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「新しい価値を作った」ニコニコ動画(β)監修の西村博之氏インタビュー


 ニワンゴは、動画上にコメントを投稿できるサービス「ニコニコ動画」のベータテストを1月15日に開始した。動画共有サイト「YouTube」および「AmebaVision」で公開されている動画に対し、チャット形式でコメントが書き込めるもの。1月には月間1億PVを突破し、2月7日にコメント数が1,000万件を超えた。

 動画共有サービスを利用したコミュニティサービスとして利用者の人気を集めるニコニコ動画。サービス開発の経緯や今後の展開などについて、ニワンゴ取締役管理人を務める西村博之氏に話を伺った。


アイデアのルーツは、2ちゃんねるの実況

ニワンゴの西村博之取締役管理人
 ニコニコ動画はドワンゴが提供する携帯電話向けの音声・画像ストリーミングサービス「パケラジ」の次世代バージョンの開発途上で派生したサービス。開発の経緯については、ニコニコ動画トップページ下部の「謝辞」に詳細が書かれている。それによると、名古屋大学長尾研究室の山本大介氏が開発したサービス「Synvie」を参考にしているという。

──ご自身はどこからプロジェクトに関わったのでしょうか?

西村氏:「パケラジ2」のプロトタイプが出来上がっていて、去年の10月ごろに見せてもらいました。それは、PC向けにFlashを使ったものだったんですが、面白そうだと思って一緒に作るようになりました。

──かなり当初から関わっていたようですね。

西村氏:元々、似たようなことをやりたがっていた経緯もあって、ニワンゴのiアプリで2ちゃんねるの実況板をリアルタイムで携帯電話にも流すサービスをしていたのですが、動画を見ながらコメントをするのは面白いなと前から思っていました。それをテレビじゃなくて、YouTubeとかの動画にして、コメントを同期すれば面白いなと思ったのがきっかけです。

──2006年12月12日に開始した試験版では、ニワンゴのサービスだとサイトに明記していなかったようですが。

西村氏:会社としてこれを本気でやるのかも決まっていなかったので。これがどういう反応があるのかを調べて、会社の事業としてやるのか、止めるのか判断する段階でした。この会社がやっているという情報をその段階でユーザーに与える必要もないかなと思っていて、そこで変な先入観を持たれても何なので、まずこのサービス自体が面白いかどうかを判断してください、という形で反応を見たかったんですよ。

──ニコニコ動画では具体的に何をしているのですか?

西村氏:ユーザーインターフェイス周りとかで多少(意見を)言ったくらいかな。技術的な話とかも多いですけどね。「アパッチのMax Connection足りねんじゃね?」とか。ドワンゴって携帯サイトはやっているんですけど、PCのサイトは携帯サイトほどの運営ノウハウがなかったみたいで。サーバーで起きている症状が何が原因で起きているかって、僕はサイトの表示のされ方でわかったりするんですけど。データベースが重いからこうなっているとかアパッチの側の問題じゃないかとか、そういう部分はコメントしたりします。


2ちゃんねると同じテイストのコメントが多い

ニコニコ動画(β)
──ニコニコ動画と他の動画共有サイトとでは人気動画の傾向が違うように思います。

西村氏:動画自体が完全に面白いと、コメントする所がなくなるんですよね。コメント機能を利用するという点からは、むしろ微妙に面白くないとか、変な間があるとか、突っ込み所のある動画の方が面白いです。あるミュージカルの動画がアップされていたんですが、とても音痴で凄く寒いんですよ。でもそれをみんなで突っ込みを入れながら見るのが面白いんです。

──他の動画共有サービスでもコメントを付ける機能はありますが、なぜニコニコ動画には多くのコメントがつくのでしょうか?

西村氏:リアルタイム性の部分だと思うんですよね。テレビだと笑うところでテロップが出るじゃないですか。第三者がここは面白いところだと伝えるのを、(ニコニコ動画は)さらに上の段階でやっているんですよ。YouTubeとかでは動画全体に対してのコメントを書きますよね。そうじゃなくて、動画のここでみんなが突っ込みを入れたり、「すげー」とかいう感情の動きを表す単純なコメントもできるところが違うと思うんですよね。

──ご自身でもコメントを書くことはありますか?

西村氏:結構書いてますよ。わりと面白がっているんで。ゲームの攻略動画とかによく書いてます。ゲームのプレイ動画も視聴数多いんですけど、あれは違法なものじゃないんですよ。YouTube的にはページビュー稼げないんですけど、ニコニコ動画ではみんな楽しんで見ているし、面白い例なので、そういうのが育てば良いなと思います。

──ニコニコ動画に書かれているコメントは2ちゃんねるに似ているところがあるようですが。

西村氏:2ちゃんねるは感情を出すだけでもありな場所なんですよ。コミュニティの中ではわりと珍しいんですけど。テレビを見たときの反応って感情だけだったりすることが多いんですよね。「面白い」とか「つまらない」とか。だから、動画を見たときの感情を表現してくださいっていうと似たような結果になるんですよ。それで似たようなテイストになっていると思います。(2ちゃんねると)同じような人が使っているというのもあると思いますけどね。


面白い動画を見つけやすい機能やオリジナルコンテンツも視野に

ニコニコ動画再生画面
──ニコニコ動画に直接動画を投稿できるようにはしないのですか?

西村氏:サーバー高いっすからね(笑)。データを入れたり、帯域もかかるし。データを保存して、ユーザーに公開するサービスをしている会社があるんだから、ありがたく使わせてもらっている感じです。

──YouTubeやAmebaVisionから、動画を利用していることについて何か言われたことは?

西村氏:まだ言われたことがないので、本当に感謝しています。このまま細々と続けさせていただければ良いなと思っています。

──対応する動画共有サービスを増やす予定は?

西村氏:増やそうとは思っているんですけど、ただ、日本でたぶん一番大きいところがAmebaVisionで、海外だとYouTube。そこさえ押さえていれば、今のところは他はそんなに必要ないかなという気もします。

──今後、ニコニコ動画に追加したい機能は?

西村氏:ユーザーID制にしようと思っています。今は面白い動画を見つけてもメールやメッセンジャーでURLを送らないといけないんですけど、「僕が面白いと思った動画を通知されたい人」みたいなリストを作っておいて、通知された人たちがリアルタイムで見てまたコメントをするみたいな。面白い動画を持ってきた人は、次に持ってくる動画も面白い確率が高いので、ID制にすることで、そういった人が持ってきた動画は人の目に触れやすくできるかなと思います。

──簡単にアンケートが付けられる機能などは?

西村氏:“Good”とか“Bad”といった投票もやろうかって話があって、今だと連打すると大変なことになるので、それもID制にしてからですね。あと、面白い動画をどうやってシステム的に知覚するのかが課題になっています。視聴回数が多いとか、コメント数が多いとかで面白いものがわかるんですけど、それってすでに多くの人が見てしまったものですよね。そうではなくて、まだ多くの人が見ていない、面白いものを拾い上げていきたいんですよ。


──面白動画発掘機能のようなもの?

西村氏:動画それ自体の魅力であれば、YouTubeでもAmebaVisionでも行ってくださいということになるので、あくまでもコメントが付いたことでプラスアルファで面白くなるっていうのをやりたいんですよね。コメントがし易くなるとか、面白い動画がすぐに見つかるとか、そういう所に注力した方が良いんじゃないかなと思っています。面白い動画をニコニコで見つけても、ある程度コメントが溜まってこないと“突っ込み所”が伝わらないんですよ。それをもっと早く利用者がすぐ突っ込みを入れて、すぐ面白さが伝わるようにできるかなと思っています。

──機能面以外にニコニコ動画でやりたいことは?

西村氏:借り物ばかりじゃなくて、オリジナルのコンテンツもちゃんとやっていきたいんですよね。ベータテストを開始したときに、とりあえずオリジナルコンテンツを何かやろうということで、ちょうど僕のネタがあったのでインタビュー動画を作ったんですが、いまいち面白くならなくて。

──オリジナル動画とは具体的にどのようなものを?

西村氏:僕らが作るのもあるでしょうし、コンテンツホルダーから買ってくるのも含めて。例えば、ライブハウスで出たばかりのミュージシャンに動画をアップしてもらうとか、まだそんなに売れてない芸人さんの動画とか。ニコニコ動画って、つまらないものに突っ込むことで面白くする能力があるので、これから成長していくような人たちが練習がてら使ってもらうのもありかなと思います。

──ニコニコ動画が携帯電話に対応する予定はありますか?

西村氏:やりたいですけどね。リアルタイムにエンコーディングしようとするとハードウェアコストがかかるし、データ自体を持つ度胸を決めるのかという結論も出ていなくて。いずれはやると思いますが、どういう方法がベストなのかまだ決まってないです。


広告モデルに代わる新たなビジネスモデルを模索中

──ニコニコ動画の収益モデルについては?

西村氏:広告も多少はあると思いますが、広告それ自体はやっても良いんですけど面白くはないと思っています。YouTubeさんの場合は、利用者がアップロードする動画に広告も出しているわけじゃないですか。動画が面白いからみんなが見に来ているのであって、YouTubeが何かを作っているわけじゃないですよね。ニコニコの場合は、物凄くつまらない動画でもユーザーがコメントすることによって面白くなったりするんですよ。コメントするというプラスアルファを加えることで、新しい価値が出ているので、その部分でビジネスができれば良いなと思っています。

──ニワンゴは携帯電話向けのサービスを展開しているが、モバイル広告については?

西村氏:広告モデルでやろうと思えばそれなりにはなるんですけど、あまり発展性もない気がしていて。例えば、今ユーザーがメールでニワンゴのサービスを使っていて、そこに対して適した広告をガンガン打てば、確かに利益にはなるんですよ。ただ、それをそのままやるのも面白くないかなと思っていて、別の動きをしたいなと思っている昨今です。

──携帯の広告は、業界全体でも試行錯誤している段階ですよね。

西村氏:携帯電話の特性って、PCと違って、こちらがメールを送った瞬間に見てくれるところじゃないですか。例えば、サザエさんで凄い面白いキャラが出たことをこちらが一斉にメールすれば、それがユーザーに伝わって皆がサザエさんを見るみたいな、そういう行動を作れるのが携帯電話がメディアとして面白いところかなと思います。リアルタイムで突然大勢の人間を動かすことは、今までの他のメディアだとできないんですよね。だから、そういうふうなものを作れれば面白いかなと思っています。

──ニワンゴは、設立以来から早いスピードでサービスをリリースしているようですが。

西村氏:僕はそうでもないと思っています。僕はPCのベータ版の文化なんですよね。出して間違ったら直すみたいな。ドワンゴってモバイルの課金サイトの文化が強くて、品質を保障した上で出すというのがあるから、根本的に違ううんですよね。僕からすると今でも結構遅いと思っています。ドワンゴ的には、だんだん速くなっているみたいです。


Web 2.0に目新しさはない

──ニコニコ動画のようなWeb 2.0的なサービスやCGMについては、どう思いますか?

西村氏:新しい言葉を付けてビジネスにしようとする人ってどの業界にもいると思うんですよ。「マイナスイオン」とか「トルマリン」みたいに。それと同じことがIT業界でも起こり得るんだなと思いました。「このサービスはWeb 2.0です」とか言われても、「このサービスは昔からあるし、名前変えただけでしょ」みたいな気がするんですけどね。もっとも、それで仕事になっている人がいたら良いんじゃないですか。騙してるわけじゃないし。

──もしニコニコ動画をGoogleが買いたいと言ってきたらどうしますか?

西村氏:買ってくれるのであれば、手放しでどうぞ。
広報:一応金額を聞いてから。

──ありがとうございました。


関連情報

URL
  ニコニコ動画(β)
  http://www.nicovideo.jp/

関連記事
動画上にコメントが載せられる「ニコニコ動画」、ニワンゴがベータテスト(2007/01/15)


( 野津 誠 )
2007/02/09 11:10

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