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「規制はしたくないが対処も必要」ネット運用側から見るトラフィック動向


 「Interop 2006」で7日、JANOG(Japan Network Opetators' Group)による「ユーザの動向から考えるISPのトラフィックマネージメント」と題したセッションが行なわれた。JANOGは、ネットワークの運用に関わる技術紹介や議論を目的としたグループで、セッションではP2Pやストリーミングによるトラフィックの増大などを、運用面からどのように捉えるべきかといった議論が交わされた。


Windows Updateの適用タイミングで日本だけトラフィックが急減

(左から)NECの川村聖一氏、NTTコミュニケーションズの水越一郎氏、シスコシステムズの河野美也氏
 シスコシステムズの河野美也氏は最近の印象的な事例として、2006年1月7日未明に日本のインターネットトラフィックが急激に低下した現象を紹介した。この現象は、1月6日にマイクロソフトがセキュリティ修正プログラム(パッチ)をリリースし、自動アップデートを設定している多くのPCが1月7日に一斉にリブートした結果、WinnyなどのP2Pファイル交換ソフトによるトラフィックが減少したためではないかと推測されている。

 また、この現象は日本に特有のもので、海外では同様の現象がほとんど見られなかったという。ヨーロッパなどでも、P2Pによるトラフィックが大半を占めているという状況が観測されているが、Windows Updateによってトラフィックが減少したという事例はほとんどなく、なぜ日本だけでこうした現象が起きたのかはよくわからないとした。

 こうしたP2Pやストリーミングなどによるトラフィックの増加もあり、ISP側でもトラフィックを制御するケースが多くなってきている。河野氏はトラフィック制御の手法について、現在ではパケットの内容を判断してユーザー単位で細かく制御することも可能となっているが、一方ではバックボーンでこうした制御をしようとすると、処理性能がトラフィックの伸びに追い付かなくなるという問題点を指摘した。

 また、こうしたトラフィック制御については、「通信事業者はNet Neutrality(ネットワークの中立性)を保つべきだ」という観点から多くの議論が行なわれていると説明。「通信事業者はトラフィックに余計な制御をするべきでない」という考え方に対して、「安全性やサービスの品質を確保し、ユーザー間の公平性を保つ観点からトラフィックの制御は必要だ」という考え方もあり、この2つの考え方はどちらも重要なものだとした。

 また、ネットワークの中立性という観点では、通信事業者がトラフィックを制御できる立場を利用すれば、例えば自社のコンテンツサービスへのトラフィックだけを有利に扱うといったことも可能で、ユーザーの選択の自由や新たなサービスの登場を阻害することに繋がりかねないといった議論もある。これに対して、通信事業者の立場としては、インフラ増強のコストを回収するためにはインフラとコンテンツの統合を進めたいという考えもあり、こうした議論が、日本でも「インフラただ乗り論」として話題になった、インフラコストを誰が負担するのかという話にもつながっていくという。

 河野氏は、こうした議論については「実際には通信事業者もコンテンツ事業者もそれほど極端なことを言っているわけではないのに、イデオロギーだけが先走っているのではないか」と感じているという。今後のインターネットについては、自由度の高いインターネットの良さは失いたくないが、セキュリティやトラフィック増大に対処するために何らかの制御が必要となっている現状があるとして、トラフィックの制御や規制については「やるかやらないかではなく、どこまで、どのようにやるかが問題だ」と語った。


流れるパケットに罪はないが、現実問題として対処も必要

 セッションの参加者からも、「ネットワーク機器に高度な制御の仕組みを搭載する方向よりも、さらに高速化するための技術開発に取り組む方が優先ではないのか」といった意見や、「アプリケーション側でも無駄なパケットを減らすための努力をすべき」「現状のサービス料金で十分な帯域を確保できるのか」など、さまざまな観点からの意見が挙がった。

 NTTコミュニケーションズの水越一郎氏は、「通信事業者としては、トラフィックが増えることは本来は喜ぶべきことで、できれば制御や規制もしない方がいい。流れるパケットに罪はない。しかし、トラフィックの増大にどう対応するのか、特定のユーザーが帯域を占有してしまっていいのか、コストはどこで回収するのかといった現実問題には対処していかなければならない」と、ネットワークを運用していく側としてのこうした問題への対処の難しさを語った。

 NECの川村聖一氏は、ISPのトラフィック事情について実験的にトラフィックを分析した結果を紹介。調査した範囲では、流れているパケットのうち最も多いのはP2Pによるもので、2位がWebアクセス、3位がストリーミングという結果になったという。また、割合としてはP2PとWebがかなりの部分を占めているが、ストリーミングによるトラフィックが最近になって急増していることも確認できたという。

 川村氏は、こうしたデータを見ることで一般ユーザーのインターネット使用にどのような傾向があるかを知ることができ、ネットワークへの設備投資や強化すべき点の参考になると説明。ISPがトラフィックを制限しようとすると、パケットの中を見ることが通信の秘密に触れるのではないかという問題もあるが、こうした分析をツールとして利用し、トラフィックを効率的かつフェアに保つ努力は認められてもいいのではないかと語った。


関連情報

URL
  Interop Tokyo 2006
  http://www.interop.jp/
  JANOG
  http://www.janog.gr.jp/

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( 三柳英樹 )
2006/06/09 14:42

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