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意外と(?)普及しているモンゴルのインターネット事情(前編)


ウランバートルのメインストリート
 モンゴルの首都ウランバートルを訪ねた。モンゴルというと、ひたすら広がる草原、遥か先にゲルが点々とある中、馬で駆けるイメージだろうか? はたまた朝青龍に代表される、モンゴル相撲のイメージだろうか? 実際に目にしたウランバートルは、意外にも(?)街の中心には高層マンションも建つ都会で、ネットカフェもそこら中で見かけることができた。

 現在モンゴルの人口は250万人と言われ、そのうち100万人以上が首都ウランバートルに住むといわれる。“言われる”と書いたのは、家畜と移動しながら暮らすため、はっきりした数字がわからないのだ。ともあれ、全人口の半数が住むといわれるウランバートルを中心に、モンゴルのネット事情をご紹介しよう。

 ちなみに、この取材は2006年4月時点の話となる。余談だが、このとき日によっては首都ウランバートルの川が凍結するほど寒く、吹雪いていて、取材にはある意味苦労した。


ウランバートルの住宅エリア ウランバートルの中心。日本が寄贈したバスが走る

韓国メーカーのPCが導入されるネットカフェ

24時間営業のネットカフェ
 前述の通り、ウランバートルにはネットカフェが街中のいたるところにある。

 英語表記で「Internet」と書かれた店もあれば、モンゴル語(キリル文字)で書かれた店もある。モンゴル語の表記も、英語と同じ「インターネット」だが、旅行者などが訪ねる街の中心であれば、まずキリル文字で書かれた店を見かけることはない。

 風の強い日は吹き荒れる砂が気になるが、そんな天気の日もネットカフェは別世界だ。ウランバートルの中心に位置するネットカフェは、驚くほど空間にゆとりを持った、洗練されたデザインで驚かされた。中心から外の住宅エリアに行けば行くほど、小さい部屋にPCが密集した味気ないネットカフェとなるが、モンゴルに対し“貧しい国”とだけイメージしていたら、実際に行ってみるとそのギャップに驚かされるだろう。ネットカフェの利用料金は、1時間40円~100円。場所によっては24時間営業のところもある。


キリル文字で「Internet」と書いてある看板 そこかしこにあるネットカフェの看板

街の中心のスフバートル広場近くのホットスポット 街の中心にある、広々としたネットカフェ

 ネット利用者の多くは10代~30代だ。職業別では学生がメインだが、他にも会社員、子連れの主婦も見かけた。学生はもちろん高校生大学生が多いが、下は小学生から、男女ともに利用していた。

 彼らの主な目的は、チャットとメールとWebブラウジングだ。チャットはYahoo!メッセンジャー、メールはYahoo!メール、ブラウザはIEで、そのブックマークを開くとYahoo!の各サービスと、モンゴル人はYahoo系が人気だ。人によってはゲームもやるが、ネットカフェの利用者を見回してみれば、半分以上はチャットをしていた。


PCゲーマー向けネットカフェ 小学生の女の子もネットカフェでネット

 カウンターストライクなど3DFPSゲームができるネットカフェは少ない。多くのネットカフェのPC端末は多少テーブルゲームなどを遊べるようにはなっているものもあるが、そもそもそういったある程度のビデオカードを必要とするゲームはインストールされていないし、またハードウェア自身を見ても、ビデオカードを入れているPCはあまり見かけなかった。Pentium 4クラスのCPUを載せているネットPC端末がウランバートルではあたりまえなので、Webブラウジングやメールの送受信ぐらいでは処理速度に不満を覚えることはないだろう。

 ところでネット用PC端末は韓国・中国系が多い。LGのPCなど実にたくさん見かけた。中国は隣国で、安いキーボードやケースがあるので理解はできるが、韓国系のPCが多い理由が面白い。モンゴル人の出稼ぎ先として台湾や韓国があり、台湾・韓国はモンゴルからの一定の出稼ぎ労働者を受け入れている。韓国系のPCがどこでも見かけるのはその見返りなのだそうだ。


公衆無線LANスポットのあるカフェ このネットカフェ端末は中国製

ネットカフェ端末のデスクトップ ネットカフェ端末のデスクトップ。左上では100トゥグルグ(約10円)が課金されているのがわかる

情報共有が大好きなモンゴル人

 ブックマークはYahoo!関連で占められるとは書いたが、実はモンゴルはポータルサイトが結構ある。モンゴル人は、古くはモンゴル帝国時、周辺の国々を攻め、広いユーラシア大陸のかなりの割合を自国の領土としたことがあるからか、とにかくいろんな場所のモンゴル人同士が情報を共有することが大好きなのだとも聞いた。

 各ポータルサイトでは、モンゴル発のニュースを発信しているのはもちろん、外国に在住するモンゴル人が記者となり、モンゴルのポータルサイトに外国のニュースを翻訳して発信したりもしている。例えば、日本発のニュースならば、朝青龍ら力士の活躍情報も、ポータルサイトのニュースには欠かせない話題なのだ。

 残念ながら、英語で読めるポータルサイトもないのだが、その雰囲気を見れば、ポータルの発達ぶりが伺えるだろう。さらには、世界中のモンゴル人のためのストリーミング専門ポータルサイトもあるのだそうだ。人口がさして多いわけでないのに、驚くべきコンテンツ量だと感心してしまう。


Banjig.Net
http://www.banjig.net/
Mongol Tuurgatny Ts@him Urtuu
http://www.tsahimurtuu.mn/

babu
http://www.babu.mn/
Olloo
http://www.olloo.mn/

インターネットの利用料金は?

 もちろん、モンゴルのネットユーザーも、家にPCやネット環境を持つ人も少なくない。モンゴル政府は前政権の時に「一家に一台PC」政策を打ち立て、輸入PCに対してゼロ関税を実施していたので、ウランバートルではそれなりの富裕層の家庭にはPCがあるそうだ。

 個人の現実的な接続環境はADSLとダイヤルアップだ。プロバイダーは数社ある。ダイヤルアップの料金システムは、最初の数時間は無料で、それを超えたら従量課金となる。基本料金は5~20米ドル。また、夜間は利用時間に含まれず使い放題となっている。かつて日本でも多くの利用者がいた「テレホーダイ」に近いシステムだ(「近い」と書いたのはプロバイダーによって無料となる時間の定義が異なるため)。

 一方、ADSLは月額固定料金だ。ADSLはモンゴルのプロバイダーの1つ「MiCOM」を例に取ると、速度は64/128/256/756/1,024kbpsのプランがあり、料金は順に、59/99/149/249/299米ドルとなっている。

 ネットカフェでは、ADSLと思われる回線速度の時が多かったが、プロバイダーのサービス一覧を見ると、「Business」「SOHO」という名称のプランでもダイヤルアップサービスであることを考えると、ダイヤルアップもビジネスシーンで現役であることが伺える。

(明日の後編につづく)


関連情報

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意外と(?)普及しているモンゴルのインターネット事情(後編)(2006/04/28)


( 山谷剛史 )
2006/04/27 11:31

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