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有害情報対策でまず考えるべきは、罰則ではなく「責任制限」


 インターネット先進ユーザーの会(MIAU)が1日に開催したシンポジウム「青少年ネット規制法について考える」において、マイクロソフトで技術統括室CTO補佐を務める楠正憲氏が「有害コンテンツ対策を巡る論点と業界の動き、今後の展望」と題して講演した。


ネットがらみの問題は、ネットを通じて対策できる

マイクロソフト技術統括室CTO補佐の楠正憲氏
 楠氏は、“青少年インターネット規制法案”によって有害情報を規制しようという動きが起こったことについて、「業界でも反省はあるが、これまでも決して対策をしてこなかったとは考えていない」とコメントし、掲示板におけるキーワードによるフィルタリングや有人監視、また、マイクロソフトとしてはWindows Vistaに標準でフィルタリングを搭載したことなどを例示。「業界が対策をしてきたからこそ、ブロードバンドや携帯が流行ったにもかかわらず、全体で見ると、少年犯罪あるいは少年が被害者となる犯罪はけっして増えていない。これは非常に誇るべき成果だと思う」と強調した。

 とはいえ、普及率が上がるにつれ、インターネットが関わる犯罪が増えてくるのも事実。そこで楠氏は、ネットが関連している問題に対しては、ネットを通じて新しい対策ができる可能性があると、逆にポジティブに捉えることができると指摘した。

 「今まさに硫化水素自殺が話題になっているが、ネット自殺については2005年に警察庁の総合セキュリティ対策会議で議論になり、自殺予告書き込みがあった場合の情報開示ガイドラインがテレコムサービス協会から出された。これまでなら黙って死んでいった方々が、ネットに『これから死にます』と書き込んだことによって、情報開示により警察が止めに入ることが可能になった。死のうとしている人が年間数十件保護されているのは、非常に示唆的。技術の登場によって、これまで防げなかった自殺、防げなかった犯罪が防げるようになってきている。そういった意味で、業界が社会のもめごとや犯罪にきっちりと対応していくことの社会的責任が高まっている。」

 一方で、業界がきちんと対策してこなかったこととして、楠氏は掲示板のレーティングを挙げた。これについては、インターネット協会において、分類・格付け基準「SafetyOnline」の見直しの議論が始まることや、新しい第三者機関「インターネット・コンテンツ審査監視機構(Internet-Rating Observation Institute:I-ROI)」の設立が発表されたことを紹介。「今回、寝耳に水で議員立法の話が出てきたが、結果的に、業界のさまざまな努力を触発するきっかけになったことはすばらしいと思う」とコメントした。


有害情報対策でまず考えるべきは、罰則ではなく「責任制限」

 法案そのものについては、自民党の「高市案」において「行政処分や立ち入り検査など、物騒な話」が盛り込まれている点を指し、「プロバイダー責任制限法の時と同じだが、最初にやるべきは行政処分ではなく、責任制限だろう」との考えを示した。

 例えば、ISPが学校裏サイトの情報を親や先生に開示した場合、訴えられて賠償金を請求される可能性もある。違法・有害情報対策でISP側に善意があった場合は、「きちんと法的リスクから守ってあげるから、きっちり対応しなさいよ」というところから始まるべきだとした。

 この問題は、シンポジウムの参加者の高校生からも指摘された、いじめに関する有害情報の線引きが難しいという点にも関連してくる。楠氏は「いじめの情報を削除することが正しいのか」と疑問を投げかけ、「そこで情報を消しても、人間関係としてのいじめは変わるものではない。いじめを有害情報として定義し、それに削除義務を課すのは賢いやり方ではないと思う」とコメント。ほかに何ができるのかをいろいろ考えたという。

 「例えば、学校裏サイトでのいじめに親や先生が仲裁に入りたくても、今は掲示板にパスワードかかっていると何もできない。被害児童の関係者だということを証明する書類とともに『問題が起きているので見せてください、介入させてください』と言われた時に、パスワード開示などを行なうことについて責任制限をかけるなど、いろいろなやり方がある。」


法案が成立した場合、ネット業界の対応は?

 シンポジウムでは、CPSR/Japanの崎山伸夫氏が、インターネットにおける青少年保護についての国際動向を解説。米国の「Communications Deceny Act(CDA)」「Child Online Protection Act(COPA)」に対して違憲判決が出たことを紹介し、「米国では、問題のある法案が議員立法で通りやすいが、裁判で執行停止を比較的容易に行なえるため、バランスがとれている」と指摘した。

 一方、日本ではいったん法律が通ってしまうと、これを覆すのは難しい。これに対して楠氏は、業界として次にどういう動きに出るかは、自民党の内閣部会案が出てから判断することになるとした。また、「本来、こういう法案ができる前に民間でできることがある。反省もあるため、そういうところをきっちりしていきたい」ともコメントした。


米国の有害情報規制法に対する裁判事例 CPSR/Japanの崎山伸夫氏

関連情報

URL
  MIAU緊急シンポジウム「青少年ネット規制法について考える」
  http://miau.jp/1209319200.phtml

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( 永沢 茂 )
2008/05/02 19:57

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