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米Googleエンタープライズ部門製品企画担当ディレクターのマシュー・グロツバック氏
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グーグルは12日、企業ユーザー向けのイベント「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」を東京都内のホテルで開催した。約700名の事前参加登録があったとしており、「Google Apps」や「Google 検索アプライアンス」をはじめとした同社の企業向けソリューションやその導入事例などが紹介された。
米Googleのエンタープライズ部門製品企画担当ディレクターであるマシュー・グロツバック氏は「Googleエンタープライズ製品の現在と未来」と題して講演した。
グロツバック氏はまず、Googleの企業向け製品の過去を振り返り、2002年2月に発表した「Google 検索アプライアンス」によって、インターネット上だけでなく企業内のドキュメントも検索可能にしたことを紹介。さらに2004年4月に発表したWebメールサービス「Gmail」によって、それまでは検索という匿名での利用だけだったのが、アカウントでログインして利用するサービスも始まったと説明した。また、それまでWebアプリケーションはデスクトップアプリケーションよりも質が低いと考えられていた中で、「Ajaxで初めてリッチアプリケーションを実現したのがGmailだった」とした。
Gmailのメール保存容量が、当時、他のサービスが10MBか100MB程度だった中でギガバイト単位を打ち出したことについても、どんな情報も瞬時に検索してアクセスできるようにしなければならないと考えた結果だと説明。Googleにとって、クラウドコンピューティングをコンシューマと企業に展開しだしたのがGmailだったとした。
● Googleのイントラネットは「iGoogle」似
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Googleのイントラネット「Moma」
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続いてグロツバック氏は現在の技術を紹介するにあたり、実際にGoogle社内に導入しているイントラネットを紹介した。これには「Moma」という名称が付いており、見かけは「iGoogle」に似ている。グロツバック氏がブラウザからログインした状態では「iMoma」というロゴが付いており、iGoogleと同じようにガジェットが並び、社内ニュースやカレンダーなどが表示されている。
ページ中央上部に検索窓があるのも同じだ。「会社の中で検索が出発点になっている。人を探したり、会議室はどこにいけばいいのかなど、社内ユーザーのエクスペリエンスは検索を中心に最適化している」という。
ここでグロツバック氏は、今回のイベントで東京に出張するにあたり、同社東京オフィスのスタッフを検索するというシナリオでデモを行った。Momaの検索窓に文字を入力すると、インクリメンタルサーチにより1文字入力していくごとに該当するスタッフ名がリストアップされていく。その中から目的のスタッフ名を選ぶと、即座に在籍フロアや電話番号、写真をポップアップ表示。さらにオフィスや会議室の場所を地図で確認することも可能だとしており、求める情報にすばやくたどり着けることの重要性を強調した。
また、日本に関する社内資料を検索し、グロツバック氏のローカルPCや社内ネットワークなどから、同氏がアクセス権限を持つドキュメントだけを検索結果に表示する様子も紹介。さらに、それらのドキュメントの所在が「Google Docs」や「Google Sites」であるものが多い点について、「検索結果がクラウドから出てきているものが多い。クラウドとエンタープライズがうまく融合している」と表現した。
グロツバック氏は「検索は、我々が情報を扱う上で欠かせないもの」と述べ、さらに今後、地理情報を加味したり、社内のソーシャルネットワークの情報を活用することで、より適切な検索結果を返す技術や、マルチメディア対応の充実など、まだまだイノベーションが必要だとした。
● Gmailをポータルとして、世界中の人とコミュケーション
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Gmail上での機械翻訳チャットとビデオチャット
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次にグロツバック氏はGoogle Appsの未来を語るにあたり、Gmailを取り上げ、「メールは単なるメールではなく、マイポータルになる」とコメント。同氏のGmailを表示しながらデモを行った。
グロツバック氏は、再び東京への出張というシナリオで、スケジュールなどを書いた日本語メールを選択し、Gmailから他のアプリケーションに切り替えることなく即座に英文メールとして表示される様子を紹介した。「機械翻訳機能がクラウドの中にあり、リンクをクリックするだけで英訳されて出てくる。これがクラウドの魅力。こうした機能がすべてのアプリケーションに用意されていれば、世界中の人とコラボレーションできる」。
同じくGmailのチャット機能でもエージェントを介して機械翻訳を利用できるとして、実際に日本語がわかるというGoogleのスタッフを呼び出してデモしてみせた。機械翻訳は現在36カ国に対応しているが、40カ国語に対応すれば世界の98.3%の人とコミュニケーション可能だというデータを紹介した。
Gmailのチャット機能としては、11日に発表されたばかりのビデオチャット機能を実演してみせながら、「別のアプリケーションに切り替える必要もない。ボタンを押すだけでビデオでコミュニケーションできることは、ビジネスユーザーにとっても大きなインパクトがある」とアピールした。
● “パワーコラボレーター”がクラウドをビジネスに活用
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GoogleLookup関数と組み合わせた、Google Spreadsheetsオートフィルのデモ
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Google Mapsのマッシュアップ地図が貼り付けられた状態
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「Google Spreadsheets」のデモでは、「ブラウザから利用できる、単なるOfficeの軽量版ではない」と強調。その事例として、GoogleLookup関数を紹介した。
グロツバック氏はまず、「japan」「china」と記入してある2つのセルを選択・ドラッグし、「thailand」「malaysia」……というように、アジア太平洋地域の国名がセルに自動で入力される様子を紹介。さらにGoogleLookup関数を使って、それぞれの国の首都や人口などのデータを取得してきて自動的に読み込む機能を実演した。単にブラウザ上でスプレッドシートを使えるようにしているだけでなく、「世界中のコンピュータに存在する情報を活用できる」のだという。
他のユーザーを招待してスプレッドシートを共同編集することにより、コラボレーションを簡単に行えることもアピールした。グロツバック氏が説明している間にも、招待したユーザーがそのスプレッドシート上にGoogle Mapsとのマッシュアップによる地図を貼り付けていった。また、ローカルで作成したスプレッドシートはファイルを相手にメールで送ってしまえば、それ以降は新しい情報が反映されないが、Google Spreadsheetsでは常に更新可能であり、例えば1年後、各国の人口が変わってもその時点でスプレッドシート上のデータに反映できるとした。
企業のイントラネットで導入すれば、インターネット上の情報だけでなく、CRMやERPのデータとも連携できるという。さらにそれらのデータを読み込めるマッシュアップガジェットを開発すれば、Momaのようなイントラネットポータル上からも参照できるとしている。
グロツバック氏は「これからの新しいアプリケーションは、クラウドで生まれる」と述べ、従来の“パワーユーザー”という概念は将来“パワーコラボレーター”に変わり、彼らがクラウドの中にある有用な情報をビジネスに活用していくことになるとした。
関連情報
■URL
Google Enterprise Day 2008 Tokyo
http://www.google.co.jp/intl/ja/landing/ged2008/index.html
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( 永沢 茂 )
2008/11/13 12:03
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