インターネットイニシアティブ(IIJ)が開催した「IIJ Technical WEEK 2003」で6日、IIJ技術研究所メンバーでAuto-ID Lab Japanの研究開発担当副所長を兼任している宇夫陽次朗氏が「Auto-ID技術解説」と題して講演。Auto-IDの概要と、インターネットに関係する部分のプロトコルの標準化動向について語った。
● Auto-IDの“名前解決”はDNSとほぼ同じ仕組みで
Auto-IDといえば、10月末に新たな標準化推進組織としてEPC globalが設立されたばかりだが、宇夫氏によれば、これに伴いAuto-IDで利用するコード体系であるEPC(Electronic Product Code)の構造にも若干の変更が加えられたという。具体的には、従来Auto-IDではUI(Universal Identifier)と呼ばれる構造のデータ体系が採用される予定だったのが、既存のデータ体系を維持・流用したい企業側からの要望が強いために、現在はUIに加えてGTIN(Global Trade Item Number)、SSCC(Serial Shipping Container Code)、GLN(Global Location Number)など複数のデータ体系をサポートする構造に変更。2ないしは8bitのヘッダによってどのデータ体系かを区別するシステムとなったとのことだ。
宇夫氏はまた、Auto-IDを利用するために構成される「EPCネットワーク」の中で、リーダ/ライタなどで取得したIDから関連する情報を探し出すためのシステムである「ONS(Object Name Service)」について特に詳細な説明を行なった。基本的には、IDを得たアプリケーション等が専用APIを使ってAuto-IDリゾルバに情報を渡し、そのリゾルバが内部のDBもしくは外部のネームサービスにクエリーを出して情報を取得。その結果を呼び出し元のアプリケーション等に返すというかたちになっており、現在のインターネットにおけるDNSの仕組みとほぼ同じ構造となっている。
● DNSベースのプロトコルを補完する“Webサービス”も検討
現在は外部へのクエリーを行なうためのプロトコルとして、DNSをベースとした「ONS Version 1.0」が規定されている。このプロトコルでは、EPCをURI符号化した上でFQDN(Fully Qualified Domain Name)形式に変換、従来のDNS同様にクエリーを飛ばしてDNSからNAPTRレコードを受け取る構造になっているという。ただ、宇夫氏によれば、このプロトコルではシリアルナンバーまで含めた名前解決を行なうことは規定されていない(商品1個1個につき別々の情報を登録することはできない)。果たしてそこまで踏み込むかどうか議論が行なわれ、10月の会合で一応、シリアルナンバー単位での名前解決を行なえるようにする方向でコンセンサスが得られたという。
また、この方式には「EPC番号空間の保持者(具体的には製造者)しかIDに関する情報を登録できない」という限界がある。実際には、IDが付いた商品を出荷した後も流通業者や小売店などが個別にIDに関連する情報を追加する必要があるのに、今の仕組みではそれが不可能になっているわけだ。これに対しても現在いくつか解決策が検討されているとしており、宇夫氏は「DNSを拡張しての解決は難しそうなので、EPCIS(EPC Information Service)レイヤでの解決が現実的ではないか」との見解を示した。
ちなみにEPCISは、Webサービスに基づいたフレームワークで実現される、IDに関する具体的な情報を提供するサービスとして現在検討が進められているもので、「2004年1月にドラフトを発行できるよう現在議論中」(宇夫氏)だという。
宇夫氏は最後に、現在世界各地で行なわれているAuto-IDの実証実験の内容を紹介しつつ、「Auto-IDは、実在する物をインターネット上で扱うためのデバイスであり、インターネットから見たら1つのアプリケーションだ」と述べ、Auto-IDによりインターネットが実世界を意識したアプリケーション分野に展開できる可能性を強調していた。
関連情報
■URL
IIJ Technical WEEK 2003
http://www.iij.ad.jp/techweek/
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・ バーコードの国際機関がAuto-IDを実用化へ(2003/10/27)
( 松林庵洋風 )
2003/11/07 16:49
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