「Interop Tokyo 2006」で9日、コンファレンス「VoIPの進化とIPコラボレーション」が開催。Skype Technologies S.A.で日本マーケット開発マネージャ兼開発者支援を担当する岩田真一氏がSkpeの概要とその魅力について講演を行なった。
● P2Pにより低コストで運営が可能。セキュリティの高さも特徴
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Skype Technologies S.A.の日本マーケット開発マネージャ兼開発者支援を担当する岩田真一氏
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岩田氏は冒頭、ロータスやマイクロソフトなどをソフトウェアのエンジニアとして渡り歩いてきた自身の経歴を紹介。そうした背景から「自分としてはSkypeを常にソフトの視点で見ているが、ネットワークや通信会社の人は電話として見ている側面もある」とし、「Skypeとは実際のところ何なのかについてお話していきたい」と語った。
岩田氏は始めにSkypeの概要を紹介。ユーザー数はすでに全世界で1億人を突破し、新規ユーザーも1日に20万人ペースで増加、日本でも約400万の登録ユーザーが存在するという。さらに2006年5月にSkypeの同時接続ユーザーが650万を突破したという事例を紹介し、「サーバー型のサービスであればユーザー数の増加に合わせて設備の対策が必要だが、P2PのSkypeは何億人が同時に使っても問題ない」とのメリットを示した。
こうした設備コストの低さはSkypeの武器でもあるという。岩田氏は「米eBayがSkype買収を発表した時に『設備が何もないSkypeに何千億もの買収価値があるのか』との指摘があったが、Skypeは回線はインターネットを使い、ハードウェア設備もユーザーのPC。を使うSkypeは、そもそも設備が最小限で済む」との理由を示した。
IP技術を利用した他の電話サービスとの違いとして、岩田氏はまずIP電話を例に挙げて説明。「IP電話は既存の電話サービスの裏側がIP化したもので、ユーザーにとっては今までの電話と変化はない」とした上で、「SkypeはPCで使うソフトウェアであり、電話というよりもIMの派生」との考えを示した。
また、他のIMソフトと比較しても、P2P技術を駆使することで会社として設備やリソースをほとんどもたない運営が可能な点を強調。そうした低コストゆえに無料での提供が可能であり、広告収入に頼らない運営が可能と説明。「よく質問されるが、Skypeは一般加入電話と発着信できるSkypeInとSkypeOutによって収益を上げている」と補足した。
また、Skypeの音声通話やチャット、転送はすべて256bitのAESで暗号化されているためにセキュリティ面でも優れていると指摘。「社内では重要な資料はメールではなくスカイプで送るようにしている」と語った。
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Skypeの普及状況
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IP電話との違い
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P2P技術やセキュリティの高さが特徴
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Skypeの機能一覧。¥マークが有料サービス
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● 無料通話により生まれた新たなコミュニケーション
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「つなぎっぱなし」で生まれる新たなコミュニケーション
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無料で通話できるSkypeの登場により、従来の電話では常識だった「話し終わったら切る」という概念が必要なくなり、「いつでも好きな時に話しかけられるという新しいコミュニケーションが生まれた」と岩田氏は指摘。その1つの例としてSkypeの勤務体制の一部を紹介した。
岩田氏によれば、岩田氏がSkypeに入社した2005年8月には、Skypeには全員が集まるオフィスが存在しなかったという。岩田氏は「入社直後、どこに出社していいのかわからず場所を聞いたら『Skypeにログインしなさい』と言われた。Skypeを使えば無料でいつでも話しかけられ、会議機能を使ってすぐにプロジェクトの話をすることもできる」とコメント。「通常の会議で必要な会議室予約や出欠のやり取りといった手間もなくなり、より多くのプロジェクトを進行できる」とのメリットを示した。
また、「ロンドンで発生したテロ事件でも、Skypeが唯一の通信手段だったということでSkypeのWebサイトに感謝の声が寄せられたこともある」と、通信手段のバックアップという観点も指摘。愛・地球博で実証実験が行なわれた無線LANアクセスポイント搭載バルーンを紹介し、「こうした設備と自家発電などで電源が確保できれば、Skypeで通話できる」とした。
Skypeで特徴的なブックマーク機能も紹介。「永遠に続くチャット」とこの機能を表現した岩田氏は、「スカイプのブックマーク機能を使えば、自分が寝ている間に会議が行なわれていても、自分がPCを立ち上げるとその履歴が送られてくる」と説明し、「今ではメールより重宝しているツール」と語った。
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通信手段のバックアップという側面も
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岩田氏が「永遠に続くチャット」と呼ぶブックマーク機能
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● API公開や対応機器の拡充でさらに広がるSkypeの世界
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Skypeを内蔵したNETGEARの無線LAN携帯型電話機
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API公開によってSkype対応機器も広がりを見せている。電話機のボタン操作でSkypeが通話できるハンドセットなどの製品が続々登場しているほか、ファイル転送やチャット機能を制限して音声通話だけ利用できるようにする、Skypeでグループ着信が可能になるマイスターズコーポレーションの製品など、企業向け製品の展開も進んでいるとした。
現状はPCが中心のSkypeだが、米国ではNETGEARがSkypeを内蔵した無線LAN携帯電話端末を発表するなど、PCレスのSkype環境も進みつつある。岩田氏は「SkypeInやSkypeOutを使えば一般加入電話との発着信も可能になる。こうした端末が新たな市場や使われ方につながるのではないか」と期待を示した。
Skype 2.5で実装された「Skypecast」も紹介。現在はベータ版ながら最大100人まで参加できる電話会議を開くことができる機能で、「管理者は全員を黙らせる、他人を中傷した人を退出させるといった進行が可能で、参加者も発言したい時にマイクを要求できる(岩田氏)」。今後は会議の内容を録音して公開する機能などを実装予定のほか、「企業が有料セミナーを開催できるような決済機能も実装したい」。
最後に岩田氏は「自分はエンジニア出身なので」と断った上で、「Skypeを電話として見る人からは、通信の安定性などが求められるが、そもそもSkypeはいい加減なもの」と発言。「私も通話が切れては困るような大事な話はSkypeではなく電話を使う」とした上で、「たまに切れたり遅れたりもするが、それでも何時間も無料で話せるのがSkype。電話とは考え方の違う、1つのアプリケーションだと思って欲しい」と語った。
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ベータ版が公開されたSkypecast
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Skypecastで今後実装予定の機能
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関連情報
■URL
Interop Tokyo 2006
http://www.interop.jp/
Skype
http://www.skype.co.jp/
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( 甲斐祐樹 )
2006/06/09 20:52
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