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イベントレポート
【 2009/06/12 】
ひろゆき氏&夏野氏が講演「日本のネットは決してダメじゃない」
[18:57]
携帯ゲーム機のような見た目のNGN対応回線品質測定器
[14:28]
ISAO、IPデータキャストを利用したサービスイメージを展示
[11:33]
【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
[18:50]
日テレが「ニュース検索API」などを紹介、国内の地上波放送局初
[18:36]
UQ Com田中社長、高速&オープン志向「UQ WiMAX」のメリット語る
[17:45]
主催者企画コーナーでは「ServersMan@iPhone」のデモも
[11:13]
国内初のデジタルサイネージ展示会、裸眼で見られる3D映像など
[11:12]
【 2009/06/10 】
CO2排出量が都内最多の地域、東大工学部のグリーンプロジェクト
[20:01]
IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
[19:29]
UQ Com、7月の有料サービス開始に向けて「UQ WiMAX」をアピール
[19:20]
「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
[14:53]

安全なネット目指し、エジプトや中国でも利用者の啓発活動

ITUと総務省のシンポジウムで取り組み報告

 国際電気通信連合(ITU)と総務省により、シンポジウム「ITU/MIC Strategic Dialogue on Safer Internet Environment for Children(安心・安全なインターネット環境整備に関する戦略対話プログラム)」が6月2日・3日の2日間にわたり東京で開催された。3日には、インターネット利用者への周知・啓発をテーマとしたセッションが行われ、各スピーカーが各国での取り組み概要を紹介した。


保護者や教育者は、子供の意識との溝を埋めよ

European Network Information Security Agency上級専門家のIsabella Santa氏
 European Network Information Security Agency(ENISA)の上級専門家であるIsabella Santa氏は、「子供はデジタル器機を簡単に使いこなすが、保護者や教育者はうまく扱えない。その代わり、大人には子供にない生きる知恵がある」と語る。

 保護者は子供とコミュニケーションをとる上で主要な役割を占めるにも関わらず、オンライン上のリスクを知らないことが多い。また、子供たちがオンライン上でどんなことをしているかも知らない。保護者の92%は「子供とネットを利用する上でのルールを決めている」と答えているが、子供でルールがあると答えているのはわずか34%にすぎない。

 そもそも、子供に危険について教えていなければ、技術的ソリューションが優れていても役に立たない。それには、保護者からだけではなく、教育者による、技術的ソリューションやネットを使うためのルール教育も必要だ。保護者と教育者は、子供がオンライン上で何をしているかを理解すべきであり、家庭でのルールを決めて子供の意識との溝を埋めることが大事だとした。


青年が青年に教えるのが一番効果が高い

CyberPeace Initiative責任者のNevine Tewfik氏
 CyberPeace Initiative責任者のNevine Tewfik氏は、エジプトの実状を紹介した。エジプトのネットユーザーは4年前に1300万人に達した。人気のサービスはFacebookで、ユーザーの半分以上が18歳未満だという。2008年には、児童に直接接触しなくても、児童ポルノを所持しているだけで有罪となる「児童法」が制定された。「数年かかってやっと制定された。次はプライバシー法の立法を目指す」。

 「最大の課題は教育」とNevine氏は語る。エジプトでは直接生徒に働きかけるのが困難なため、ネットの安全性に関する知識を教育者のスキームに入れ、教師の知識の向上を目指している。さらに、フィルタリングをエジプトの家庭に導入しようとしているところだという。

 CyberPeace Initiativeは、メディアリテラシーの向上を目的とし、青少年とともに取り組んでいる民間のイニシアチブだ。主要な活動としては、青年が学校や公立図書館などに赴き、同じ年齢層の青年に対してネットの安全性に関する教育を行うというものがある。「青年が青年に教えるのが一番効果が高い」としており、2年間で約10万人にアプローチできたという。

 CyberPeace Initiativeが近年力を入れている取り組みは、保護者や青少年に対するアラビア語の教育キットを作ることだった。「エジプトの児童におけるオンライン上のリスクをまとめて、オンラインにはどんな脅威があるかを伝えたい。教育と意識啓発が最大の課題」。今後、コンテンツプロバイダーとの協力ほか、ファミリーポータルの構築、周知と教育に力を入れていくという。


情報リテラシーについて小学校に出前授業

ニフティ法務本部長の丸橋透氏
 ニフティ法務本部長の丸橋透氏は、民間部門の取り組みをテーマに同社の活動を紹介した。ニフティでは、他社に比べて規模の小さい同社のリソースでどのような社会貢献活動ができるかが課題になったという。しかし、「自社の強みは、従業員のネットに関する知識と経験」との確信を持ったニフティは2008年から、CSR(Corporate Social Responsibility)の一環として、学校向けに教育倫理プログラムの提供を開始した。小学校への出前授業のほか、保護者や教員に対する授業を行うことにしたのだ。ボランティアの社員により、東京都品川区と神奈川県川崎市の23学校/41学級ですでに実施している。

 テーマは、心とリテラシーの二面。ニフティでは、「正しい判断を促進し、情報化社会で生きていくために必要なスキルを身に付けさせたい。心を育成し、ネットの安全な使い方や知識を身に付けさせたい」と考えたのだ。授業では、実際にあったトラブルから、モデルにスカウトされたはずが誘拐されてしまう「モデルオーディション詐欺」、宝くじに当たったはずが逆にお金を請求されてしまう「宝くじ詐欺」を取り上げた。

 授業を受けた子供たちは、ネットの情報が必ずしも正しいわけではないこと、個人情報を出してはいけないこと、フィルタリングはトラブルを避けるために有用なツールであることなどを学んだ。保護者は、情報化社会で被害者にも加害者にもならない方法、リスク、親の役割、ルールを作る重要性について学んだ。

 丸橋氏によると、ニフティでは2つの問題があると考えている。1つは、関心がない保護者には手をさしのべるのが難しいこと。もう1つは、子供はリスクを知っていても感情に任せて行動してしまうことがあるということだ。「今後は、保護者や教員に対して周知していくキャンペーンを行い、Webベースの知識の提供などを通して子供に学んでもらいたい」とした。


中国でも深刻化する青少年のネット問題

北京英納特網研究所の代表兼最高経営責任者、北京天地互連信息技術有限公司の代表兼最高経営責任者を務めるLiu Dong氏
 北京英納特網研究所の代表兼最高経営責任者で、北京天地互連信息技術有限公司の代表兼最高経営責任者でもあるLiu Dong氏は、中国の状況と問題について語った。中国のネットユーザーは2009年に7億人に達し、世界第1位。しかも、今後さらに増えていくと予想されている。また、全ユーザーの約4割が20歳以下であり、学生、特に16歳以下の割合が増えている。携帯電話ユーザーの数も世界一であり、全ユーザーの約3割が携帯電話でネットを利用しているという。さらに、携帯電話ユーザーは2年間であと2億人以上増えると言われている。

 中国でも、ユーザーが増えるにしたがって利用法が多様性を持ち始めた。Liu氏によると、「中国のネチズンは若いため、ネットをエンターテインメント的に利用する割合が高い。ネットワークを利用して娯楽を享受している」。また、友人関係を維持するためにネットを利用している子供が全体の25%、ネット上で知らない人と交流している子供は全体の38%いるという。

 「従来のメディアでは若い人たちの関心を満たせないが、ネットなら満たせる。しかし問題も存在する」とLiu氏。多くの青少年がオンラインゲームにどんどんアクセスし、バーチャル世界の住人になり、現実世界を放棄したり犯罪に手を染めたりしているのだという。ネット中毒者は小・中学生に多く、女子よりも男子に多い。「政府はもっと安全な環境を整えるべきであり、大人はもっと子供とのコミュニケーションを取るべき」と強調する。

 さらにLiu氏は、北京の小学校でのネット活用事例を紹介した。Liu氏の子供が通う小学校では、子供にブログを開設させ、情報の交換や公開、コミュニケーションなどを行わせている。ブログは、保護者と教員をつなぐサイトともなっている。子供たちはブログに写真や動画を公開できるため、保護者は子供たちの学習状況を知ることができるわけだ。また、子供にとってはネットの安全な使い方を覚える良い機会となっている。

 最後にLiu氏は、「中国はネチズンが多いが課題も多い。ユーザーがどんどん増えており、子供にはメリットもあるが危険も多い。保護者や業界は、安全なネット環境を作り、情報交換をすべき」と訴えた。


関連情報

URL
  シンポジウム概要(英文)
  http://www.itu.int/osg/csd/cybersecurity/gca/cop/meetings/june-tokyo/index.html

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( 高橋暁子 )
2009/06/04 18:53

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