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第30回:パスワードのセキュリティ
[11:18]
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[12:31]
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第28回:メール編(17)迷惑メールをめぐる法改正
[12:51]
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第27回:メール編(16)迷惑メールを無視する(下)
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【 2008/08/27 】
第26回:メール編(15)迷惑メールを無視する(上)
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【 2008/07/30 】
第25回:メール編(14)迷惑メールを回避する
[11:51]
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第24回:メール編(13)迷惑メールに潜む罠(下)
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【 2008/07/16 】
第23回:メール編(12)迷惑メールに潜む罠(中)
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第22回:メール編(11)迷惑メールに潜む罠(上)
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【 2008/07/02 】
第21回:メール編(10)迷惑メールが来るキッカケ(下)
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【 2008/06/25 】
第20回:メール編(9)迷惑メールが来るキッカケ(上)
[16:01]
【 2008/06/18 】
第19回:メール編(8)「迷惑メール」が氾濫する理由
[11:15]
あなたの身近なセキュリティ

第21回:メール編(10)迷惑メールが来るキッカケ(下)


 「※このメルマガは、Web上の懸賞企画、プレゼント企画等において会員募集を行い、応募されました方にのみ、お送りいたしております。」

 読者はこんな迷惑メールを受け取ったことはないだろうか。このメールには、「あなたはオプトインしています」という、送信者側の勝手な解釈が込められている。

 この迷惑メールは実際に届いたものだが、筆者は「Web上の懸賞企画、プレゼント企画等」に申し込んだこともなければ、このメールマガジンに登録した記憶もない。


“俺ルール”でいつの間にかオプトインが成立?

筆者の元に届いた迷惑メール。「配信停止のご連絡がない場合は、次回以降の配信について承諾したものとさせて頂きます」という“俺ルール”で承諾させようとしている(拡大で全文表示)
 この迷惑メールをもう少し詳しく見てみよう。

 まず非常に気になるのは、「配信停止のご連絡がない場合は、次回以降の配信について承諾したものとさせて頂きます」という表記だ。

 つまりメール送信者は、「明確に配信停止の連絡をしなければ、次回以降もメールを送ってもOK」という“俺ルール”で、メール送信に関する承諾を得ようとしているのだ。

 予想通りというべきか、次回以降届いたメールのサブジェクト(件名)には、「未承諾広告※」の文字が消えていた。その他の表記についても、本文の最初に明記することになっている送信者・事業者名の表示義務を怠っていることなどから、「承諾済み」の扱いになっているようだ。その後、同様のメールが10通以上届いた。

 筆者は、少なくともこの手の迷惑メールの半分は「ニセのオプトイン」だと考えている。メール利用者の中には、「未承諾広告※」をキーワードにして、迷惑メールをフィルタリングする人も少なくない。そう考えると、ユーザーが目を通す可能性の低いメールに反応しなければオプトインが成立する、というのはおかしいと感じる。

 なお、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール法)」では、オプトインしたメールに関しては、送信者や事業者の表示義務はなく、メール配信を停止するためのオプトアウトの方法だけを記載すればよいことになっている。

 この例のように、オプトインが不明瞭な形で行われている場合、迷惑メール法は事実上骨抜きにされているといえるだろう。

 参考までに、筆者が「自らの意思で」オプトインしているメールでは、次のようにオプトインの判断理由が明確に表記されている。

 「このメールは、ローソンパス会員・マイローソンポイント会員のうち、『ローソンパス便』にご登録いただいた方にお送りしています。」


懸賞サイトや出会い系サイトのオプトイン

 前々回でも触れたが、オプトインには2種類の方法がある。

 Web等で「メーリングリスト送信を希望する」の欄にメールアドレスを入力するだけで登録が完了する「シングルオプトイン」と、本当にWeb等で入力したかどうかをメールで問い合わせて、そのメールに書かれている手段(特定のアドレスへの返信や指定URLへのアクセス)で登録が完了する「ダブルオプトイン」だ。

 これらのまっとうなオプトインのほかに、冒頭で挙げたように、利用者が気づかないうちに「ニセのオプトイン」が行われるケースがある。

 例えば、Web上の懸賞企画やプレゼント企画などで、「(提携企業からの)メール送信を許可する」という項目が含まれた利用規約に気づかずに同意してしまったために、迷惑メールが届くといったシナリオだ。

 「(提携企業からの)メール送信を許可する」という“トリック”については、ユーザーの懸賞応募を代行する「懸賞代行サービス」でも多く見られる。ユーザーは、当選に備えて個人情報(本名、住所、電話番号など)を登録する必要が出てくるが、この情報が第三者に譲渡される可能性も否定できない。

 これと同じことは、ユーザーのプロフィールを入力する出会い系サイトでも当てはまる。安易に個人情報を入力することによって引き起こるトラブルについては、国民生活センターも注意喚起しているので参考にして欲しい。


「メール送信の許諾」の第三者譲渡が利用規約に盛り込まれていることも

 筆者は、メール送信の許諾を第三者へ無制限に譲渡することが認められるのは、望ましくないと思っている。しかし、実際はかなり緩い制限(もしかすると無制限)でメール送信の許諾が譲渡されている。

 「このために個人情報保護法があるのでは?」という疑問ももっともだが、あなたはサービスやメールマガジンの登録時に、利用規約にすべて目を通しているだろうか。逆に利用規約で、メール送信の許諾の無制限な譲渡を行う旨の記載があれば、許諾した方が悪いという論法も成り立つ。

 さらに、企業・団体でも保有する個人情報が5000件未満ならば個人情報保護法の対象にならないため、零細業者や個人営業の懸賞代行サイトの場合、保護指針を明示していないサイトもある。「メールアドレスだけなら『個人を特定できないので』個人情報保護法の対象にならない」と主張する業者もいるのが現状だ。

 懸賞サイトや出会い系サイトでは、気軽に個人情報を渡してしまいがちだが、本当にそれでよいのか登録する前に考えてみるとよいだろう。そのためにはまず、「無料サイトはどうやって運営しているのか?」ということを考えて欲しい。

 サイト運営にはコストがかかるため、無料で会員を集める場合には、何らかの形で収益を得ている。これらの無料サイトが収益を得る方法のひとつが、集めた情報を売却することなのである。今回の原稿執筆のために調べてみたところ、実際に「『未承諾広告※』を付けないメルマガオーナーになれるメールアドレス」のリストを販売している業者を見つけた。

 この業者が販売しているのは、懸賞サイトや出会い系サイトなどで、「(提携企業からの)メール送信を許可する」という項目に気づかずに登録したユーザーのメールアドレスのリストだ。この業者は、懸賞サイトや出会い系サイトの「提携企業」として、リストに記載されたユーザーに無許諾で迷惑メールを送る可能性もあるだろう。


ECサイトで商品購入、大量のメルマガが届くケースも

楽天ショップのメルマガ一覧。これだけ大量のメールが届くとは、登録時には予想も付かないだろう
 最後に、思わぬきっかけで大量のメールが届くケースを紹介したい。

 筆者は2月、楽天市場のとあるキャンペーンを使って、いくつかの店舗のメールマガジンに登録してみた(正確にはキャンペーンに応募するとメールマガジンに登録される)。その結果、驚くほど多数のメールが送られてきた。もちろん、楽天市場の店舗メールマガジンはオプトインの上で送られるのだから合法的だ。

 楽天市場の会員は、「楽天ショップのメルマガ一覧」というページから、登録したメールマガジンの配信頻度を確認できる。それによると、5月に最も配信頻度が最も多かった店舗は45.6通、つまり「1日1.5通」位のペースだ。2番目のショップは26.4通と、これも平日で毎日送信するペースとなっている。ちなみに、2月上旬に登録してから5月までの約3カ月間に届いたメールは、総計300通ほどだった。

 ちなみに、楽天市場の購入ページでは、メールマガジンのオプトインを行うチェックボックスが設けられている。このチェックボックスはデフォルトで有効になっているため、これに気づかずに注文ボタンを押してしまい、知らない間にメールマガジンを申し込んでいたというケースも考えられる(これは楽天市場に限った話ではなく、多くのECサイトが「チェックを外さなければメール送信を了承したと見なす」という方法を採用している)。

 「毎日のようにショップメールマガジンが来る」というのをあなたはどう感じるだろうか。もちろん、その店舗の商品の必要性が高ければ「ありがたいメール」であって、「迷惑メール」とは思わないだろう。

 しかし、商品購入と同時にメールマガジンに加入してしまい、大量のメールが届くのは「少々ウンザリ」と感じる人が多いかもしれない。そうならないためにも、ECサイトで商品を購入する際には、メールマガジンの申し込みの有無について確認したほうが良いだろう。


楽天市場の購入ページ。初期状態でメールマガジンのオプトインが有効になっている 「チェックを外さなければメール送信を了承したと見なす」という手法は、Yahoo!オークションでも見られる


2008/07/02 11:23
小林哲雄
中学合格で気を許して「マイコン」にのめりこんだのが人生の転機となり早ン十年のパソコン専業ライター。主にハードウェア全般が守備範囲だが、インターネットもWindows 3.1と黎明期から使っており、最近は「身近なセキュリティ」をテーマのひとつとしている。

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