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「違法・有害情報の削除には躊躇も」ヤフー責任者が胸の内語る


ヤフー最高コンプライアンス責任者(CCO)兼法務本部長の別所直哉氏
 ハイパーネットワーク社会研究所が開催中のワークショップで19日、ヤフーの最高コンプライアンス責任者(CCO)兼法務本部長の別所直哉氏が、同社の違法・有害情報対策について講演した。フィルタリングをはじめとする対策を紹介する一方で、違法・有害情報の判断や削除については「表現の自由に影響しないか」と躊躇することもあると明かした。

 別所氏は、違法・有害情報対策の前提として、1)書き込みは防げない、2)何が書かれるかは、書かれるまでわからない、3)国外サーバーからの発信も多く、誰が書いたか簡単に突き止められない、4)コミュニケーション手段の悪用を防ぐには悪人を捕まえるしかない――と説明。ヤフーでは、これらの前提を踏まえた上で対策を進めているとした。


適法な広告の掲載を断るケースも

 ヤフーが行っている違法・有害情報対策として別所氏は、「情報提供サービスの適正化」「利用者参加型サービスの悪用防止」「違法・有害情報を遮断するフィルタリングの提供」という3点を挙げた。

 まず、「情報提供サービスの適正化」については、広告審査基準により、子どもに相応しい内容の広告のみを掲載していると説明。「適法であっても、タバコの広告や射幸心をあおる広告はお断りしている」。オンラインで漫画が楽しめる「Yahoo!コミック」では有害図書の掲載を禁止するとともに、暴力的・性的な表現を含むものについては、誰でも無償利用が可能な「立ち読み」機能を提供していないとした。また、「Yahoo!テレビ」では、アダルト番組の番組表を提供しない取り組みを進めているという。

 次いで、「利用者参加型サービスの悪用防止」については、1)利用規約による悪用禁止、2)カスタマーケア部門(パトロールを含む)による即時対応、3)法務部門における判断基準作成と削除判断、4)24時間、365日対応体制、6)弁護士や大学教授、マスコミ関係者らで構成するアドバイザリーボードによる第三者意見の反映――といった対策を進めているとした。

 「利用者参加型サービスの悪用防止」で評価が分かれた事例として別所氏は、死体が写り込んでいる戦争写真を紹介。ヤフーの法務部では、「死体が写っているので有害」か「戦争の悲惨さを伝えるための写真」と判断するかで意見が分かれたという。

 最後に、「違法・有害情報を遮断するフィルタリングの提供」では、ブラックリスト方式による「Yahoo!あんしんねっと」と、ホワイトリスト方式による「Yahoo!きっず」の2つのフィルタリングサービスを提供することで、利用者に安全な場所を提供するとともに、有害情報をできるだけ閲覧制限しているとした。


ヤフーが行っている違法・有害情報対策の概要 「利用者参加型サービスの悪用防止」で評価が分かれた事例

違法・有害対策は「何をよりどころにするのか」が課題

 違法・有害情報対策への取り組みを進める一方で、検討すべき課題もあるという。課題の1つとして別所氏が掲げたのが、「何をよりどころにするのか」という点だ。「例えば、注目された事件があったときに『社会的に騒がれるから』という理由だけで排除することは妥当なのかとも思っている」。

 さらに別所氏は、「誰が違法・有害情報と判断するのか」ということも課題として挙げる。「送信防止措置を取りうる存在であるからといって、通信事業者でしかないISPに、利用規約に基づいた判断を負担させている現状は妥当と言えるのか。個々のISPの『考える力』や『行動する体制』は十分なのか」。

 自主的な取り組みによって違法・有害情報と判断することが、「表現の自由」に与える影響についても懸案事項のひとつだという。「下した判断が正しいかどうかを検証するとともに、これまでの取り組みが与えている影響についても考える必要がある。諸外国の制度や方策を参考にしながらも、それらを簡単に取り入れて良いのか検討すべきだ」。

 会場からは、「ヤフーがやらなければいけないのに、できないこと」という質問が寄せられた。これに対して別所氏は、「運営者という立場ではなんでも削除できるが、『やってしまって良いのか』ということが課題。社会的な倫理基準を決めるのは一企業ではないと考えているので、『社会的に許されない』という理由で対策を進めることについては、躊躇する部分があるのは事実」と胸の内を語った。


関連情報

URL
  ワークショップの概要
  http://www.hyper.or.jp/staticpages/index.php/ws2009

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( 増田 覚 )
2009/02/20 11:38

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