インターネット先進ユーザーの会(MIAU)が1日に開催したシンポジウム「青少年ネット規制法について考える」において、MIAUの代表幹事を務めるAV機器評論家・コラムニストの小寺信良氏が「親による情報管理の手法と現実」と題して講演した。
● “フィルタリング”と“ペアレンタルコントロール”
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MIAUの代表幹事を務める、AV機器評論家・コラムニストの小寺信良氏
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小寺氏はまず、“フィルタリング”とはどういうものなのか、デジタルアーツの「i-フィルター」を使って実演。年代ごとに遮断することが推奨されるカテゴリーをあらかじめ設定している「小学生向け」「中学生向け」「高校生向け」「大人向け」「企業向け」といったプリセットの中から、「小学生向け」を選択してサイトが遮断される様子や、小学生であっても親が任意のカテゴリーの遮断を解除できる機能があることなとを説明した。
i-フィルターでは、Webサイトをを37カテゴリーに分類しているが、「フィルターが善悪を判断するわけではない。どのカテゴリーを見せたいか、見せたくないかを親が選べる」。例えば、小学生向けでは多くのカテゴリーをフィルタリングするが、親の判断により、ゲームのカテゴリーだけは許可するといったことが可能だ。
つまり、判断するのはユーザー側であり、実質的には親が運用することになる。ただし、「きちんとフィルターが動くように設定する技術がすべての親にあるわけではない。フィルタリングは親に対するスキルがものすごく問われる技術であり、本当にきちんと動かせる人がどれだけいるのかということを理解しておく必要がある」と指摘した。
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Googleで「大麻」を検索した結果。該当するページを一律にフィルタリングするのではなく、Wikipediaやニュース記事などは通過させているのがわかる
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Windows Vistaのコントロールパネル「ユーザーアカウントと家族のための安全性」からペアレンタルコントロールを使える
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次に小寺氏は、親が子供のネット利用を管理するもう1つの考え方として“ペアレンタルコントロール”を挙げ、Windows Vistaに標準搭載されているフィルタリングをペアレンタルコントロールで管理できる機能を紹介した。
ペアレンタルコントロールは、欧米において、「子供がPCを触わるのは親の監視下で」という考えが大前提となっている。一方、日本では、親の監視権限と子供のプライバシーのバランスをどう考えるのかが課題であり、「子供がネットサーフィンをすることに対して、親がどれだけ介入・干渉していいのかが悩みどころではないか」という。
「小学生ならばいいと思うが、中学生で思春期や反抗期になった場合に、果たしてそういう論理が通用するのかどうかを考えなければいけない。例えば、みなさんも思春期の頃に『広辞苑』でエロい単語をひきましたよね。そのページをめくった時、『ここは18歳になったら通ってよし』と親の字で付箋が先回りでしてあったらどうなんだろう? 子供の頃、自分の親はどうだったか考え、今、自分が親の立場になって、それをインターネットを絡めてどのように運営できるのか、もう1回議論したほうがいい。」
そこで、MIAUではあるプロジェクトを立ち上げたという。
● MIAU会員の「ひどい目に遭った体験」をリテラシー教育に活用
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MIAU版「インターネットの教科書」の概要
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そのプロジェクトとは、MIAUで「インターネットの教科書」を作るというものだ。「我々MIAUには、ネットの黎明期からいろいろひどい目に遭ってきた人がたくさんいる。ひどい体験というものを子供たちにフィードバックできないか」。
3月末に非公式プロジェクトとして開始し、4月末に公式プロジェクトになった。「青少年ネット規制法案よりも前、児童ポルノ規制が話題になった時に『やはりリテラシーや教育ではないのか』ということを考え、少しずつ始めた」という。
将来的には「小学生版」「中学生版」「高校生版」とセグメント分けしたものを作成するとともに、その「保護者版」も作成する。すでに、MIAUの会員が過去にボランティアで作成した情報リテラシーのテキストがたたき台としてあり、社会学者や心理学者の助言も受けながら作成していくという。完成後は、クリエイティブコモンズライセンスで配布し、「できれば、教育委員会やPTAなどで採用してもらい、夏休み前に子供に配布してもらえると幸い」とした。
関連情報
■URL
MIAU緊急シンポジウム「青少年ネット規制法について考える」
http://miau.jp/1209319200.phtml
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