マイクロソフトは、Q&Aサービス「MSN相談箱」を4日にリニューアルした。新しいMSN相談箱の内容や、今後の展開について、オンラインサービス事業部の笹本裕事業部長と、プロダクトマネージメントグループシニアディレクターの浅川秀治氏、また、パートナーであるオウケイウェイブの兼元謙任代表取締役社長に話を伺った。
● 既存会員へはLive IDにすることのメリットをアピール
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オウケイウェブの兼元社長(左)、マイクロソフトの笹本氏(右)写真は4日の記発表会の様子
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今回のリニューアルでは、Live SearchやWindows Live、MSNの各サービスとの連携が目玉の1つだ。
ログインには、あらたにWindows Live ID(以下Live ID)を採用したが、これにより、従来の会員は、新たにLive IDを取得する必要があり、以前の質問・回答の投稿履歴やポイントは引き継げなくなった。これまでの会員IDは、Q&Aサイト「OKWave」で利用できるため、ユーザーデータもOKWaveで引き継ぐことが可能だ。
IDの移行に伴うデータの引き継ぎに関しては、マイクロソフト社内でも一番議論したところだという。
「技術的にデータの引き継ぎは可能だと思われがちだが、すべてを完全に移行することは不可能。変えてもらうことの不便よりも、新しいIDでのメリットをアピールしていくことで、今回はカバーできるという判断になった。登録しなおしていただくデメリットはあるが、Windows Liveメッセンジャーやマイクロソフトのオンラインサービスとの連携を考えると、どうしてもLive IDが必要になる。今後のメリットを考えると、ユーザーにも利便性があると判断した。これまでのIDが全く使えなくなるわけではないので、そこはOKWaveとの連携でカバーしていきたい。」(浅川氏)
● Live IDで使える多くのサービスと連携していく
MSN相談箱では、Windows Liveなど、同じIDで使えるサービスが増えることでのメリットを生かす考え。リニューアルと同時に開始されたのは、対話ロボットがコンテンツ「Windows Live Agents」のサービスを利用したMSN相談箱の検索機能「相談ちゃん」だ。Windows Live Agentsは、Windows Live メッセンジャーで利用できる。
「Live IDにしてもらうことで、使えるサービスが豊富になる。メッセンジャーを使った『相談ちゃん』は、それこそLive IDがなければ使えないもの。すでに相談箱を使っているユーザーには、よりパーソナライズされた相談事ができるようになり、セッション時間や利用回数を上げたい。また、メッセンジャーのユーザーに相談箱を使ってもらうための導線にもなる」(笹本氏)。
その他のサービスとの連携も考えているという。
「シナリオとしては、質問への回答となる映像をMSNの動画共有サービス『Soapbox』で投稿したり、ストレージサービス『Windows Live SkyDrive』を活用するなど、すでに技術的には可能。そこへの導線やインターフェイスををどうするのかを今後検討していきたい。」(笹本氏)
さらに、MSN相談箱で貯めたポイントについても、今後はLive IDを生かし、マイクロソフトのサービスの中で活用してもらえるように検討するという。
● 米国本社からの出資は知識検索に対する期待感の表れ
2008年3月には、米Microsoftがオウケイウェイヴに10.52%の出資を行なうことも発表しており、日本のオンラインサービス事業で初めての出資になるという。
「Q&Aサービスのノウハウは一石二鳥でできるものではないし、ベストパートナーが必要だった。せっかくここまで成長している分野に、今から追い付こうとしても、数年先には状況が変わっているかもしれない。自社で一から作るより、先行優位性もあるオウケイウェイヴとパートナーシップを結ぶことにした。インターネットの検索は、今後いろいろな部分で進化していくにあたって、知識検索の可能性には期待している。また、Q&Aサービスは成長分野として捉えているので、ビジネス面でも非常に大きい戦略の1つになっている。本社からの出資があったことは、それだけの期待感を持ってのことだと思う。」(笹本氏)
オウケイウェイヴの兼元社長は、パートナーシップのメリットについて、「検索の部分になる」と話す。
「我々のアセットは、Q&Aのデータベースと、それを集めるためのノウハウ、Q&Aサービスを機能させるネットワークの3つ。Live Searchのテクノロジーと一緒になり、Web検索やメディア検索などと知識検索を融合することで次世代の検索サービスもできる。これから大きくなっていく市場なので、検索部分はパートナーと組み、自社が持つ3つのアセットを大きくしていくことに特化したい。」(兼元社長)
● さまざまなツールとの連携で差別化、Q&Aサービスでトップ目指す
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キャンペーンでは、「MSN相談党」を立ち上げ、党首に押切もえを起用。「日本を“緊張”から解放するには?」という公開相談を実施
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MSN相談箱のリニューアルに伴い、モデルの押切もえを起用した利用促進キャンペーンを開始した。
「ますはバズを上げたい。現状のQ&Aサービスは、我々が求めている規模の知識を蓄積するまで、広く認知されているわけではない。将来的には、Q&AとWeb検索を連携させたうまい見せ方を展開として考えているので、そこにつなげていくためにも、認知度の向上を図る。」(笹本氏)
MSN相談箱の広告展開については、トラフィックからの期待感だけではなく、サービスのユニーク性にも注目したいという。
「Q&Aサービスの分野は伸びているので、トラフィックの上昇に応じて広告の売上も期待したい。さらに、トラフィックを生かして、ユニークな広告商品も作りたい。『相談ちゃん』を広告商品にしたり、OKWaveの企業向け製品との連携もできると考えている。」(笹本氏)
他社が提供するQ&Aサービスとの差別化については、こう話す。
「マイクロソフトでは、MSN相談箱がコアになって派生できるツールを多く持っている。そういったものと結び付けることで、他社との差別化や、ユーザーの利便性を向上できる。」(笹本氏)
「今後も、Web検索の機能を高めつつ、今回のように他社が持っていない強みを入れて、他社に勝つ。数年中にはQ&Aサービスでトップになりたい。」(浅川氏)
マイクロソフトでは、PC専門のQ&Aサービス「答えてねっと」を運営しているが、MSN相談箱との関係についてはどうなるのだろうか。
「統合することはないが、OKWaveのプラットフォームを生かしていければと思う。『答えてねっと』は、マイクロソフトのプロダクトにフォーカスしたところで、企業向けでもある。よりコンシューマ向けで、幅広いカテゴリを扱えるのがMSN相談箱。うまく補完関係はできると思う。」(笹本氏)
関連情報
■URL
MSN相談箱
http://questionbox.jp.msn.com/
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( 野津 誠 )
2008/06/05 17:23
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