松林庵洋風 )
2003/11/06 21:51
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