シマンテックは6月1日、2006年秋以降にベータサービス開始を予定している個人向けセキュリティサービスのブランド名、「Norton 360」を正式発表した。
「Norton 360」では、セキュリティ対策ソフト「Norton Internet Security」やPCメンテナンスソフト「Norton SystemWorks」、データ保護・リカバリソフト「Norton Save & Restore」などの既存製品の機能に加え、オンライン取引に対するセキュリティ機能など、従来にはないサービスも合わせて提供するという。シマンテックのアジアパシフィック&ジャパン部門で、コンシューマおよび小規模企業のセールスチームのシニアディレクターを務めるデイビッド・フリーア氏に、「Norton 360」の特徴や開発の経緯を伺った。
● 自動アップデート機能で初心者でも戸惑わない
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コンシューマおよび小規模企業のセールスチームのシニアディレクターを務めるデイビッド・フリーア氏
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――まず、「Norton 360」を開発した経緯をお聞かせください
デイビッド・フリーア氏: インターネットが日常的に利用されるようになってきた反面、「インターネットは危険」と感じるユーザーも増えています。2005年6月のGartnerの調査によれば、フィッシング詐欺などのオンライン攻撃への不安から、オンラインショッピングの利用に影響を受けたという利用者は42%に上るなど、インターネットに対する個人ユーザーの信頼が揺らいでいる現状があります。
こうした中で、個人ユーザーがとる反応は2通りに分かれます。1つ目は、インターネットへの懸念を強め、保護をしようとする。2つ目は、対処方法がわからず迷っている状態です。特に後者は、市場に大量の製品が出回っていることから、自分のニーズに合う製品を選べていないことが多いのです。
このような状況を見て、インターネットに脅威を感じる個人ユーザーに対して、的確な保護を提供するサービスへの需要があると考えました。そこで我々は、専門用語を理解したりバックアップを気にしなくても、あらゆる脅威からユーザーを守るソリューションを提供しようと考えたのです。
――「Norton 360」の特徴を教えてください
デイビッド・フリーア氏: 「Norton 360」は、使いやすさに主眼を置いたサービスです。定義ファイルの更新やソフトウェアのアップグレードが自動で行なわれるため、初心者のユーザーでも戸惑うことはないでしょう。インストール後は、サービスの存在を忘れていただいても構いません。また、「Norton 360」の操作画面上から、チャットやメール、電話によるサポートを受けることもできます。
サービス内容としては、ウイルス対策やスパイウェア対策などの「システムセキュリティ」、PCのリカバリや最適化などの「PCメンテナンス&サポート」、デジタルコンテンツを保護する「デジタルコンテンツのセキュリティ」、安全なオンライン取引を行なうための「トランザクション(オンライン取引)セキュリティ」の4分野をサポートしています。
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「Norton 360」の操作画面
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● 未知のフィッシングサイトも検知できる
――「トランザクションセキュリティ」は既存製品では提供されていませんが、主な機能を説明してください
デイビッド・フリーア氏: 表示されたWebページのURLやコンテンツ、レイアウトなどを分析して、詐欺目的のフィッシングサイトを検出します。1箇所でも怪しい要素が見つかった場合、「フィッシングサイトの可能性がある」とユーザーに警告します。過去に発見された悪質なサイトのURLを登録したブラックリストも併用しています。
フィッシング詐欺を行なう攻撃者は、通常100万通ぐらいのフィッシングメールを送って、その中から100人でもアクセスしてくれれば十分と思っています。そのため、攻撃者の多くは、フィッシングサイトを開設してから2~3時間ほどでサイトを閉鎖してしまうので、ブラックリストに登録するのが難しいのです。トランザクションセキュリティでは、こうしたフィッシングサイトでも検知できるのが特徴です。
そのほか、「デジタルコンテンツのセキュリティ」では、弊社が用意するインターネット上のストレージに、ユーザーの大切なデータを保存することが可能です。新たな脅威が発生したことがわかると、その時点で主要なデータが自動的にバックアップされるという機能も提供します。
● 「Norton AntiVirus」などの単体製品は今後もリリース
――価格や販売形態はどのようになるのでしょうか
デイビッド・フリーア氏: 価格はまだ決まっていません。契約の単位については、サブスクリプション制となる予定です。ライセンス期間は1年にするのか、複数年にするかは未定です。
――「Norton AntiVirus」をはじめとする単体製品の位置づけはどうなるのでしょうか
デイビッド・フリーア氏: 2006年4月には「Norton Save & Restore」を販売したほか、今後は「Norton AntiVirus」や「Norton Internet Security」の2007年度版もリリースします。「Norton 360」に新たに搭載される「トランザクションセキュリティ」の機能を持つ単体パッケージ製品も近々発表されます。
他のセキュリティベンダーの製品と「Norton」シリーズを組み合わせて使っている利用者は少なくありません。他のベンダーの製品から「Norton 360」に切り替えるユーザーがいる一方、単体機能だけを弊社に求めるユーザーもいます。そのため、今後も単体パッケージ製品の需要はなくならないと思います。
● Microsoftの個人向けセキュリティ対策サービス「Windows OneCare Live」への勝算
――セキュリティ対策ソフト市場では、ソースネクストが年間更新料を無料にする製品を発売します。これについて感想をお聞かせください
デイビッド・フリーア氏: それぞれの企業は独自のビジネスモデルを持っています。弊社は20年以上セキュリティ市場でビジネスを展開していますが、この市場では常に新しいものをキャッチアップしていかなければいけない面もあります。
シマンテックでは、不正プログラムを検知するセンサーを世界で2万4,000箇所設置しているほか、スパムメールの検体を入手するセンサーを世界で300万以上用意しています。このように、民間企業では最大級の設備を持っていることから、新規の脅威にも数分以内で対処できるのです。
――サブスクリプション制で提供する個人向けセキュリティサービスとしては、米Microsoftが提供予定の「Windows OneCare Live」が挙げられます。このサービスと「Norton 360」の違いはどこにありますか
デイビッド・フリーア氏: 「Windows OneCare Live」は、セキュリティ対策やPCの性能を保つ機能がメインです。一方「Norton 360」は、トランザクションセキュリティや、オンラインバックアップなどの独自サービスを提供するとともに、新規に発生する脅威にも対応します。操作画面上からサポートを受けられるような使い勝手の良さも「Norton 360」の特徴といえるでしょう。
ただし、Microsoftがセキュリティ対策サービスを展開することについては、PC初心者などのセキュリティ意識が向上し、市場規模も拡大することが予想されることから、好意的に受け止めています。
関連情報
■URL
シマンテック
http://www.symantec.com/region/jp/
■関連記事
・ シマンテック、個人向け新セキュリティサービスの名称を「Norton 360」に(2006/06/01)
・ シマンテック、「更新忘れ」がない個人PC向けセキュリティサービス(2006/02/14)
( 工藤ひろえ/増田 覚 )
2006/06/27 11:11
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