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文化庁長官官房の吉田大輔審議官
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著作権法改正案の骨子
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日本音楽著作権協会(JASRAC)は28日、著作権の将来像を模索することを目的としたイベント「JASRACシンポジウム」を開催した。基調講演では、文化庁長官官房の吉田大輔審議官が登壇し、臨時国会に提出中の著作権法改正案の骨子を説明した。
吉田氏によれば、著作権法改正案は大きく分けて、1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、2)権利制限に関する規定の見直し・追加、3)権利保護の実効性の強化――という3つの内容を見直すものであるという。
まず、1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信では、IPマルチキャスト放送で放送事業者の番組を同時再送信するために、実演家とレコード製作者の送信可能化権を制限する。現行の著作権法では、実演家とレコード製作者に許諾権である送信可能化権が与えられているため、例えば、IPマルチキャスト放送事業者が実演やレコードの内容を同時再送信する場合、事前に実演家やレコード製作者の許諾を得る必要がある。
著作権法改正案では、有線放送と同様に取り扱うという考えを踏まえ、現在与えられている送信可能化権を報酬請求権に改めることが適切であるとした。その一方、有線放送で放送を同時再送信する場合に関しては、報酬請求権を実演家とレコード製作者に付与することが盛り込まれた。
2)権利制限に関する規定の見直し・追加では、視覚障害者に対する「録音図書」をインターネットを通じて送信するサービスや、特許審査および薬事行政手続きにおける文献の複製などを円滑に行なうために規制緩和を図る。また、無線LANが普及していることから、同一構内における無線送信を、公衆送信の定義から除外した。
3)権利保護の実効性の強化では、著作権侵害品の輸出行為について、著作権法の“みなし侵害行為”に追加。現行法では、輸入行為のみが“みなし侵害行為”とされている。さらに、著作権侵害行為の懲役刑を10年以下、罰金刑を1,000万円以下までに上限を引き上げるほか、法人の侵害行為に対する罰金刑も、従来の1億5,000万円から3億円に引き上げるという。
なお、著作権法改正案のうち、1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信については、IPマルチキャスト放送の同時再送信サービスが12月からスタートするため、改正案公布から20日後に施行するようになっている。そのほかの改正事項は、2007年7月1日に施行する予定としている。
● 「私的録音録画補償金制度」来年にかけて権利者に対する補償措置を議論
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私的録音録画補償金制度や著作権保護期間の延長に関する検討も行なわれている
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著作権の今後の課題としては、「私的録音録画補償金制度」の見直しを挙げる。文化審議会著作権分科会に設立された「私的録音録画小委員会」で見直しを検討している同制度では、主に1)許諾を得ずに録音録画を行ないうる範囲の見直し、2)権利者に対する補償措置の必要性、3)補償金制度の制度設計――という3つの段階で議論が進んでいるという。
まず、1)許諾を得ずに録音録画を行ないうる範囲の見直しでは、自分が購入したCD/DVDや、他人やレンタル店から借りたCD/DVD、海賊版のCD/DVDなど、さまざまな録音録画ソースのうち、「私的録音録画」として著作者の許諾を得ないで複製できる範囲を明確にすることが狙いだ。一部報道では、違法サイトからのダウンロード行為を権利侵害とみなすとともに罰則の適用もあると報じられたが、これについては、「まだ議論の途上にある。罰則についても、慎重な検討が必要」と話した。
私的録音録画が認められる範囲が見直された後には、権利者に対する補償措置の必要性を議論する。これは、著作物と著作権保護技術の関係で、権利者に対する補償措置を行なうかどうかを検討するというものだ。例えば、著作権保護技術で全く複製ができない状態であれば補償措置の必要性はないが、著作権保護技術が比較的緩やかで、ある程度コピーが可能であれば補償措置が必要という議論が出ているという。
さらに、この議論を踏まえて、補償措置が必要と判断された場合は、補償金制度の制度設計が必要になるとした。吉田氏は、「今年から来年にかけて、権利者に対する補償措置の必要性に関する議論が行なわれ、来年には制度設計に進む流れにある」と語った。
● 「死後50年」か「死後70年」か、著作権の保護期間延長も議論の対象
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IPマルチキャスト放送による「自主放送」に関する法的枠組
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また、著作権の保護期間を現在の「死後50年」から延長する検討も進められている。著作権の保護期間延長については、クリエーターや著作権に関わる事業者などが発足した「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」が11月8日、文化庁に対して、著作権法改正前に著作権保護期間の延長問題に十分な議論を尽くすよう要望書を提出するなど、広範な議論が交わされている。
吉田氏は、「2003年には、映画の著作権保護期間を従来の50年から70年に延長した。今回は、著作物一般の保護期間をどうするかということが議論の対象。これは我が国に大きな環境の変化をもたらす重大な問題」とコメント。保護期間の延長派は、保護期間が「死後70年」のEUや米国などとの国際協調を訴える一方で、延長反対派は、自由に著作物を使えない期間が長くなることで、国民の生活にどのような影響が出るかを考える必要性を訴えているという。
そのほか、IPマルチキャスト放送事業者が独自コンテンツを配信する「自主放送」についての法的枠組の議論も進められている。この問題を検討する著作権分科会では、自主放送を行なうIPマルチキャスト放送事業者に、著作隣接権を付与するかどうかが議論された。著作隣接権が付与されれば、レコード会社や実演家などの事前許諾を得ずに独自コンテンツを配信できるようになるが、まだ結論は出ていない。
新たな著作権法の課題としては、著作権を侵害する海賊版を販売するための広告行為に対する規制の強化が挙げられる。現在の著作権法では、インターネットオークションやスパムメールなどを利用して著作権侵害品を販売するための広告行為を「権利侵害」と見なしていないが、今後は、これらの行為を取り締まるように著作権法の規制強化を図るとした。
関連情報
■URL
JASRAC
http://www.jasrac.or.jp/
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( 増田 覚 )
2006/11/29 11:14
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