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米AlereonのEric Broockman CEOが語るワイヤレスUSBの動向

将来は通勤電車でPodcastingも可能に!?

 9月28日・29日の両日、都内で「Wireless USB Developers Conference」が開催されたのにあわせ、米国から多くのワイヤレスUSB関係者が来日した。米AlereonのEric Broockman CEOもその一人だ。同社はワイヤレス関連のチップベンダーで、WiMedia Allianceのボードメンバーの1社だ。

 今回、そのBroockman氏に同社がWiMediaやワイヤレスUSBを支持する理由、そしてそれらを使ってどのようなアプリケーションが登場することに期待しているのかといった点についてインタビューできたので、そのAlereonの製品発表会とあわせてご紹介する。


なぜUWBに取り組むようになったか

米AlereonのBroockman CEO
――まず、Alereonという会社を立ち上げた理由について教えてください。

Broockman CEO:元々私はLegerityという会社にいたが、そこに在籍していた当時にベンチャーキャピタルの人と会って話をしていた際にUWB(Ultra Wide Band)という技術があることを聞いたのがきっかけだ。そこでUWBという技術を調べていくうちに、UWBという技術を使うことでPCや家電製品におけるケーブル類を排除することができるのではないかと考え、UWBにビジネスチャンスがあると考えるようになった。

 実際その頃にIntelのResearch Labを見学に行った際にも、USBケーブルを何とかして排除したいという考えの人々と会い、そこで自分の考えが正しいと確信した。だからAlereonはWiMedia Alliance、Wireless USB Promoter GroupやMBOA(Multiband OFDM Alliance)にも初期の頃から関わっている。

――当初UWBといえば、いわゆるImpulse Radio(インパルス無線)方式のUWBに注目が集まっていましたが、その中でなぜMBOAの規格を選んだのでしょうか。

Broockman CEO:実は最初にImpulse Radio方式のUWBを開発したスタッフは今もAlereonに在籍しており、(そのスタッフは)2002年にはマルチバンドのImpulse Radio方式UWBの機器を実際に試作したこともある。

 ただ、米FCC(連邦通信委員会)によるUWB機器としての認定を取得する際に、世界中の(電波行政に関する)規制当局とも話をして情報を収集した結果、米国以外ではImpulse Radio方式では許可が下りない公算が大きいとわかった。そのため、MBOAの規格を支持する方向に転換した。

 実際OFDMを使うことで、我々の製品は1チップで世界中をカバーできる柔軟性を持つようになったし、逆にFreescaleのUWBは、現在のままでは日本や欧州で現在検討中の規制内容には適合しない可能性が高いため、米国外での利用は難しいだろう。

――UWBベースの近距離通信規格である「IEEE 802.15.3a」の標準化では、IntelやTIらMBOA陣営と、MotorolaやFreescaleらDS-UWB陣営の対立が2年以上に渡っ続いており“デッドロック”状態が問題になっていますが、打開策はないものなのでしょうか。

Broockman CEO:今のところどうにも動きが取れない状態だと聞いている。とはいってもこのまま手をこまねいているわけにもいかないので、MBOAのメンバー企業のほとんどが参加するWiMedia Allianceとしては欧州のECMA(European Computer Manufacturer Association)に対し、WiMediaの規格を国際標準として制定してもらうよう働きかけているところだ。

――Alereonが手がけるUWBのPHY(物理層)チップの分野では他にWisair、Staccatoなどがライバルとして挙げられますが、その中でAlereonが有利な点はどこでしょうか。

Broockman CEO:我々の製品は高いパフォーマンスを持つ一方で、日本のUWB規制で要求される公算の高いDAA(Detect and Avoid:すでにほかの機器の電波が出ている場合にそれを検知し干渉を回避する技術)などを搭載しており、高い柔軟性を持っている。

 また、すでに我々のWiMedia規格に適合したPHYチップは量産体制の準備が整っているが、他社はまだ試作段階のところも多く、すぐにでも製品化し供給することができるだろう。


ワイヤレスUSBはカバーする機器の範囲の広さや使いやすさの点で有利

――WiMediaが共通のものとして規定する物理層とMAC(Media Access Control)層の上にはワイヤレスUSBだけでなく、Wireless 1394やWiNET(UWBを使ってTCP/IP通信を行う規格)、Bluetoothなども載せられることになるとアナウンスされてますが、これらのプロトコルはどう住み分けることになるのでしょうか。

Broockman CEO:おそらくはワイヤレスUSBが支配的に使われ、それ以外は限られた範囲での利用にとどまるのではないかと考えている。デジタルビデオカメラとテレビの接続にはIEEE 1394が一般的に使われているが、最近ではUSB 2.0を搭載したビデオカメラもかなり増えてきているように、USBがカバーするアプリケーションの範囲が非常に広がってきている。無線でも同じことが起きるのではないか。

 また、ホストソリューションとしては(上記の)4プロトコルすべてをサポートするチップを作ることは可能だし、実際そのような製品も出てくるとは思う。ただし、チップベンダーによってはワイヤレスUSBしかサポートしないといったところも出てくるだろう。

――私個人としては(無線LANの代替としての)WiNETに期待しているんですが……。

Broockman CEO:確かにWiMediaの規格の上でTCP/IPによる通信をサポートするという点で、WiNETは重要な規格であることは確かだが、一般の消費者にとって最も重要なのは使いやすさであり、その点ではワイヤレスUSBの方が進んでいる。例えばすでに(有線の)USB上ではいわゆるPlug and Play(PnP)が実現しているが、TCP/IP上でそれを実現するための規格であるUPnP(Universal Plug and Play)はまだ発展途上段階に過ぎない。

 その一方で、ワイヤレスUSBはホスト-デバイス型のアーキテクチャを取る関係で本格的なネットワークを実現できないのに対し、WiNETでは本格的なネットワークを構築できる。そのためにWiNETによるTCP/IP通信を使った革新的な新製品が出てくる可能性はあるだろう。

――では、ワイヤレスUSB上で実現するアプリケーションとしては何に最も期待していますか。

Broockman CEO:おそらくは通信の高速さを生かしたファイル転送に使われることが最も多くなるだろう。例えばデジカメからPCやテレビに画像を転送したり、逆にPCから携帯電話に音楽を転送したりといったことが考えられる。

 その中でも私個人としては、いわゆるPodcastingのような形で、自宅のPCや街頭のキオスク端末から音楽や動画コンテンツをダウンロードして、それをiPodや携帯電話などの端末で視聴して楽しむような形態に期待している。ワイヤレスUSBを使えば同時に複数の番組を、それも一瞬でダウンロードできるからだ。特に日本では電車通勤の時間が長いと聞いているので、それらが有効に働くのではないか(笑)。


2007年から2008年ごろに株式公開を目指す

――ところでAlereonとしては、今回発表した製品(下記参照)が初めての商品となるわけですが、今後の売上目標等はどのくらいと考えてますか。

Broockman CEO:我々は今のところ未公開企業なので、それらの数字は非公開とさせていただいている。ただ個人的な希望としては、2007年から2008年ごろに株式公開にこぎつけられればいいと思っている。

――日本では現在マクニカと代理店契約を結ばれているとのことですが、ほかの日本企業との提携などは計画していますか。

Broockman CEO:現在はマクニカとの関係に満足しているので、特に他の企業と手を結ぶことは考えていない。マクニカには過去に別のスタートアップ企業の立ち上げで協力してもらったことがあり、その際にも彼らは高い実績を挙げている。

――本日はどうもありがとうございました。


ホスト側は他社に任せ、我々はデバイス側とPHYに注力する

評価用ボードのAL4401。ボードの中央上側に見えるのがAL4200、下がAL4100
 インタビューに先立ち行なわれた製品発表会では、同社の製品としてPHYチップの「AL4100(RFフロントエンド)」と「AL4200(ベースバンドプロセッサ)」、そしてそれらを搭載した評価用モジュールである「AL4401」の3種類が発表されたほか、ベースバンドプロセッサとデバイス側のMACチップを統合した「AL4300」を2006年第1四半期に投入することがアナウンスされた。AL4100はJazz Semiconductorの0.35μm/Bi-CMOSプロセスで、AL4200はTSMCの0.13μm/CMOSプロセスでそれぞれ製造される。

 Broockman CEOは発表会の席上で「ホスト側のMACチップはすでにIntelやPhilips、NECエレクトロニクスといったところが開発を手がけているし、PCIバスやPCI-Expressなど標準的なバスへの対応など将来の互換性も考慮しなければならないので、それらは他社に任せる。それに対しデバイス側はあまり標準的なバスへの対応などを考えなくても性能さえ追求していけばよいので、我々はデバイス側とPHYチップに注力していきたい」と語り、自らの企業の体力を踏まえてデバイス側から攻める姿勢を明確にした。

 MAC層を統合したチップである「AL4300」についても、Broockman氏は「すでに自社側の開発はある程度出来上がっているが、最終的にはホスト側のMACチップが市場に投入された段階で相互接続性を確認してからでないと発売できない」と語り、ホスト側のチップのサンプル出荷が始まり次第速やかに動作確認を行なって市場に投入したいとの意向を示した。


関連情報

URL
  Alereon(英文)
  http://www.alereon.com/

関連記事
無線LANで600Mbpsを目指すIEEE 802.11n~IDF-J 2005レポート(2005/04/11)
MBOAとWiMedia~ワイヤレスUSBの標準化に関わる2組織の活動(2004/10/21)


( 松林庵洋風 )
2005/09/30 16:33

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