インターネットイニシアティブ(IIJ)が開催した「IIJ Technical WEEK 2003」で6日、IIJ技術研究所の島慶一氏が「IPv6モビリティ技術と標準化動向」と題して講演。Mobile IPv6と、複数のアドレスを持つネットワーク全体に移動透過性を持たせる「NEMO(Network Mobility)」の標準化動向について最新の状況を解説した。
● Mobile IPv6は近日中にRFC発行へ
まずMobile IPv6については、ここ1、2年はRFC化に向けたラストコール寸前で標準化作業が足踏みする状況が続いてきたが、今年7月にMobile IPv6のドラフト第24版がようやくIESG(Internet Engineering Steering Group)によってProposed Standard化の承認を受けたという。現在はRFC Editorによる編集作業の処理待ち状態ということなので、近日中にはMobile IPv6が正式にRFCとして発行される目処が立ったと言えよう。ちなみにこの第24版(IETFでは初版は第0版として数えるので、一般的には第25版相当)という数字は、島氏によれば「DHCPv6と並ぶ長寿ドラフト」だったそうだ。いかにMobile IPv6が難産だったかがうかがえる。
このため、IETFのMobile IPv6 WGにおける議論の中心は、現在はMobile IPv6ネットワークをSNMP等で管理する際に使われる「Mobile IPv6 MIB(Management Information Base)」や、遠隔テスト環境、ホームエージェントの多重化などといった方向に向かっているとのこと。また、今年3月には、従来1つのWGでMobile IPv4/IPv6等の話題を一括して扱っていた体制を分割することがIETFに提案され、7月の会合からはMobile IPv4とMobile IPv6のWGが別れたのに加え、Mobile IP環境における高速ハンドオーバーや階層型Mobile IPなどの仕様を策定する「MIPSHOP(MIPv6 Signaling and Handoff Optimization)BOF」が開催されたそうだ。
● Mobile IPv6の対応機器の登場に期待
一方のNEMOだが、島氏によれば、こちらは今年6月に最初のドラフトが公開され、現在は9月に公開された第1版が最新版となっているということで、まだ歴史は浅い。Mobile IPv6では個々の端末がそれぞれホームエージェントと通信を行ない移動透過性を確保するのに対し、NEMOでは移動するネットワーク全体を管理するルータがホームエージェントと通信し同様の透過性を確保するというのが大きな違いだ。
NEMO WGでは主に、Mobile IPv6で実装されている「移動中の経路最適化」機能をどのようにNEMOで規定するか(現在はホームエージェントを経由するトンネルモードしか規定されていない)といった問題や、マルチホームのネットワークをどう取り扱うかなどについて議論が行なわれているという。
島氏は最後にMobile IPv6やNEMOの実装状況について触れ、「Mobile IPv6はほぼ仕様が固まったので、そろそろ本格的に実装を開始してもいい時期に来たのではないか」と述べ、今後Mobile IPv6に対応した機器が多数登場することに期待する姿勢を示した。NEMOについては、まだ標準化が始まったばかりということもあってか、一般に公開されたレベルの実装は今のところ存在しないため(研究レベルではCisco Systemsなどが実装した例がある)、今後さらに議論を行なっていく必要があることを示しつつ講演を締めくくった。
関連情報
■URL
IIJ Technical WEEK 2003
http://www.iij.ad.jp/techweek/
■関連記事
・ IIJ技術研究所の山本和彦氏が語るIPv6が普及しない理由(2003/11/06)
( 松林庵洋風 )
2003/11/07 13:59
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