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株式会社シマンテック コンシューマ営業統括本部副本部長 Online Store営業部部長の栗原健氏
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シマンテックが2007年12月に本格提供を開始した、個人向けの遠隔サポートサービス「ノートン・プレミアム サービス」。シマンテックが得意とするセキュリティ対策に止まらず、「最近なんだかパソコンが遅くなった」というような、パソコンのトラブル全般にわたって幅広くサポートするのが特徴だ。
個人向けに遠隔サポートサービスを本格的に開始したねらいについて、株式会社シマンテック コンシューマ営業統括本部副本部長 Online Store営業部部長の栗原健氏に伺った。
● セキュリティ対策、ソフト販売だけではないシマンテック
現在のシマンテックといえば、「Norton Internet Security」に代表されるように、パソコン向けセキュリティ対策ソフトのメーカーとしての印象が強い。しかし、栗原氏は「『Norton SystemWorks』といったユーティリティ製品など、速度向上やリソースの有効活用など、システム関する技術を基に、パソコンの使いやすさを向上させるための製品を多数リリースしてきた経緯があります」と説明、本来セキュリティのみに止まらない企業であることを解説する。
また、近年は法人向けのサポートサービス事業が伸びており、単にソフトウェアを売るだけのメーカーではなくなっている。販売後の付加価値が重視される現状を踏まえ、栗原氏は「セキュリティ対策の総合メーカーとして培った信頼や実績を、一般のお客様向けでも活かせるのではないかという発想が、ノートン・プレミアム サービス開始のきっかけです」と語る。
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各サービスはシマンテックのオンラインストアで購入できる
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ノートン・プレミアム サービスには3つのメニューが用意されている。最も利用者が多いという「ノートン・PC エキスパート」は、ユーザーが遠隔サポートツールを使うことで、専任スタッフがパソコン操作を代行することで、トラブル全般を解決するサービスだ。
「ノートン・PC エキスパート」では、セキュリティ対策に限定せず、「パソコンの動作が遅くなった」「特定の操作ができなくなった」など漠然とした相談にも応じ、レジストリの整理や不要ファイルの削除なども行なう。料金は1年間8,400円で、サポート回数は無制限。年4回にわたって定期点検も行なってくれる。このほか、1回だけサポートを受けるコースも用意、4,200円で提供されている。
「ノートン・スタートアップ サービス」は、ノートン製品のインストールを代行してくれるサービスだ。購入時にインストール済みだった他社セキュリティ対策ソフトのアンインストールなど、導入にあたって必要な作業や最適化もあわせて実施され、価格は1回5,250円(ソフト代金は別途)。
また、「ノートン・ウイルス診断・駆除サービス 」は1回9,765円の料金で、文字通りウイルス感染の確認や駆除を実施してくれる。
3つのサービスはいずれも遠隔サポートのため、スタッフの来訪時間を決めたり、訪問を待つ必要はない。シマンテックでは、パソコンメーカーの窓口へ足を運ぶ時間がなかったり、女性の1人暮らしでなるべく他人を家に入れたくないケースにも有効だろうと見ている。なお、サービス対応OSはWindows XPおよびWindows Vista で、ブラウザはInternet Explorer 5.5以降をサポート。サービスを受けるにあたっては、ブロードバンド回線に接続していることも条件となる。
● Active Xを使い、簡単にリモート接続が可能
実際のサービス利用手順は、比較的シンプルだ。Webサイトでサービス購入後、通知される連絡先に電話をかけることでサポートが開始される。
ユーザーはパソコンの電源を入れ、ネット接続した状態で、口頭などで伝えられる専用URLにアクセス。遠隔サポートに必須となるActive X コントロールのダウンロード後は画面上の指示に従ってリモート接続を許可すると、必要な作業を専任スタッフが代行してくれる。
以後は購入サービスに応じてPC全般のトラブルをチェックしたり、ソフトウェアのインストールが行なわれる仕組みだ。
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リモート接続を許可する画面。基本的にはWebブラウザを利用する
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作業中の様子は画面上でリアルタイムに確認できる。電話やチャットで症状を伝えたり、相談することも随時可能だ。完了後は作業内容に関するレポートを表示して終了となる。遠隔サポートの実施時間は年中無休、平日・祝日問わず10時から20時まで。
ファイアウォールやルータを使った環境下でも、問題なくリモート接続が可能だ。セキュリティ対策ソフトのインストール作業などでは途中で再起動する必要がある。再起動する際には、接続許可作業を改めて行なう必要があるが、いったん接続され、遠隔サポート作業が開始されてしまえば、ユーザー側ではとくに行なうべき作業などはない。
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作業中でも担当者とチャットが可能。電話で話すこともできる
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作業完了後にはレポートが表示される
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サービスは2007年秋頃から試験的にスタートした。その反応について栗原氏は、「全体的に見れば、もちろんウイルス感染でお困りの方はさほど多いわけではありません。以前より大規模なウイルスの蔓延や感染は少なくなっています。ところが、ウイルス感染したPCの絶対数は、そうした状況からわたしどもが予想したより実際には多かったのです」と率直な感想を漏らす。
シマンテック関係者は、当然ではあるがセキュリティ意識が高いため、身の回りではウイルス感染例に接することはまずない。サービスを開始してみて、現在でも意外に被害が多いことに驚くと同時に、サービスへの潜在的ニーズを実感したという。
また、PC初心者にとって、ソフトウェアのインストール作業は大きな障壁と感じられる。栗原氏は「現在では、ほとんどのPCで、一般的な用途で必要となるソフトウェアはインストール済みで販売されています。初心者の多くはインストール作業をまったく経験せずにPCを使っているのでは」という。
“セキュリティ対策ソフトは1台のPCに複数インストールしない”といった中上級者では常識となっている“暗黙の了解”も理解されているとは考えにくいため、こうしたことも、初心者にはトラブルのもとになるおそれがある。「確実なセキュリティ対策のためには、インストール代行も欠かせない」と栗原氏は説明する。
また、年配ユーザーの場合は、PC関連やIT関連用語も大きな障壁となりやすい。このため、リモートサービスを利用するユーザーとスタッフの間でやりとりする際にも、専門用語を意識させることなくサービスが利用できるよう配慮した。ノートン・PC エキスパートでは「(何か悪いかわからないので)おまかせで」というような依頼にも対応可能だという。
● 実際にサービスを試す~接続後は「見ているだけ」でOK
インタビュー後、報道関係者向けに配布された体験用アカウントで、サービスを実際に試す機会をいただいた。そこで、その使用感も合わせてお伝えしておこう。
今回筆者が試したのは、「ノートン・PC エキスパート」の1回版だ。Bフレッツ回線を使った自宅からアクセスした。なお、我が家のルータはNECアクセステクニカの「Aterm WR7850S」で、DHCPによるIPアドレス自動割り当てなどを使用中。Core 2 Duo搭載の自作PCにWindows Vista UltimateやInternet Explorer 7、シマンテック製ではないセキュリティーソフトをインストールしている。
サービスを利用するには電話が必要になる。オペレーターとの通話でサービス購入時に登録した名前、具体的に発生中の症状などを伝えるためだ。基本的には電話番号でユーザー識別をしているようで、IDなどを控えておく必要がなかった点は非常に便利だと感じた。
また、リモート接続の専用Webサイトへアクセスする必要があるのだが、そのURLも口頭で説明してもらえる。加えて「メニューの上から3番目にある『開く』を選んでください」など、初心者にもわかりやすく平易な表現を選んでいるようで、説明は非常にわかりやすい。
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サポート時の画面。右下に「リモート接続中」と表示されるほか、壁紙表示などが一時的に無効化されているのがわかる
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もっとも、URLは手動で入力する必要があるため、サービスを利用するには、URLを入力できる程度の、Webブラウザおよび文字入力に関する知識が必要といえそうだ。指定URLへアクセスした後は、Active Xをダウンロードしたり、指定されたオペレーター番号を画面上から選んでいく形になる。
ここで筆者の環境では、リモート接続がスムーズにいかない事態に見舞われたが、別URLにアクセスして専用ソフトをダウンロードすることで事なきを得た。専用ソフトの操作についても口頭で説明を受けられるため、特に不安な点もないだろう。無事に接続完了後は、「PC全般の点検」という形で作業をお願いした。この時点でいったん通話も終了できる。時間にして約10分ほどだった。
点検作業に入った後は、基本的に見ているだけだ。デスクトップ右下に「リモート接続中」と表示され、壁紙表示が消えたり、Windows Vistaの半透明ウィンドウ効果が一時的に無効化されるなどといった違いはあるものの、いつも通りの画面表示のままマウス操作だけが自動で行なわれる状態になる。
作業の進捗状況を眺めていると、インターネット一時ファイルやCookieの削除、ディスククリーンアップ作業を実行していたり、サポート専用ツールとおぼしきファイルをダウンロードしている様子などが観察できた。なお、なんらかの理由でリモート接続が切断された場合は、あらためてコールセンターへ電話連絡してほしいという。
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作業完了後のデスクトップ。Webブラウザ上にレポートが表示されるほか、Vistaの視覚効果も戻っている
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点検がほぼ終了すると、チャットウインドウがポップアップし、作業内容を簡単に説明してくれる。文字による返信やマウス操作も可能なので、症状によってはこの時点で改善を確認したり、さらに追加で相談を行なうことができる。
今回は特に問題もなかったため、作業レポート表示後、リモート接続が終了した。今回の所要時間は通話時間も含め全体で約30分ほど。ただし作業内容によって、所要時間は大幅に変動するだろう。
試用を通じて印象に残ったのは、リモート接続完了後のスムーズさだ。PCに関するほぼ完全なコントロールを相手側に渡すため、追加で何かしらの作業をする必要がほとんどない。懸念していた「ルータ越え」問題や、セキュリティソフトに起因するトラブルもなかった。
Webブラウザは使えるがシステムについてはさっぱり、というPC初心者にとっては実践的に頼りになるサービスと言えるだろう。
● ノートン・プレミアムを「PCのかかりつけ医」に
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「ノートン・プレミアムを“PCのかかりつけ医”として使ってもらえれば」と語る栗原氏
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シマンテックではノートン・プレミアム サービスの利用者数などのデータは公表していないが、土・日曜日の利用がやや多い傾向がある。栗原氏は「おこづかいでやりくりする必要のある若年層を除いて、幅広い年代のユーザーにご利用いただいているようだ」という。
一方、団塊の世代向けのマーケットにも期待がかかる。実際にシニア向けコミュニティの関係者にサービスを説明したところ、好評を得たという。「自分の楽しみのためには時間を使いたいが、メンテナンスなど、それ以外の作業はプロにおまかせしたいというシニア層は少なくないようだ」と栗原氏は話す。
シマンテックでは、より使いやすい形でのサービス提供を目指し、ノートン・PC エキスパート1回版を購入後、年間サポート版へ4,500円でアップデートできるサービスも開始した。年間版では、期日予約が可能な定期検診サービスも3カ月おきに実施されるなど、より充実した内容となる。栗原氏は「いつでも気軽に相談できる“PCのかかりつけ医”として本サービスをご利用いただければ」と説明している。
PCに熟練したユーザーほど、PC初心者に頼られるもの。ハードウェア購入の相談に一度は応じたものの、その後も使い方に関する問い合わせ電話がひっきりなし。頼られるのは嬉しいが数が多くてさすがに困ってしまった……。そんな経験をお持ちの方も多いはずだ。
初心者に配慮した応対を年中無休で行なってくれるノートン・プレミアム サービスを覚えておけば、熟練者にもいざというときのメリットになりそうだ。
関連情報
■URL
「ノートン・プレミアム・サービス」のニュースリリース
http://www.symantec.com/ja/jp/about/news/release/article.jsp?prid=20071219_01
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・ 遠隔操作でウイルス駆除などをサポートする「ノートン・プレミアム」(2007/12/19)
( 森田秀一 )
2008/01/30 12:21
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