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「IPv6への貢献が受賞の理由」、村井教授がポステル賞の受賞記念講演


慶應義塾大学の村井純教授
 パシフィコ横浜で開催中の「Internet Week 2005」で7日、IPv6を中心としたカンファレンス「IPv6 Technical Summit 2005」のセッションとして、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授による講演が行なわれた。講演は、村井氏が8月に受賞した2005年ポステル賞(Jonathan Postel Service Award)の受賞記念講演として、村井教授のこれまでの活動を振り返りつつ、IPv6など今後のインターネットの方向性について語る内容となった。

 ポステル賞は、1998年に急逝したジョン・ポステル氏にちなんで、ISOCが1999年に設置した賞で、インターネットに多大な貢献をした人に与えられる。村井氏はポステル賞の受賞理由について、「アジアのインターネットへの貢献というのは2番目に書かれていた理由で、1番目に書かれていたのはIPv6の開発とそのリーダーシップに対しての貢献だった」として、ポステル賞はIPv6への貢献により貰った賞だと語った。

 ポステル氏との関係については、「彼と初めて会ったのは、日本のインターネットは自分に委任してくれという話をしたとき。インターネットは、当初は米国以外で使うことを想定していなかったので、そこにグローバルな視点を持ち込むのが自分たちの役割だった。ポステルや当時のインターネットのリーダーたちは、そのことをよくわかってくれた」と出会った当時の状況を振り返った。

 村井氏は「こうした話をしていると、講演時間の1時間では足りないので」と語り、過去にInternet Weekの講演で使用した資料などを参照しながら、これまでにどのようなことが話題となり、今後は何が課題となるのかという点について話を進めた。

 村井氏が最初に紹介したのは1999年の講演の資料で、今後はWDMの登場により広帯域な回線が利用できるという内容のもの。村井氏は、「この時点で、太い回線が何本も使えるようになるので、東京と大阪を何度も折り返せば遅延の実験もできる、といったことを書いている。当時は遅延のことを気にするアプリケーションはほとんどなかったが、今では重要な課題になってきている」と語った。

 次に紹介したのはIPv6についての講演で、フリービットが2万台のIP電話をIPv6ベースで導入したという事例を示し、「(フリービットの石田宏樹代表取締役は)IPv6はコストを削減するためのツールと言っていた。これは、電話機がそれぞれIPv6のグローバルアドレスを使うことで、NATのような問題に影響されず、管理が楽になるのでコストが下がるということ」と語り、これからはコストの観点からIPv6の導入が検討材料になってくるだろうと指摘した。

 また、このフリービットの事例では、IPv6をオーバーレイネットワークとして利用しているところも注目に値するという。村井氏は、「これまでは、PCのネットワークカードにIPアドレスが割り振られて通信を行なってきたが、IPv6になると個々の機器やアプリケーションがアドレスを持って勝手に通信をするようになるのではないか」として、今後はこうしたアドレスの管理方法などを考えていく必要があるとした。


 2002年に名古屋で行なったインターネットITS実験の紹介では、タクシー1,600台のセンサー情報をインターネットに接続し、どこの交差点でタイヤが滑りやすいといったデータを共有することで、公共の役に立つことが実感できたと語った。また、この際に問題となるのは匿名性で、「自分のデータを利用してもいいが、誰の情報であるかは特定されないように保証してほしい」という要求を満たす、匿名性の技術の開発が重要だとした。

 また、2004年に行なったUHF帯を利用したRFIDの実験などでは、周波数を今後どのように利用していくのか、割り当てていくのかといった問題と向き合うことになり、技術者や行政は大事な体験をしたと指摘。周波数の割り当てについては、技術的な問題と社会性・公共性の両方を理解できる人材が必要で、そのためにこの分野で議論が活発に行なわれていることは、将来に向けてたいへん良いことだと語った。

 世界規模の話としては、2001年にニューヨークで起きた同時多発テロの際に村井氏も米国に滞在していたエピソードを紹介。米国全土の空港が閉鎖された模様などを写真で紹介した後、「これがインターネットで起こったら、つまり米国が閉鎖されたらインターネットは動くのか」といった課題を挙げ、2006年はロシアを経由してヨーロッパと接続する回線の構築を進めていきたいとした。

 また、日本と米国を10Gbpsの回線で結び、iSCSIにより海の向こうのハードディスクにアクセスするといった実験を紹介し、「地球全体がコンピュータとして動き、その足回りをインターネットが担う。そこに向けて私たちはこれまで準備をしてきたのではないかと思う。この新しい環境の中で、新しい世界をみなさんと一緒に作っていくことを楽しみにしている」と語り、講演を締めくくった。


関連情報

URL
  Internet Week 2005
  http://www.internetweek.jp/

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( 三柳英樹 )
2005/12/08 16:57

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