オンライン百科事典「Wikipedia」の創設者で、Wikiサイトのホスティングサービスを手がける米WikiaのCEOを務めるJimmy Wales氏が11日、開発中の新しい検索エンジンの概要を説明した。新開発エンジンは、フリーライセンスとしてソースコードを公開するほか、検索連動型広告により収益を得る考えなどを明らかにした。
● 新検索エンジンの開発は政治的な声明
|
「Wikipedia」の創設者で、米WikiaのCEOを務めるJimmy Wales氏
|
――Wikiaが手がける検索エンジンの概要は?
Wales氏:Wikipediaなど私がかかわるすべてのプロジェクトと同様に、オープンソースとして展開する。検索エンジンのソースコードのコピーや再配布、修正などが可能となるため、誰もが開発プロジェクトに参加できる。これにより、透明性の高い検索エンジンが開発されることになるだろう。新検索エンジンでは、透明性の高さをアピールすることにより、多くの利用者を集めたい。
――開発スケジュールは?
Wales氏:2007年末までには基本的なバージョンをリリースする予定だ。しかし、このバージョンは優れたものではなく、Wikipediaをスタートした時と同じくらいのレベルのものになるだろう。大手検索エンジンに匹敵するようになるには、最低でも1~2年かかる。
――検索エンジンをオープンソースとして展開する理由は?
Wales氏:我々の独自技術で開発することも考えたが、大手の検索エンジンに匹敵することが難しいことは理解している。だからこそ、オープンソースという代替え案で展開することとなった。検索エンジンの品質は、Googleが登場してから一定のピークを迎え、過去2~3年では真新しい技術革新は見られないが、オープンソースにより新しいイノベーションが生まれることを期待している。
また、Wikiaが手がける検索エンジンは、一種の政治的な声明に値するものだと考えている。検索エンジンはインターネットのインフラの一部であることから、透明性や公共性が求められる。これを確保するためにも、仕様をオープンするべきだと考えた。
――開発モデルとしては、LinuXやApacheと同様?
Wales氏:そうだ。例えばApacheについては、マイクロソフトがWebサーバー市場を支配することを懸念する多くの企業が、Apacheの開発に協力している。それは検索エンジン分野でも同様で、GoogleやYahoo!の覇権に危惧を抱く人は少なくない。こうした人々が、我々の検索エンジンに協力することを表明してくれている。
● 新検索エンジンで得た収益の一部はWikipedia運営費に
――Wikipediaは非営利として運営されているが、検索エンジンでは収益を得るのか?
Wales氏:検索エンジンの開発は大規模なプロジェクトとなるため、慈善事業ではなく収益を得る。検索エンジン開発には、多くのサーバーを設置したり、従業員を採用するなどの投資が必要だからだ。
――収益モデルは?
Wales氏:ユーザーが入力したキーワードに応じて広告が表示される検索連動型広告を採用する。Googleなどが手がける検索連動型広告は、広告の透明性が確保されているので、このモデルを参考にしたい。Wikiaで得た収益の一部は、Wikipediaを運営するWikimedia財団に寄付する。
――収益の一部をWikimedia財団に寄付するのは、Wikipediaが財政難を抱えているから?
Wales氏:確かにWikipediaは世界各国からの寄付で成り立っているので、運営に難しさはある。しかし、ただちにWikipediaを運営できなくなるような難題に直面しているわけではない。
――Wikia内の開発体制は?
Wales氏:検索エンジンの開発センターがポーランドにあり、これまでに20人の技術者を採用した。人材については、オープンソースプロジェクト経験者を探している。
――日本市場についてはどのように考えるか?
Wales氏:日本は重要な市場。日本語では、同意語や複数形など、欧州の言語とは異なる課題がある。
――検索エンジンは言語依存が大きいが、どのように調整するのか?
Wales氏:この問題についてもオープンソースモデルが大きな力を発揮する。Wikipediaでは、各国の利用者の協力により125言語で展開されている。また、Linuxは、言語コードに対する多くのモジュールが提供されているため、他のOSよりも優れた言語機能を持っている。こうしたことから、オープンソースが言語依存の問題を解決してくれると考えている。
関連情報
■URL
新検索エンジンプロジェクトのWiki(英文)
http://search.wikia.com/wiki/Main_Page
■関連記事
・ Wikipedia創始者が検索エンジン開発計画を立案(2006/12/25)
・ Wikipediaは「情報赤十字」、創設者のJimmy Wales氏が講演(2007/03/12)
( 増田 覚 )
2007/03/12 15:17
- ページの先頭へ-
|