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NTT和田社長、“大転換期”のブロードバンド戦略を語る


 東京国際フォーラムで開催中の「NTTグループ コミュニケーションEXPO」にて20日、基調講演「NTTがめざすブロードバンド&ユビキタス社会」が行なわれた。NTT(日本電信電話)代表取締役社長 和田紀夫氏が、グループで取り組む次世代ネットワーク戦略について語った。


3つめの変革期を迎えるNTT

 演壇に登場した和田氏は、まず日本の通信産業を取り巻く現状を説明。「明治2年の電報から始まった通信産業はその後、音声通話へ主流を移しつつ、今新たにブロードバンドの時代を迎えている」と語った。


NTT(日本電信電話)代表取締役社長 和田紀夫氏 2000年ごろからブロードバンドの普及が進む

 国内通信産業の中心的存在であるNTTも、その間に3つの転換期を迎えたという。「1つめは1985年のNTT民営化と通信自由化、2つめは1999年のNTTグループ再編。そして3つめは、今現在巻き起こっている“情報通信の大転換”だ」と和田氏は解説。光ファイバ系の常時接続サービスや第3世代携帯電話の普及といったインフラ面に加え、ブログやSNS、アフィリエイトといった新種のアプリケーションサービスが勃興しつつある現在を、NTTにとっての大きな節目と捉えている。

 また世界に目を向けた場合でも、通信インフラのIP化、ブロードバンド化が大きな潮流になりつつあると言及。「米国ではブロードバンド関係の規制緩和が進み、地域通信会社が光ネットワークへの移行を模索中だ。また米国政府機関のネットワークは、2008年6月までにIPv6へ対応することを目指しており、中国でも北京オリンピックを見据えたIPv6化を推進している」と海外のトピックを紹介した。

 通信と放送の融合も、世界各国の大きな話題だ。米・仏ではクワトロプレイ(通信会社が、電話・高速インターネット・映像配信・移動通信を合計した4種類のサービスを一括提供すること)に向けた取り組みが始まっており、報道メディアと新興のネット企業が提携する事例も米国を中心に増えていると和田氏は説明する。


オープンな次世代ネットワークを構築

次世代ネットワークのロードマップ
 NTTグループではこれらの情勢を踏まえた中期経営戦略(11月発表)に基づき、グループの中核的インフラとなる次世代ネットワークの開発に着手している。和田社長が「固定系と移動系のいいとこどりを狙う」と話すように、IPをベースとした柔軟性の高いネットワーク設計がなされる見込みだ。

 さらに、ネットワークの“オープン性”にも注力するという。「接続仕様を明確に開示し、さまざまな企業がサービス参入しやすいようにしなければならない。またセキュリティの確保の面でも各企業やISPなどと協力していきたい」と和田氏は説明。積極的な業務提携も視野に入れる。

 次世代ネットワークの開発ロードマップでは、まず2006年下期にはフィールドテストをスタート。翌2007年下期には既存IP網に重畳する形でのサービスを一部開始させる。固定系と移動系のネットワークのシームレス化も、2008年以降に実現したいという。

 この固定系と移動系のシームレス化は、固定電話と移動電話を融合させようという概念「FMC(Fixed-Mobile Convergence)」でも要求される機能の1つ。和田氏は「すでにNTTドコモから、無線LAN一体型携帯電話を法人向けに発売するほか、FOMAと固定電話間のテレビ電話サービスを開始するといった具体的取り組みも始めている。今度も(固定系・移動系サービスを保有する)グループならではのトータルソリューション能力を活かしていきたい」との積極的な姿勢をアピールした。

 通信と放送の融合については「著作権処理などの諸課題はあるが、技術面での解決は可能になっている。権利者の意気込みさえあれば、早晩にも問題は解決できるだろう」と、和田氏は明るい見通しを示した。2006年4月開始予定の携帯機器向けデジタル放送「ワンセグ」や、地上デジタル放送をIPネットワーク向けに再送信する取り組みについても積極的に関わっていくという。


社会的問題を克服できるブロードバンドへ

社会的問題への対応も次世代ネットワークには要求されるという
 なお和田氏は講演中、将来的なネットワークの在り方について「生産や流通システムの改善をはじめとした経済的課題の解決だけでなく、少子高齢化や福祉、介護などの社会的問題の解消に配慮せねばならない」とも解説。ネットワークに対し、社会生活を支える重要な基盤としての役割が求められるとの見解を示した。

 すでに具体的な研究・開発も進めている。地方都市における癌検診のスピーディー化を促進する遠隔医療システムや、地図作成業務を在宅勤務者間で行なう「バーチャルファクトリ」などの取り組みを紹介。医療面や新規雇用の創出といった点でも、情報通信技術が寄与できる可能性を示唆している。

 最後に和田氏は「NTTグループの総力をもって新サービスの推進に努めるが、お客様の協力なしにはおぼつかないだろう。今後とも皆様のご支援をお願いしたい」と挨拶し、講演を締めくくった。


遠隔医療への応用も進むブロードバンド “曲げ”に強い光ファイバーコードも紹介された

関連情報

URL
  NTTグループ コミュニケーションEXPO
  http://www.regi-expo2005.jp/
  NTT
  http://www.ntt.co.jp/

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( 森田秀一 )
2005/12/20 20:28

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